ESG投資と「環境問題」「軍需産業」
環境問題は、ESG投資に連動する。今、投資の世界を席巻しているのが、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)の三つの言葉の頭文字を組み合わせた造語のESGだ。
世界持続可能投資連合 は、20年に世界のESG投資額が35兆3000億ドル(約3880兆円)に達したと発表した。近年、2桁台で急成長、全運用資産に占める割合は約36%に達している。
ESGのなかでもEは、もっとも要求度が高く、投資の世界ではCO2削減に留意しない企業は、真っ先に投資対象から外される。そんな西側の世界的潮流を、ロシアはうまく利用したことになるが、それは「たまたま」では済まない問題をはらんでいる。
4月1日からスウェーデン金融大手のSEBは、運用する六つのファンドで軍需産業株への投資を可能にした。SEBは、ESGの観点から「売上高の5%以上を軍需関連が占める企業に投資しない」という方針を決め、昨年、投資対象から外していた。
ESGは、持続可能な望ましい社会を目指すための手段であり、目的はSDGs(持続可能な開発目標)である。その観点からすれば、「軍需産業株を控える」という発想はわかるのだが、ウクライナ侵攻を機に、1年も経たずに方針変更するのは、「御都合主義」というしかない。
ESG投資の実相を探る
そもそもESG投資は正しいことなのか。
起点は、06年、国連のアナン事務総長(当時)が、責任投資原則(PRI)を発表した時に求められる。ESG投資には六つの原則があるとし、PRIへの署名が実質的に機関投資家のESG投資宣言となった。日本では、日本最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、15年、PRIに署名したことで一気に火が付いた。
以来、投資の世界はすこぶる安易になった。本来、ポートフォリオマネージャーが運用成績を競い、「成長する産業、伸びる企業」を探し、育て、共に成長し、果実を得るのが投資の世界である。だが、ESG投資は、第三者評価機関が各企業のESGへの取り組みを評価して算出する「ESGスコア」という名の指標によって判断するもの。「プロの眼」は、必要とされなくなった。
その結果、ごく単純にハイテク、再生エネルギー、電気自動車などはサスティナブルで、石油、石炭、ガソリン車などに関係すれば永続性はない、と仕分けられた。ESG投資信託の上位銘柄は、アップル(A)、マイクロソフト(M)、アマゾン(A)、アルファベット(グーグル=Gの持ち株会社)、メタ(旧フェイスブック=F)など。GAFA+Mの時価総額が膨張した理由でもある。
ESG投資の実相は、気候変動を心配する活動家やNGO、環境政党などと、ウォール街の金融資本が組んだ「金融界発の新しい投資の流れ」と考える。
だから著名投資家のウォーレン・バフェットは、ESGスコアを用いたような投資は行わない。「脱炭素には莫大なおカネがかかり、それは政府の仕事。企業は株主利益を追求する存在」と、いってのける。風力など再生可能エネルギーに莫大な投資を行っているが、「税メリットがあるから」と、わかりやすい。