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フライ(毛ばり)

フライ(毛ばり)は、魚が餌にしている昆虫や小魚などに似せて鳥の羽や動物の毛などで作った疑似餌です。フライフィッシング=フライの釣り、というように、この釣りの中でもっとも重要なものです。
フライは似せるものの種類と形によって数え切れないほどのパターンがあります。ジャンル別に分けようと思ってもとても線を引いて分けられるものではありませんので、ここでは大雑把に4つ+その他に分けてみました。
自分が感じたことをこと細かに説明してしまっては楽しみが半減しますので、養沢で最もたくさん使われているフライを中心に、これまで多くの人が考案した実績のあるパターンを紹介しながら、フライのほんの入り口を説明します。

魚が釣れるか釣れないかは、魚がフライを咥えてくれるかどうかにかかっているので、どれだけ魚の気持ちを理解できるかということかもしれません。
フライは当釣り場で完成品を販売していますが、ぜひご自分で作ることをお勧めします。別項で作り方を紹介します。

フライの種類

種類の分け方はたくさんあります。
最も一般的な分け方をすると、大きく分けて次の4種類に分類されます。







フライを使うポジションで説明すると、大雑把にドライフライは水面上、ウェットフライは水面直下から浅い水深、ニンフフライは浅い水深からやや深い水深まで、ストリーマーフライは水中を泳ぐ、と理解すると分かりやすいと思います。







①ドライフライ 


乾いたフライ、つまり水面に浮くフライの総称で、主に羽化した水生昆虫などに似せたものです。


ヤマメやイワナなどの鱒類は、水面上に羽化した水生昆虫や水面に落ちた蟻や蜘蛛などを常食しているので、これらを食べている魚を狙うのがこのドライフライです。養沢程度の小渓流は浅い流れも多いため、最も使いやすいフライだと思います。


ドライフライの特徴は水面に浮きやすいことで、フワフワ、ボサボサという印象のものが多く、フック(ハリ)も細くて軽めのものを使います。
写真は「アダムス」というパターンです。
ドライフライの詳細ページLinkIcon



②ウェットフライ


昭和16年に発行された日本初のフライフィッシングマニュアル「毛鉤釣教壇」では「湿毛ばり」と表現しています。


ウェットフライはフライフィッシングの中では最も古くから行われている方法で、水面直下からある程度の深さで使用します。多くは水生昆虫の羽化のために水面に泳ぎ上がる様子や、溺れた成虫、産卵のために潜る成虫などを模していると思われます。そのためウェットフライは意図的にフライを引いたり操作することもあります。
また、時には食性だけでなく、攻撃の対象として、興味の対象として咥えることもあるようです。
写真は「シルバー・マーチブラウン」というパターンです。
ウェットフライの詳細ページLinkIcon


③ニンフフライ


ニンフフライは水生昆虫の幼虫期を模したフライで沈めて使います。


水中深く沈める場合はフライ自体にオモリを巻き込んだり、ティペットにオモリをつけたりするので、フライフィッシングのシステムでは少し扱いにくくなります。
魚がフライを咥えた瞬間が分かりにくいので、最近はインジケーター(浮き)をつけて釣る方法が主流になっています。早い話フライを使った「浮き釣り」だと思えば理解しやすいでしょう。
魚の目の前にフライを沈められるため、たくさん魚が放流されている管理釣り場ではどれかの魚が食べてくれる確立が高く、このフライを使えば初めてフライロッドを持った人でも比較的簡単に魚を釣ることができます。
写真は「ヘアーズイヤーニンフ」というパターンです。
ニンフフライの詳細ページLinkIcon


④ストリーマーフライ


小魚を模したフライがストリーマーです。


鱒類は魚食性があり、大型になるほどその傾向が強まると言われています。ストリーマーフライは小魚を真似たもので、リトリーブ(引っ張る)して魚の動きを演出します。
大きな川や湖、海などではシンキングラインとの組み合わせで使われることが多く、ルアーのように広い範囲を探れるメリットがある反面、養沢のように小さな渓流でスポットを狙うのは苦手です。
写真は「ゾンカー」というパターンです。
ストリーマーフライの詳細ページLinkIcon




各部の名称

フライには次のように各部に名称がつけられています。



ドライフライ
前方にハックルを巻いた通称「ハックルドライ」と言われるパターンです。前方から見るとハックルは丸く四方に広がっています。このハックルが水面の表面張力に乗りやすく、水面に浮くことができます。







