ようこそ愛憎混じる学び舎へ   作:妄想癖のメアリー

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前回の感想で「クラスポイント取引に関する同意をポイントで買えるのはおかしい」とのご意見を頂きました。

まぁごもっともな意見でございます。笑
批判が来るのもコミで書かせていただきました。
以下感想欄より1部引用。

この話を書くにあたって僕が想定した流れは
・水無瀬がシステムについて調べる。
・ポイントで退学を阻止できることを知る。
・何とか大量のポイントを手に入れられないか模索する。
・クラスポイントを売るという手を思いつく。
というものです。

一応言い訳させていただくと
・クラスポイントについて把握してる生徒がいなかった。
・どちらにせよクラスポイントが0になることは想定されていた。よって他の教師には把握されない。
・プライベートポイントの使用方法等に関しては学校側、強いては理事長や教師にその裁量権があると踏んでの茶柱、理事長のゴリ押し等々が絡んで特例で許可された。

という「独自解釈」「独自設定」の元書かせていただきました。何せ学校で前例がない話ですし、僕自身の原作への理解度も多いとは言えないので、矛盾点等々ございましたら感想欄に書いてくれると、僕の元気が残っているなら返信させていただきます!

後感想のGoodが時間経たないと押せないってことなので、もういっその事押すの辞めさせていただきます!
返信については上記の通り僕の体力が残っている内は返信するので、ご意見、感想、質問等ありましたら遠慮なくお願いします!

少し長くなってしまいましたねw
では本編へどうぞ!




第14話 希望への道

 5月初日から、早くも1週間が経とうとしていた。須藤達3バカも黙って先生たちの話に耳を傾けている。

 現在ポイントをプラスにする目途は立っていないが、Dクラスは前回の騒動から結束を強めていた。

 授業後、何かを打ち合わせたのか、平田と水無瀬は皆が食事の用意に取り掛かるタイミングで黒板の前に立って口を開いた。

 

「茶柱先生が言っていたテストが近づいている。赤点を取れば、即退学という話はみんな理解していると思う。そこで、僕らは参加者を募って勉強会を開こうと思うんだ」

 

「基本的には洋介の所に参加してもらう。そして点数が特に不安な人たちには僕の所に参加してもらうつもりだよ」

 

 平田に続いて水無瀬が言った。

 ある程度成績がある人は平田の所、成績が壊滅的な生徒に関しては教えるのが上手いという理由で水無瀬の所にまとめて教えようといった魂胆だ。

 まあ実際には池や山内をはじめとした、成績が悪い生徒は平田を嫌っているという理由が大きいが。

 

「もし勉強を疎かにして、赤点を取ったらその瞬間退学。それだけは避けたいんだ。それに、勉強することは退学を阻止するだけじゃなく、ポイントのプラスにも繋がる可能性がある。高得点をクラスで保持すれば査定だって良くなるはずだよ。だから、不安のある人は僕たちの勉強会に参加してほしい。勿論誰でも歓迎するよ」

 

「ちなみにお前ら3バカは僕の所に強制参加だ、いいね?」

 

 クラスで笑いが起こる。疎まれていた彼らもすっかりクラスの一員と言えるようになった。

 彼らは照れくさそうに頭を掻きながら同意する。

 

「今日の5時からこの教室でテストまでの間、毎日2時間やるつもりだ。参加したいと思ったら、いつでも来てほしい。もちろん、途中で抜けても構わない。僕からは以上だ」

 

 そう言って話を終えた途端、数人の赤点生徒がすぐに席を立ち、平田の元へ向かう。赤点組で平田の元へすぐに駆けつけなかったのは、先ほど指名された須藤、池、山内の3人。

 水無瀬の所はお馴染みのメンツである。そこに参加するのは気まずいのだろうか。

 

「よし! これで解散! 時間を取ってごめんね。僕等からは以上だよ」

 

