Getty
ゲーム専用機ではライバル関係にあるソニーとマイクロソフトがクラウドゲーミング等で提携する意向確認書を締結して業界を驚かせましたが、最も驚いたのは当事者であるはずのPlayStationチームだったとの噂が報じられています。米Bloombergの匿名情報筋によると、マイクロソフトとの交渉は昨年始まり、ソニーの上級幹部が直接当たり、PlayStationチームは関与していなかったとのこと。ゲーム部門のスタッフはニュースで初めてその件を知り、マネージャーは部下を落ち着かせ、次世代ゲーム機(PS5(仮))の計画が影響を受けないと保証しなければならなかったと語られています。
同記事はソニーの上層部がMSとの提携に踏み切らざるを得なかった背景も説明しています。ソニーは2012年にクラウドゲーミングサービスのGaikaiを約300億円で買収して、クラウドゲームに参入した最初の大手ビデオゲーム会社となりました。その3年後にPlayStation Nowをスタートし、現在までに70万人もの有料加入者を集めたものの、社内サーバーを使っているために接続が途切れやすい苦情が相次いでいるとのこと。
その一方で、同社のPlayStation NetworkはアマゾンのAWSによりホストされています。が、昨年ソニーとアマゾンがクラウドゲームに関する密接なコラボレーションをめぐる協議を行ったところ、商業的条件には同意に至らず。それがソニーとマイクロソフトの交渉に繋がった......という事情に精通した人物の話も伝えられています。
そしてマイクロソフトとの提携の前に、一部のPlayStation Now上級スタッフを他の部門に移動させるなどの人事異動が先行していたとのこと。Azureでのホスティングといった具体的な交渉内容は知らされていなくても、PlayStationチーム内にもクラウドゲーム部門に何らかの動きがあることは薄々感づかれていたかもしれません。
Bloomberg記事は、ソニーの吉田憲一郎社長も自社開発技術では今後のクラウドゲーミングの潮流に付いていけないと気づき、昔のゲーミングの宿敵(マイクロソフト)に立ち向かうのではなく、コラボレーションを強いられている--として、クラウドゲーミングが今後の主流になり、ゲーム専用機ビジネスが時代遅れになると強調する趣旨です。
とはいえ、最先端を走るGoogle Stadiaであれ高速なネットワークインフラが必要とされ、全世界に展開して不自由ないプレイ環境を提供できるまでには時間が掛かるはず。当面はソニーとマイクロソフトのゲーム機が融合することもなく、「PS Nowの遅延が少なくなる」「PS4のダウンロード速度がアップする」程度の変化に留まりそうです。