飯坂線電車と衝突、軽の女性死亡 遮断機ない踏切進入、同乗者重体

 
福島交通飯坂線の電車と軽乗用車が衝突した現場を調べる署員ら=5日午前10時10分ごろ、福島市飯坂町平野

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 5日午前8時45分ごろ、福島市飯坂町平野字道間の福島交通飯坂線の踏切で、福島発飯坂温泉行きの電車と、同市飯坂町平野字小三郎内の農業の女性(65)の軽乗用車が衝突した。女性は出血性ショックで死亡し、助手席の同市飯坂町平野字明堂下の農業の女性(65)は意識不明の重体。電車の乗務員2人と乗客7人にけがはなかった。

 福島北署によると、現場は遮断機や警報機がない踏切。軽乗用車が飯坂線と平行する県道(通称・飯坂街道)から右折し、踏切に進入した際、同じ方向から走ってきた電車と衝突したとみられる。同署が詳しい状況を調べている。

 軽乗用車は衝突の弾みで線路沿いの小屋の壁に突っ込んだ。電車は2両編成で、衝突の後、約90メートル先で停車した。福島交通によると、電車の運転士は「非常ブレーキを作動させたが、直前に車が入ってきたため間に合わなかった」と話しているという。現場は平野駅と医王寺前駅の間で、国道13号にも近い場所。飯坂線は全線で運転を見合わせ、約5時間半後に全線で運転を再開した。

 装置ない踏切3割超、「第4種」過去にも死亡事故

 飯坂線沿線の住民からは「このままでは事故がなくならない」と再発防止を求める声が上がった。

 今回の現場は、第4種踏切に区分される遮断機や警報機がない踏切。福島交通によると飯坂線には70カ所の踏切があり、うち25カ所が第4種で約36%に上る。

 飯坂線の第4種踏切では、2002(平成14)年6月に自転車の女性、1998年2月に歩行者の女性が死亡する事故が起きている。死亡事故以外にも、毎年のように衝突事故が発生している。個人が設置し、踏切と認定されていない場所も多く、危険性が指摘されていた。

 福島交通によると、事故防止のため要所で警笛を鳴らすようにしているが、遮断機や警報機を設置するには膨大な費用がかかり、踏切同士が近いと遮断機や警報機が正確に作動しないという技術的な問題もあり、対策が難しいという。担当者は「第4種が第1種に格上げになった例もあり、回転灯を設置するなどの対策を進めたい。鉄道用地の中を通る個人の踏切については既得権益を主張される方もおり、閉鎖は難しいのが現状だ」と困惑する。

 現場近くで店舗を営む男性(52)は「あってはならないことだが、やはり事故は多い」と話した。

 「慣れぬ人には危険」

 関係者によると、女性2人は、現場近くの畑で開かれるナシ栽培の指導会に参加予定だったという。指導会の関係者の男性(52)は「危ない踏切なので私は音と目で確認しているが、当時は雨も降っており、後方から来る電車に気付かなかったのかもしれない」と肩を落とした。近くに住む60代の女性は「踏切は狭く、脱輪に注意するのが精いっぱい。慣れていない人はやはり危険だ」と表情をこわばらせた。

 運輸安全委が調査

 運輸安全委員会は5日、事故を調査するため鉄道事故調査官2人を現場に派遣し、電車からの見通しや軽乗用車からの踏切の見え方などを確認した。電車の損傷状況の確認などを進め、原因を特定するという。