 水無瀬がポンと手を叩いて呼びかけると、クラスは元の喧騒を取り戻した。

 席についていつも通り綾小路と弁当を食べようとしていた水無瀬の所に来たのは堀北。

 件のやり取りからもう1週間が経っているが、その間堀北は話しかけるタイミングをうかがっていた。

 

「……水無瀬君。その、もし良かったら、一緒に食べない?」

 

 顔を小さく赤らめ、そっぽを向きながら小さくそう言った。

 綾小路は水無瀬の顔を反対に向け小さく囁いた。

 

「水無瀬、一体堀北に何をしたの?」

「……何もしてないよ」

「嘘。堀北があんなメスの顔をするなんてありえない」

「……ちょっと慰めただけだよ……」

「ああ、また水無瀬の毒牙による犠牲者が……」

「人聞きの悪いこと言わないでくれよ!?」

 

 言い争いが激しくなりそうな中、それを止めたのは堀北。

 

「……そのダメ、かしら……?」

 

 申し訳なさそうにもじもじとしながらこちらを見つめる堀北。4月とはえらい違いである。

 そんな様子に2人は即答する。破壊力は抜群らしい。

 

「「いえ! 嬉しいです!」」

 

「…そう。じゃあ失礼するわね」

 

 そう言って腰かける堀北。それを見た綾小路達は語り掛ける。

 

「堀北から誘ってくるなんて珍しい。私とっても嬉しい」

 

「ああ、いつも僕達から誘っていたからね」

 

「……別に今まで嫌だったわけじゃないわ。それに今回はお願いがあるの」

 

 堀北は続ける。

 

「あなた達がさっき言っていた勉強会。私も参加させてほしいの」

 

「勉強会。確かに赤点対策にはなる……でも堀北が他人を気に掛けるなんて」

 

 そう言って笑う綾小路。確かに今までの彼女では考えづらい行動だった。

 堀北は気まずそうに続ける。

 

「……別にそんなんじゃないわ。ただこのクラスをAクラスまで上げると水無瀬君と約束したのだから、私も協力しないのは良くない。それに綾小路さんもそちらに参加するのでしょう? 彼女はそこまで成績が悪いわけではないけど、それでも4人をたった1人で教えるのは大変でしょう?」

 

 確かにその通りであった。50点を80点まで上げるのは簡単だが、20点を50点まで上げるのは至難の業だ。それも3人となると、流石の水無瀬も負担が大きくなる。

 それを聞いた綾小路は水無瀬に耳打ちをする。

 

「約束……? 堀北と何を約束したの?」

「さっき彼女が言っていた通りだよ。5月のあの後に先に帰ってもらっていただろう? その時だよ」

「……絶対何かあったでしょ?」

「まあ、無いとは言わないさ。ただ彼女のプライベートの事だ。話すことはできないよ」

「……ふーん、プライベートの事を話したんだ? あんなに夜遅くまで。予定よりだいぶ遅かったみたいだけど」

 

 また騒がしくなる2人。それを呆れた目で見ながら堀北は聞く。

 

「……それで、協力させてもらってもいいかしら?」

 

 水無瀬は笑顔で答えた。

 

「ああ、もちろん。助かるよ。ただ……今まで通りのアレからわかる通り、彼らはマシになったとはいえやっぱり君には合わないかもだよ? それでも大丈夫かい?」

 

 気遣いマックスの言葉を彼女に掛ける水無瀬。それを聞いた堀北は少し悩みながら答えた。

 

「……このままだと彼らは赤点の可能性が高いわ。そしてAクラスに上がるためにはマイナスポイントを取らないことは大前提で、プラスになるポイントを集めることが必要不可欠でしょう? 私はテスト点数がプラスに結びつく可能性もあると見ているの。そのためなら協力を惜しむつもりはないわ」

 

 それを聞いた水無瀬は嬉しそうに笑顔で語り掛ける。

 

「嬉しいよ、堀北さん。君もこの学校で成長できているみたいだね。僕も負けてられないや」

 

 それを聞いて顔を赤くしてそっぽを向く堀北。

 それをイジる綾小路と微笑ましそうに見る水無瀬と3人は穏やかな昼休みを過ごした。

 

