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セリアーナ達の会談を横目に、親父さんから贈られたソファーに寝転がりジグハルト達から贈られた天狼の毛布を掛け、商人からのセリアーナへの贈り物の本を読んでいる。
俺が席に着く必要はないとはいえ、流石にこれはどうなんだろうと思うが……、一応これも俺の仕事だったりする。
……タフな任務だぜ。
「それでは、失礼します」
会談相手の男はそう言い席を立ち、部屋を出て行った。
その際に俺にも一礼して。
「フフフ……出遅れた者達は必死ね」
それを見て、ニヤニヤするセリアーナ。
何でこうウチのお嬢様は悪役っぽいんだろうか……。
「距離がありますから、挨拶が遅れてしまうのは仕方がありませんよ」
「あら?彼等より離れているのに先に来た者もいるわよ?」
どちらも本気では無いだろうが、窘める様に言うエレナに言い返すセリアーナ。
領内の貴族や商人達はとっくに挨拶を済ませているが、近隣の領地に基盤を持つ者達は彼等より遅れてやって来た。
王都から離れれば離れるほどデカい領地が増え、移動にかかる時間も増えていく。
もちろん移動に慣れているだろうしそれ位想定していたんだろうが、王都から帰還する際に、俺達が通常ルートではなく山越えを選択したことで狂ってしまった。
それでも、他領の者でゼルキスの者と変わらない時期にやって来た者もいる。
セリアーナは気にしていないんだが、出遅れた当人達は負い目に感じるだろうし何とか挽回しようとあれこれ手を尽くしている。
……それはそれとしてだが。
「……オレは胸が痛いよ」
「無いでしょう。そんなモノ」
ごもっとも。
◇
セリアーナ、エレナ、アレク。
この3人は領内はもちろん、国内でも知られている。
セリアーナはミュラー家本家の長女で、表向きには勤勉で高い能力を持ち領民想いのお姫様だ。
そして、学院在籍中に王子様と婚約をした、国中の女の子の憧れだ。
……実態はどうあれだ。
エレナは、家格が足りていれば親衛隊に所属していたであろう才女で、アレクも名の知れた傭兵だ。
なら俺はどうなのか?
王都や領都ではそれなりに知られているが、他所では相変わらず貴族間で知る人ぞ知ると言ったところだ。
年齢を考慮しても少々格落ち感が否めない。
俺としては別にそれでも構わないんだが、セリアーナ達はこの機会に少し手を打とうと考えた。
それがこのだらけモードだ。
相手によって変えているが、態度を崩してはいけない相手にはきちんとしている。
といっても、口を開かず頭を下げているだけだが……。
それでも、気心知れた相手の前以外ではそれなりの態度で控えている。
が、あえて崩すように命じられた。
商人が利用する商業ギルドという物がある。
詳しい事は知らないが、護衛の手配や、その地域の相場、情報を共有する為に所属するらしい。
情報伝達手段の乏しいこの世界ではそういった場は必要なんだろう。
そして、横の繋がりも代わりに引き受けている。
例えば農家や猟師。
そして、冒険者ギルド。
俺の情報を商業ギルドに伝えたと、冒険者ギルドから話があった。
中層を1人で探索できる力があり、領主や冒険者ギルド支部長の命令ですら、無視する事がある。
基本的にセリアーナの言う事以外は聞かない。
そんな内容だ。
まぁ……間違ってはいない。
最近ダンジョンの哨戒や、上層中心の探索を断ったばかりだし。
で、その情報をセリアーナとの会談前に事前に入手すると、部屋で寝転がっている俺を見てそういった振舞いが許されていると判断する。
さらに、セリアーナはそんな俺に命令が出来る存在だとも。
そして、地元に戻った彼等はその地の商業ギルドで俺の事を報告し、その情報が広まっていく。
プロデューサー・セリアーナによる俺のブランディングは上手くいくだろう。
しかし、ついでに自分の箔付けもやってしまう辺り、抜け目がないというかなんというか。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・34枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