今回は、元祖夏フェスと言われている「全日本フォークジャンボリー」、通称「中津川フォークジャンボリー」についてシンガーソングライターの小室等さんにうかがいました。(聴き手:武内陶子アンカー)
【出演者】
小室等さん(シンガーソングライター)
<プロフィール>
1943年、東京都出身。
1968年にグループ「六文銭」を結成。モダンなフォークサウンドと示唆に富んだ歌詞で人気を集める。グループ解散後はソロ歌手としてライブ・コンサートを中心に、さまざまなジャンルのミュージシャンとのコラボレーションやイベントプロデュースなど多彩な活動を展開。
小室: | フォークソングは他の音楽に比べると、社会的な問題を揶揄(やゆ)したものも多く、労働運動などに利用されていたこともありました。特に60年代は、ベトナム戦争もあり、若者も政治や社会に関心が高く、その思いをフォークというカタチで表現していました。 |
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第1回 全日本フォークジャンボリー
小室: | 全日本フォークジャンボリーは、岐阜県恵那郡坂下町(現在の中津川市)にある、椛の湖(はなのこ)の湖畔で開催されました。音楽フェスティバルの元祖と言えば、アメリカの「ウッドストック・フェスティバル」と言われますが、実は「第1回全日本フォークジャンボリー」のほうがウッドストックよりも早い開催でした。 ※「全日本フォークジャンボリー」は1969年8月9日。ウッドストックは同年8月15日に開催。 |
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――どのようなきっかけでこの野外コンサートが誕生したのですか。会場確保などはミュージシャンやスタッフたちで決めたのですか。
小室: | 地元で音楽活動されていた団体が、フォークのお祭りをやろうと呼びかけて会場を作りました。元々整備されたところではなかったので、草刈り、水源確保など、日曜日はもちろん、少しの休みがあれば作業していました。広場にするまで相当なご苦労だったと思います。出演者は、高石ともやさんを中心に、岡林信康さん、西岡たかしさんなど、関西フォークの人が多かったですね。僕は第1回には出演していなくて、翌年に六文銭で参加しました。 |
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♪「友よ」(岡林信康・高石ともや)
第2回 全日本フォークジャンボリー
小室: | 第2回は、関西フォークはもちろん、はっぴいえんど、浅川マキさん、赤い鳥など、たくさん出演しました。司会は、はしだのりひこさんで、8月8日の午後1時45分に始まって、翌日の正午まで続きました。僕たちは朝6時頃に出演しました。眠かったですね(笑)。 |
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♪「雨が空から降れば」(六文銭)
――そのころ関西フォークを意識されていましたか。
小室: | 出演時間をとっても、僕たち関東の人間は冷遇されていると感じていました(笑)。その後、関西フォークの方と交流し、意思の疎通が欠けていたことを確認し誤解は解けました。 |
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♪「夜汽車のブルース」(遠藤賢司)
小室: | 遠藤賢司さんは茨城県出身で関東派だけど、関西の動きに敏感で、多くのイベントに出ていたので関西のイメージがあるようです。 |
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第3回 全日本フォークジャンボリー
小室: | 3日間の開催ということで規模も大きくなりました。メインのステージだけでなくサブステージも作られ、ロックやジャズなどの音楽のジャンルも広がりました。この回で話題になったのはサブステージの吉田拓郎さんでした。 |
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♪「人間なんて」(吉田拓郎)
――3回でフォークジャンボリーが終了してしまった理由は。
小室: | お客さんが、商業主義になってきたイベントに反発の声をあげたこと、規模が大きくなりすぎて運営上のトラブルが多発したことが大きな原因だったと思います。また、音楽を労働運動や学生運動に利用していたものの、その目標はなくなり、純粋に音楽を楽しみたいという受け手の変化も大きいのではないでしょうか。 |
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――現在のフェスについてはどう思われていますか。
小室: | それほど出演していないので詳しくはわかりませんが、岐阜県中津川で行われている100%ソーラーエネルギーを活用し実施した大規模なフェスに2013年、2018年と出演しました。いくつもステージがあり、ケータリングも充実していて、ピクニック気分で参加できるすてきなフェスでした。第3回のフォークジャンボリーから50年、フェスは純粋に音楽を楽しむというものになっていますね。 |
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♪「友よ、この旅を」(岡林信康)
――この曲は、フォークジャンボリーの象徴だった岡林信康さんの「友よ」のアンサーソングです。50年経って、やっと自分の中で完結したと話されていました。先月75歳になった岡林さんは、京都郊外で畑仕事と散歩の毎日を送っているそうです。コロナが収束したらライブをしたいとおっしゃっていました。
【放送】
2021/08/06 「武内陶子のごごカフェ」