 

 

「ってことで放課後来てもらえない?」

 

「おう、良いぜ。顧問やチームにも予め休むって伝えちまったしな。教えてもらえるっていうならこっちも全力でやるぜ!」

 

「ああ、俺も! ……しっかし助かったぜ水無瀬! 平田の所にはいきたくなかったからな! お前も行くだろ? 山内」

 

 須藤と池は快諾したが、山内は渋そうだ。

 

「えー? 一夜漬けじゃダメなの? これから毎日なんて面倒くせえよー」

 

「いいじゃねえかよ! 皆で勉強しようぜ?」

 

「……脅すようで悪いけど、赤点を取ったら退学だ。それは嫌だろう? 別に100点を取れって言ってるんじゃない。今から2週間しっかり勉強すれば、クラスの半分あたりには連れてってあげると約束するよ」

 

 池と水無瀬はそう説得を試みる。

 

「それでもなー」

 

 山内はそれでも渋る。よほど勉強が嫌らしい。続けて語る山内

 

「大体な──「何の話してるの?」櫛田ちゃん!?」

 

 そんな中来たのは櫛田である。

 その端正な顔を不思議そうに皆に向けている。水無瀬はそんな彼女に説明をする。

 

「ああ、櫛田さん。いま山内に勉強会に来てもらうように説得してるんだ」

 

「そうなんだ! ……勉強はしっかりやった方がいいよ? 私山内君が退学したら悲しいなー」

 

「って言ってもよー。2週間毎日だぜ? ……そうだ! 櫛田ちゃんも来てよ! そしたら俺も行くよ!」

 

 渋りに渋った後、名案が浮かんだというように手を叩いて言う山内。

 

「そう? じゃあちょっと顔出してみようかな? そっちには誰が来るの?」

 

「僕たち4人に沖谷君と清楓ちゃん。助っ人に堀北さんも来てくれるよ」

 

 その瞬間櫛田の雰囲気がガラリと変わった事に水無瀬は気が付いた。

 

「そうなんだ……いいよ! 私も行く! 今日からやるの?」

 

「ああ、そのつもりだよ。図書館でね、これから向かうけど準備はできてるかい?」

 

「うん! 一緒に行こ!」

 

 

 

 ──図書館へと向かう一同。そこには気まずそうに座る沖谷と、綾小路と堀北の3人がいた──

 

「……どうして櫛田さんがいるのかしら?」

 

 途端に不機嫌になる堀北。その様子を見て水無瀬は思う。

 

「(やはり何か事情がありそうだね……)」

 

「櫛田ちゃんは俺のために参加してくれるんだぜ! すげえだろ!」

 

 先ほどの渋っていた姿はどこへやら。偉そうに語る山内。

 

「……まあいいわ、それじゃ始めましょ。それぞれ担当を決めるわ……須藤君と池君と綾小路さんは水無瀬君が担当。沖谷君と櫛田さんと山内君は私が担当するわ」

 

「沖谷は赤点組だったの?」

 

 そう問いかけたのは綾小路。確かに赤点ラインに彼の名前は無かった。

 

「う、うん。そうなんだけど……その、テストなんだけど、赤点ギリギリだったから心配で……ダメ……だったかな? 平田くんのグループ、ちょっと入りにくくて……」

 

「いいや、全然大丈夫さ。勉強会に参加しようという心持は素晴らしいものさ」

 

 変わりに答えたのは水無瀬。沖谷は嬉しそうに顔を赤らめる。

 その様子は下手な女子よりも可愛らしかったらしい。

 

「うん! ありがとう! 水無瀬君!」

 

「……堀北、水無瀬は男も落とすの?」

「知らないわよ……ただ一部の女子たちには人気が出そうな組み合わせね……」

「……? 堀北もそういうの見るんだ。意外」

「……偶々知っていただけよ。別に興味はないわ」

 

 そう言って勉強の準備を進める中、堀北は櫛田に強く言い放つ。

 

