先日は「世界でもっとも影響力のある100人」の9位にも選ばれたゲームデザイナー 宮本茂 氏が、Entertainment Weeklyのインタビューを受けています。話題はゲームと社会的テーマ、製作者のリスク回避志向、Wii版ゼルダ トワイライトプリンセス日本で不調など、さまざまな媒体でインタビューを受ける宮本氏としてもやや珍しい内容。

EW誌に掲載された英文をニセ宮本口調に変換して引用すると:

EW:任天堂のゲームは日本中心という批判があります。たとえば米国のゲーマーにはメトロイドよりHaloのほうが売れるとか。米国の若いプレーヤが求めているものが見えなくなってきているかもしれないと不安を感じたことはありますか?

宮本:Haloだって作れたんですよ。そういうゲームをデザインできなかったというわけではなくて、それを選ばなかったということでね。ぼくがゲームを作るときは、プレーヤがなにを遊びたいか調べてそれにゲームをあわせるというのは一度もやったことがないんです。ぼくはいつも、なにか面白い、新しい体験を作ろうとしてやっています。

(ニセ宮本口調が意外と難しいのであとは抄訳に変更)
制作費の高騰とリスク回避志向で新しいゲームデザインを忌避する傾向は理解できるが、製作者は自分で作りたいと思えるものを作る必要がある。自分のゲームをテストプレイしてもらうときは質問したりアンケート調査をとるのではなく、遊んでいる人の顔や目を見る。

EW:なにか社会的なテーマを持ったゲームを作ろうとしたことはありますか。作るとしたらどんな?

たとえば
  • 電車で老人や妊婦に優先席を譲らない若者が、お年寄りに敬意を持つようになるゲーム
  • (日本では稼いでいるのに税金を払わない人が多いので) 税金で社会がなりたっていることが分かるゲーム
「でもまあそんなこといいだしたら年寄りくさく思われるでしょうねぇ」。

EW:面白いと思ったのに期待通りに行かなかったタイトルはありますか?

も ちろん。たとえばF-ZEROやStarfoxなど、外部の開発企業と一緒に製作したタイトル。はっきりいえば残念な結果に終わった。客は期待したが、 ゲームそのものは成功しなかった。正直に言えば、ゼルダのトワイライトプリンセスも日本ではぜんぜんうまくいっていない。非常に残念。米国ではちゃんと売 れている。

EW:日本でトワイライトプリンセスがうまくいっていないのはなぜだと思いますか?

おそらく、 日本でWiiを買った人の大部分はかならずしもゼルダのようなタイプのゲームに興味を持っていないからだと思う。ゼルダのようなタイプのゲームを遊びたい と思う層でも、Wiiが手に入らない人もたくさんいる。しかし主な理由は、ゼルダのような大作ロールプレイングゲームに興味を持つプレーヤが年々少なく なっていることがあると思う。

――(ここまで)

といったところ。(Haloを名前くらいしか聞いたことのない大多数の方 のために補足すれば、Xboxの看板になっている多人数FPS対戦ゲームのシリーズ名です。評価・売り上げともに他を圧する間違いなく傑作のシリーズです が、個々の要素としてはPCの対戦撃ち合いゲームで確立されたものを持ってきて組み上げた内容。ただし持ってきた「だけ」ではなくそれぞれを慎重に取捨選 択・最適化してさらに磨き上げたバランスと奥深さが傑作とされる所以であり、プレーヤの期待を分析して答えるという意味で大成功したといえる作品)。

というわけで、海外のゲームサイトなどでは「何が"作ろうと思えば作れた"だふざけんな」 「本当に宮本か?」 「いやこれはゲームデザインの方法論の違いを説明したもの」とめずらしく紛糾しているようです。

Wii のゼルダや(GC版の) F-ZEROやフォックスが売り上げ的に期待はずれだったのは残念な話ですが、伝統的なコンシューマゲームを遊ぶ層が薄くなっているならば仕方のないこと なのかもしれません。宮本氏はこの状況を打開すべく「F-ZEROマシンに載ったマスターチーフとマリオが優先席で寝たふりをする若者を締め上げたり脱税 を取り締まる多人数対戦ゲーム」を製作されてはいかがでしょうか。


[via Joystiq]