地方銀行8行やローソン銀行などで2022年3月26日に発生したシステム障害の詳細な原因が、日経クロステックの取材で4月8日までに分かった。各行のシステムが動作するキンドリルジャパンのデータセンターにおいて、発電機の点検作業中に、電源からの回路を切り替える「STS(無瞬断切り替え装置)」の大半が停止し、サーバーなどへの電力供給が滞ったことでシステムの全面停止に至った。
3月26日のシステム障害では、めぶきフィナンシャルグループ傘下の常陽銀行や足利銀行など地銀8行とローソン銀行において、各種サービスが停止した。同日午前11時すぎから、各行ともオンラインシステムが止まり、ATMやインターネットバンキングなどを通じた取引ができなかった。
関連記事: 常陽銀行など複数地銀とローソン銀行でシステム障害、データセンターで電源障害かシステム障害に見舞われた地銀8行は、三菱UFJ銀行のシステムをベースにした共同利用型システム「Chance地銀共同化システム」を利用している。ローソン銀行は三菱UFJ銀行のシステムをベースにしているものの、Chanceとは異なるものを使っている。地銀8行とローソン銀行は共に、日本IBMから分社したキンドリルジャパンが運用する関東地方のデータセンターでシステムを動作させていた。
発端は発電機の年次点検
キンドリルジャパンや日本IBMはシステム障害の原因について「一部の電源設備が故障したことによるもの」とのみ公表し、詳細を明らかにしていない。複数の関係者への取材から、詳しい原因などシステム障害の一部始終が見えてきた。
システム障害の発端は、キンドリルジャパンが3月26日に実施した発電機の年次点検にあった。商用電源側の経路を切断し、バックアップ用と位置付ける発電機の状況を確かめるという内容だ。
システム障害は、発電機の点検過程で、電源を発電機から商用電源に切り戻す過程で生じた。発電機を切り離し、商用電源に接続した直後に、STSが通常使うUPS(無停電電源装置)を経由した回路から、UPSを経由しないバイパス回路への切り替え動作を始めた。その切り替え途上で、6台あるSTSのうち5台が警報を発して停止した。その結果、サーバーなどIT機器への電力供給が途絶え、システムの全面停止に至った。