「櫛田さん。綾小路さんから聞かなかったかしら? あなたは───」

 

「実は、私も赤点を取りそうで不安なんだよね」

 

「あなたは……前の小テストで悪い成績ではなかったはずよ」

 

「うーん、実はあれ、偶然っって言うか。選択問題が多かったじゃない? だから半分くらい当てずっぽうだったんだよ。実際は結構ギリギリで……」

 

 櫛田はえへへと可愛く頬を人差し指で掻いた。

 

「……わかったわ」

 

 堀北は何か言いたげだったが、それを口にすることはなかった。

 

 

 

「っと。ちょっと疲れたね、5分だけ休憩してくるよ。皆も休むといい」

 

「……私も行くー」

 

 そう言って端末をいじった後席を立つ水無瀬。何かを確認した綾小路もその後を付いていく。

 それから少し経った後唐突に堀北は言葉を発した。

 

「……あなたたちを否定するつもりはないけれど、あまりに無知、無能すぎるわ」

 

「……なんだと?」

 

 いつもだったら何も言わなかった堀北だったが、先ほどから嫌に機嫌が悪かった。

 内容がなかなか理解できずイライラしていた須藤もそれを受け止める。

 

「別に分からないことは良いわ。それぞれ得意不得意があることは構わない。ただあなた達は集中力が無さすぎる。さっきからずっと困っていた水無瀬君に申し訳ないと思わなかったのかしら?」

 

「……別にお前に教えてもらったわけじゃないだろ。こっちにはこっちのやり方があるんだよ」

 

 思うところがあったのか語気を弱める須藤。しかし一度それを買ってしまった以上引く選択肢はなかった。

 

「ええ、その通りだわ。ただあなた達のためにわざわざ予定を開けて勉強会を開いていた水無瀬君が可哀そうだったと思っただけよ。こんなペースで目標のクラス半分まで行けるのかしらね?」

 

「言いたいこと言いやがって。勉強なんざ、将来なんの役にも立たないんだよ。あいつだってそこまでやるつもりはないだろ」

 

「勉強が将来の役に立たない? それは興味深い話だわ。根拠を知りたいわね」

 

「こんな問題解けなくても、俺は苦労したことないからな。勉強なんて不要だろ。教科書に囓り付いてるくらいなら、バスケやってプロ目指した方がよっぽど将来の役に立つぜ」

 

「それは違うわね。こういった一つ一つの問題を解けるようになって初めて、今までの生活にも変化が生じてくる。つまり、勉強していればもっと苦労しなかった可能性がある、と言うことよ。バスケットにしても同じ道理ね。あなたはきっと彼に言われるまで自分に都合の良いルールでバスケットに取り組んで来たんじゃないかしら。本当に苦しい部分には勉強のように背を向けて逃げていたんじゃない? 」

 

「っ!」

 

 水無瀬達が居なくなった途端にこれである。

 数回ほど言葉のやり取りを続けた後、櫛田は見ていられないと堀北に言う。

 

「やめてよ2人とも! 堀北さんもそんなひどいこと言わないでよ……ちゃんと勉強しようよ」

 

 それを聞いた堀北の矛先は櫛田へと向かう。

 

「櫛田さん。本気でそう思っているの?」

 

「……どういう事? 堀北さん」

 

「あなたが本心からそう言ってるなら、構わないわ。でも、私にはあなたが本気で彼らを救いたいと思っているようには思えない」

 

「何それ。意味わかんないよ。どうして堀北さんは、そうやって敵を作るよようなこと、平気で言えちゃうの? そんなの……私、悲しいよ」

 

「……じゃあね皆、また明日」

 

 皆の前で言われたのが堪えたのか、櫛田は短く言葉を残して立ち去る。

 

 

 

 

「いやーあの自販機絶対壊れてるよ。なんでこんなぬるいサイダーを飲まなきゃいけないんだか……」

「水無瀬が甘い。こういう時はあったかい飲み物に限る」

「……常温じゃないか。やっぱ壊れてる……ってみんなどうしたの?」

 

