- アイテムは1000点以上、適切なリモートワーク環境の整備を支援
- 「次世代の就労環境プラットフォーム」目指し2021年に創業
新型コロナウイルス感染症の拡大を1つのきっかけに、国内でも急速にリモートワークの導入が進んだ。社員の働く場所が自宅にも拡張されたことで企業が直面したのが、生産性にも関わる「適切なリモートワーク環境の整備」という課題だ。
その解決策として備品を支給したり、「リモートワーク手当」や「在宅手当」を取り入れたりする企業も増えてきてはいるものの新たな悩みが生じている。
一律で備品を支給する場合、社員ごとの自宅環境や要望が異なるため平等性の担保が難しい。リモートワーク手当についてもその使い道が分からないだけでなく、手当類が報酬扱いになることから税金の負担が増えるというデメリットもある。
これらの手段に代わる新たな選択肢として、2021年創業のHQが立ち上げたのが“リモートワーク環境整備プラットフォーム”の「リモートHQ」だ。このサービスはリモートワークを導入している企業向けの福利厚生サービスで、社員一人ひとりが最適な自宅オフィス環境を整えられるようにサポートする。
アイテムは1000点以上、適切なリモートワーク環境の整備を支援
導入企業の社員からすれば、リモートHQは1000点以上のリモートワーク用製品を扱うオンラインマーケットのようなものだ。
ここにはチェアやデスク、モニター、ウェブ会議用の備品、観葉植物、空調システムなど生産性向上を後押しするさまざまなアイテムが並ぶ。各社員にはあらかじめポイントが割り振られており、それを活用して“自分に必要なツール”を“自らの意思で”選択していく。
「従来のオフィスであれば総務担当者が環境を整備してくれていました。でもハイブリッドワークの時代には社員一人ひとりが自分のオフィスの総務として、最適なリモートワーク環境を自宅に作っていく必要があります。(リモートHQは)会社にとってはそれを一括でアウトソースできるような位置付けのサービスです」(HQ代表取締役の坂本祥二氏)
冒頭で触れたように備品を一律で支給する場合だと、すでに自費で自宅の環境整備をしていた社員は損をしたように感じるかもしれない。一方でリモートHQであればそのような社員であっても、自分の環境に合ったものを好きに選べる。
また専門コンシェルジュによるサポートもあるため、リモートワークに慣れていない社員でも必要なものを探しやすい。このように各社員が個々の状況に合わせて必要な支援を受けられる点が、導入企業からも好評なのだという。
基本的に各アイテムはレンタルする形式になり、回数の制限などはあるものの必要に応じて交換することもできる。最適な環境を整備し続けるためのサービスという意味では「就労環境 as a Service」と言うこともできるだろう。
リモートHQの利用料金は社員数に応じた月額サブスクモデルで、社員1人あたり月額2000円から使える。複数の料金プランが存在し、それによって社員に割り振られるポイントが変わる仕組みだ。
企業からは「在宅手当の『成果が見える版』のようなイメージ」(坂本氏)で使われることが多く、在宅手当の一部を当てる、もしくは完全に切り替えるかたちで導入されているという。導入後の成果を可視化することを重要視しており、リモートHQがどのように生産性向上につながったのかを分析してレポーティングしているそうだ。
なおリモートHQと方向性の近しいサービスとしては米国のFirstbaseが3月に5000万ドルを調達している。
「次世代の就労環境プラットフォーム」目指し2021年に創業
HQ創業者の坂本氏はモルガン・スタンレー証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)やカーライル・グループを経てLITALICOに入社し、同社では取締役CFOや新規事業の責任者などを務めた。
2021年3月に起業をしたのはコロナの影響が大きい。個人の働き方が変わっていく中でそれを支える「次世代の就労環境プラットフォーム」が必要になると考え、準備を進めてきた。
リモートHQは2021年11月にローンチしたばかりではあるものの、スタートアップから創業100年に迫る老舗の製造業に至るまで複数社が導入。すでに1000人以上がサービスを使っている。まずは今年中にその数を1万人規模まで広げていくのが直近の目標だ。
HQでは組織体制の強化に向けて、4月6日にはCoral Capitalおよび個人投資家から総額約2億円の資金調達を実施した。この資金も活用しながら「費用対効果が高く、生産性向上に圧倒的に寄与するプロダクトを目指していきたい」(坂本氏)という。