北米で60GB版プレイステーション3が$100値下げして$499となり、Amazon.comでは(品切れ中の) Wiiを下して1位にという朗報は先日お伝えしましたが(※注)、北米市場での価格戦略についてまた新たな情報が入ってきました。ソニー・コンピュータエンターテインメント ヨーロッパ(SCEE) プレジデント David Reeves氏がGI.bizのインタビュー中になにげなく言及したところでは、北米の60GB版$499は在庫処分価格であり、8月からはまた80GB版 $599の単一モデル展開に戻るとのこと。

北米のプレイステーション3は当初日本とおなじ20GB版と60GB版がそれぞれ$499 / $599で販売されていましたが、4月には20GB版が「不人気により」販売終了していたという経緯があります。先週の新機種&値下げ発表は欧州版とおなじ内部構成の80GB版がゲーム付属$599で登場、60GB版がスライドして$499を埋めるという内容。

リーブス氏のコメントは、なぜ欧州では北米のように割安の選択肢を提供しないのかという質問に「北米でもすぐに1モデルになる」と答えたもの (欧州では60GB版にゲームx2とコントローラx2で599ユーロ)。欧州でも80GB版を提供しない理由は?という問いへの回答は「60GBと80GBの差にはほとんど意味がない。単に供給の問題」。違いがないなら北米で80GB版を提供する意味は?に対しては「欧州版は当初から後方互換性が88%だが、北米版は従来"100%"。新機種は欧州版と同じ設計になり互換性が低下する代償になにかしら足す必要があった」


管轄が違う地域のまだ発表されていない予定をさらりと明かしたり、「違いのない」 +20GBは互換性低下の代償と説明するなどSCE幹部にしてはかなり率直なインタビューです。そのほか興味深い発言はこの下に:
(ソニーのE3カンファレンスについて)「(実際に見ていないが) 去年や一昨年に比べて謙虚になった。(ソニーには)謙虚さが必要だった。今年は好意的に受け入れられたと思う」

(過去のソニーは傲慢だったという意味か?) 「わたしはそう思う。(...) 欧州や日本の視点から見た場合には特に。米国では「俺が一番」という態度をとる文化があるが、われわれ欧州や日本ではかならずしも受け入れられるものではない」

(マイクロソフトはWiiとの対決姿勢を強める一方、PS3ははるか後方と主張しているが) 「全世界という意味ではコメントできない。Xbox 360は英国ではまあまあ、欧州大陸では死にかけ、日本では死亡。米国では非常に良くやっていると思う」

(任天堂について) 「Wiiは大成功しており、脱帽する。(...) 2年前にはゲーム界から消えたと思われていたが、復活を果たした。ここ2年ほどゲーム業界を牽引してくれたことについて、ソニーは任天堂に恩義がある。ゲーム業界を生き延びさせてきたのは任天堂だ。」

(ソニーがマーケットリーダーではないことを認めるのか?) 「重要なのはリーダーかどうかではなく、ゲーム界全体の成長」。「(リーダーの地位は) 移り変わるものだと思う。アディダスとコンバース、プーマと ナイキは各社が新モデルを発表しているが、それぞれに売り場がある。各社のマーケティングによって、(スニーカーの) 市場は過去8年で3倍になった。われわれも同じことをすべきだ」。


などなど。とはいえ欧州部門の責任者として、自社の勝利を約束するSCE節ももちろんあります:

(マイクロソフトは年末商戦で勝利宣言をしているが、ソニーは来年以降のソフトが中心のようだ) 「メタルギアやGTのようなゲームを一気に発売する戦略は間違い。空白を置くのはとてもよいこと」「来年3月までにはプレイステーション3が圧勝する」「スタートは遅いが、気がつけば津波」

(両機種で登場するGTA4はXbox 360だけ限定コンテンツがあるが) 「単に金の問題。(...) マイクロソフトはそれだけ必死なのだろう」「トレットンが言っているように、われわれは独占タイトルを買うのは止めた。将来を見据えて独自タイトルを育てる」


ツナミはともかく、主にSCEIやSCEアメリカ幹部の発言で作られたイメージからかけ離れた新鮮な回答にはある意味眩暈を覚えます。トレットンさんの強気すぎて浮世離れした発言、あまりのことに第三者のクラック説も囁かれたPSPヤラセ問題のソニー名義「謝罪」文も「文化の違い」だったのかと思えば安心です。


そのリーブス氏が挙げたプレイステーション3勝利への戦略は:「ソニーに必要なのは家族向けや高年齢層へのアピール。成長が得られるのはより広い層への拡大から。全部が全部Killzoneだったり、God of Warやメタルギアソリッドばかりにはしない」。文化の違いというより単に連絡がうまくいっていないのかもしれません。


[via Joystiq]


(※冒頭の補足。プレイステーション3、Amazon.comでWiiに勝利 ゲーム部門1位にではPS3のAmazon.comランキングの変動が↑2500%という事実をお伝えしましたが、一部で売り上げ(台数)が2500%増という斜め上の誤解を招いてしまったようです。想像力が足りなかった不手際について深くお詫びします。普通におめでたいニュースが別の意味でおめでたい誤解を広めることになってしまいました。が、実際の売り上げも上昇しているのは紛れもない事実。在庫限りである点についても、期間限定値下げ・値上げ予告は一般的かつ有効な消費刺激策です。)