 地獄のような空気間の中水無瀬達は帰ってきた。

 池から状況を聞いた彼は頭に手を当てて困ったようにつぶやいた。

 

「……はあー。2人とも言いたいことは分かるけど言い方が悪すぎる。……今日は解散だ。いったん頭を冷やしてまた明日集合しよう。僕は櫛田さんを追いかける。先に帰っててくれ清楓ちゃん」

 

「うん……頑張って」

 

 

 

 そう言って解散する一同。水無瀬は数回聞き込みを行った後、屋上へと続く階段へ向かった。

 屋上には櫛田が一人で立っている。それを見た彼は端末の録音機能をオンにしてポケットに入れた。

 鞄をゆっくりと床に置いた櫛田。その後彼女が呟いた言葉は、到底彼女の口から出たとは思えないほど低く、重い声だった。

 

「あ────────ウザイ」

 

「……!」

 

 水無瀬は満足そうに口角を上げ、その様子を見る。

 

 

 

 ──いったいどれほどの時間がたっただろう? それはそれは見事な罵詈雑言の嵐を並べた櫛田は最後に扉を大きく蹴りつける──

 

 ガンっ! 

 

 夕暮れ時の学校に、扉を蹴る音は想像以上に大きく響き渡った。思わぬ大きな音。田も少しやり過ぎたと思ったのか、一瞬身を固くし息を殺した。それが仇になった。誰かに聞かれたんじゃないかと振り返った田の視線の先には、笑顔を浮かべた水無瀬が居た。

 

「水無瀬君!? ……ここで……何してるの」

 

 驚いた声とともに彼女の冷ややかな声が聞こえる。

 

「堀北さんが失礼なことを言ったと言いてたからね、勉強会に呼んだ僕が代表で謝りに来たのさ」

 

 あくまで笑顔を絶やさない水無瀬に対して櫛田は追随を緩めない。

 

「聞いたの……?」

 

「ああ、バッチリとね」

 

「そうなんだ……!」

 

 つかつかと櫛田が階段を降りてくる。そして、自ら左の前腕を水無瀬の首元にあてがい壁に押し付けた。口調も、行動も、全て彼の知る櫛田ではなかった。

 

「今聞いたこと……誰かに話したら容赦しないから」

 

 とても、脅しとは思えないほど、冷たい感情の籠った言葉。

 

「もし話したら?」

 

「今ここで、あんたにレイプされそうになったって言いふらしてやる」

 

 そう言うと、彼女は今度は水無瀬の左手首を掴み、ゆっくりと手のひらを開かせ、自らの手をその手の甲に添える。そして彼の手を自らの胸元へと持っていく。 柔らかな感触が、手の平全体を通じて伝わって行く。

 

「……何が目的だい?」

 

「あんたの指紋、これでべっとりついたから。証拠もある。私は本気よ。分かった? そしたらあんたは退学。そして残ったあんたの大事な彼女も虐めて精神崩壊させてやる。……それが嫌だったらこの事は誰にも言わない事。わかった?」

 

「ふふふ……」

 

「……何がおかしいの?」

 

 

 

「──これ、なーんだ? ──」

 

 そうして端末を取り出し、彼女の前でとある音声を再生する水無瀬。

 

『マジでウザい、ムカつく。死ねばいいのに……』

『あー最悪。ほんっと、最悪最悪最悪。堀北ウザい堀北ウザい、ほんっとウザいっ』

『──今ここで、あんたにレイプされそうになったって言いふらしてやる』

『──あんたの大事な彼女も虐めて精神崩壊させてやる。……それが嫌だったらこの事は誰にも言わない事。わかった?』

 

「……」

 

「まさかあの天使と名高い櫛田の裏の顔がこんなとはね? 皆が知ったらいったいどうなるか……実に気になるじゃないか? 掲示板に流すのも手だね。君のお友達からすぐに学年全体に広まるだろうね? 『櫛田桔梗は悪口を言いまくってた挙句に冤罪で退学にさせると脅すような人間だ』ってね」

