西村幸祐 · @kohyu1952
7th Apr 2022 from TwitLonger
61年前に防大生を罵倒した大江健三郎を、厳しく批判した倉橋由美子さんの言葉が、今こそ有効になっている。
「防衛大の若き獅子たち」倉橋由美子 エッセイ集『私の中の彼へ』(講談社)収拾
大江健三郎が毎日新聞に寄稿したコラムで、《防衛大学の学生は僕らの世代の恥辱だ》と我国の士官候補生を侮辱したことがある。それに対し、デビューしたばかりの学生作家だった倉橋由美子が、極めて論理的に大江健三郎を批判した。紹介する。
《犯罪人をつくるのが法律であるように、恥部をつくるのは高貴な頭のほうではないかとかれらはひらきなおるかもしれません。だが現在でも、日本の進歩的な頭脳をもってみずから任じているインテリたちは、防衛大学校や自衛隊を恥部だときめて疑わないようです。かれらにとってそれはタブーなのです。この精神は、現実とつきあうことをしないで、つまりこの現実をよくも知りもしないで、ただ否定することでおのれの弱みをかばっているのかもしれません》
この文書の最後にライオンを飼育する家庭の寓話があり、息子が猛獣を飼うことに反対で、父親がこれは猛獣でなくただのライオンだと言い合っている内に、当のライオンは立派な鬣の猛獣になったと話を続け、彼女はこう結んでいる。
《わたしが会った若いライオンたちは、なによりも有能な飼育者を望んでいました。つまり、政治家、そしてつまりわたしたち国民です。わたしたちはもう一度よく考えてみる必要があります。「平和」、「憲法擁護」、「再軍備反対」、「中立主義」という一連の美しいことばと、このことばが結合される過程でいつのまにか脱落してしまう「国防」ということについて》
倉橋由美子と大江健三郎。いったい、どちらの言葉が現在でも通用するだろうか? 文学としても将来は倉橋氏しか残っていないだろう。そして、驚いたことに、大江氏の61年前と何一つ変わらない恥辱的な思考停止に多くの反日メディア集団や時代錯誤の政治家、運動家が、半世紀以上も前の「東京の壁」の東側で囚われている。
今、改めて当時のメディアは今より健全だったことが解る。大江健三郎の軍隊嫌悪のコラムを載せた新聞がある一方で、きちんと倉橋由美子の大江批判を掲載する雑誌もあった。今のような蛸壺メディアではなかったからだ。
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