ウェットフライ
最もオーソドックスなウイング付きのパターンです。ウェットフライの場合ハックルは下半分に巻かれることが多く、ビアード(ヒゲ)ハックルと呼ばれます。前方から見るとハックルは左右に少し張り出すだけでドライフライに比べるとより平面的です。






ニンフフライ
写真では見づらいですが、アブドメンに細いゴールドワイヤーが巻かれていて、これをリブといい、材料にへアーズイヤー(ウサギの耳の毛)を使うことから、ゴールドリブド・ヘアーズイヤーと呼ばれます。ソラックスにレッグ(脚)をつけるパターンもあります。






ストリーマーフライ
ウイングは水中ではかなりスリムになります。テールをつけたもの、ウイングを何枚も重ねたもの、魚のエラを模したギルと呼ばれるものをつけたものなど、いろいろな形があります。





補足(使い方によるフライの性格)

ドライフライ、ウェットフライなど大雑把な分類を説明しましたが、この分類はあくまでフライを説明する都合で分けたものなので、実際に「どう使うか」は別の話になります。
下のイラストをご覧ください。本来浮かせて使うべきドライフライをウェットフライのように沈めたり、沈めて使うはずのニンフフライを浮かせたり、釣り場では自分のイメージで自由に使います。
ドライフライは水面で捕食している魚を釣るために浮きやすく作られていますが、浮かせて使わなくてはいけないという決まりはないので、作ったときはドライフライのつもりでも、沈みやすかったらウェットフライとしてでもニンフフライとしてでも自由に使えばいいわけです。

フライフィッシングにはこのように誰かの都合で決められたものが多く出てきますが、全体を大雑把に理解できたら自分のイメージで組み立てることが面白さにつながると思います。 


混乱するかもしれませんが、ドライフライとかウェットフライ、ニンフフライなどの区別は、どう使うかという程度のものだと思ってください。
沈みやすいドライフライはウェットフライとして使えばいいし、沈みにくいニンフは浮力材をつけてドライフライとして使えます。魚にとっては沈んだドライであろうが、浮いたニンフであろうが、餌や攻撃の対象であれば咥えます。


とはいえ、フライフィッシングは釣果よりも、どうやって釣るかが大事という考えを持っている方が多いので、フライが浮いていないと嫌だとか、何が何でもウェットで釣りたいなど拘ることで面白さを増幅しようという考え方もあります。


フライのサイズ

フライのサイズはフライフック(ハリ)のサイズで決まります。
フライフックのサイズは10番(#10)とか12番(#12)など数字で表され、数字が大きくなほどフックサイズは小さくなります。
一般的には#2から#32くらいまでの範囲で使いますが、サーモンフライなど#2より大きいものがあり、1/0、2/0と数字が大きくなるほどサイズも大きくなります。現在8/0くらいまであるようです。
とはいえフライラインほどサイズに厳密な規定がないので、メーカーごとやモデルごとでかなりばらつきがあります。さらに、フライフックは同じサイズでもいろいろな形があり、似せるものによって使い分けられるようになっています。
詳しくはフライタイイングの項で説明します。 

フライサイズの選択は、基本的に魚の食べているものに合わせた大きさに合わせます。(変則的な使い方もあります)
養沢程度の小渓流でドライフライを例にすると、だいたい#12から#20くらいの範囲でしょうか。

一般渓流などで魚が少なく、釣ろうとしている魚が一匹しかいない場合はその魚が食べている餌の大きさ、ボリューム、形態を予測してどんなフライを結ぶか決めますが、養沢では何匹も魚が泳いでいるので、どれかの魚に食べてもらおうと考えればフライの選択はかなり大雑把になります。

ドライフライの場合、流れ方や魚の反応を知る上で自分から見えやすいことも重要です。フライフィッシングを始めて間もない頃はフライを見失いがちなので、#14~#16など見やすいサイズを中心に選べば良いでしょう。慣れてきたらサイズを小さくして、魚の反応をみてください。


左の写真はドライフライに使うオーソドックスなフライフックです。#16で約1cm、#24で約6mmほどの全長になります。各メーカーからさまざまなタイプが販売されているので、目的にあったものを使うのが大事です。