 

 水無瀬は大げさに手を広げて続ける。

 

「さて、ついてきてくれるよね? 櫛田さん?」

 

 

 

 そう言って屋上へと来た2人は入ってきた扉から離れる。

 

「……何が目的なの?」

 

「目的?」

 

「惚けないで! 最初の方から録音していたってことは最初から気が付いてたんでしょ!? ……誰、堀北に聞いたの?」

 

 そう言う櫛田。存外察しがいいらしい。

 

「ああ、なるほど。君が堀北さんを嫌うのは彼女が君のその秘密を知っているからか、納得したよ。それで? どうしてここまでストレスを貯めてまで好かれようとするんだい?」

 

 純粋に疑問に思ったことを問いかける水無瀬。

 それに憎いように答える櫛田。

 

「誰からも好かれるよう努力することが悪いこと? それがどれだけ難しくて大変なことか、あんたに分かる? 分かるわけないよね? のうのうと偉そうにするだけで周りはあんたを持ち上げてくれる。私がそれをするためにどれだけ苦労しているか……」

 

「たとえ堀北……堀北さんのような人でも、私は表向き仲良くしていたいの」

 

「ストレスを抱えて、でもかい?」

 

「そうよ、それが私が望む生き方。自分の存在意義を実感することが出来るから」

 

 そう言い放った櫛田。そこには恐ろしくも確固たる意志が込められていた。

 水無瀬は言い返す。

 

「存在意義? 随分と大きく出たじゃないか」

 

「あんたに! ……あんたに何がわかるっていうの!? 何もしなくてもテストは満点、運動もできて、顔も恵まれて生まれてきたあんたに! ……私にはこれしかないの、たったこれしか。それすら求めることも許されないの!?」

 

 最早激情を抑えようともせずに言い放つ櫛田。

 

「他人から愛されたい。そのためには自分がどんなにストレスを抱えたとしても問題はないと?」

 

「ええ……そうよ。悪い? 気持ち悪い? こんな女」

 

 疲れたかのように座り込む櫛田。そんな彼女に水無瀬は優しく語り掛ける。

 

「何を言っているんだ? 『他人から愛されたい。そのためには自分すら犠牲にする』だなんて。その心はとても尊いものじゃないか!」

 

「……は?」

 

 突然饒舌に語り始めた彼に困惑する櫛田。それに構う事無く水無瀬は続ける。 

 

「第一それで君が今まで誰を不幸にしてきた? 君が今までやってきたことを客観的に考えてみよう。クラスの雰囲気を良くすることに貢献し。5月には崩壊寸前だったクラスを平田と君を中心にまとめ上げた。ほら、君が今まで成し遂げてきたことだ。他人を幸福にしてその上誰も不幸になってない!」

 

「ちょ……ちょっと!」

 

 流石に予想していたモノとは違う答えだったのか、櫛田は慌てて止めようとするが彼は止まらない。

 

()だよ。君の行動には愛が伴っている。その内心は関係ないんだ……」

 

 興奮したようにそう語った水無瀬。

 

「それに何もしなくても結果を示せると言われるのは心外さ──」

 

 そして堀北に言った内容と同じように彼女に自分の生い立ちについて語る水無瀬。

 

 

 

「……呆れた。なんでこんな女にそう自分の()()をペラペラ喋れるの? バカなんじゃないの?」

 

 そのあまりに重い内容を聞いて理解できないというように言い放つ櫛田。もうその言葉自体はキツイ物があったが、その激情はすっかり鳴り止んでいた。

 

「だからあんまり自分を卑下するような言葉を吐くんじゃないさ。君は美しい人間だよ。世界中の誰が君を批判しようが僕は君の味方さ。絶対に。……辛くなったらその恨み辛みは僕に吐くと言い。たんと受け止めてあげるようじゃないか?」

 

 そう言ってしゃがみ込んでいる櫛田の目の前で両手を広げる水無瀬。女をなだめる時の常套句と化していた。

 そこにポンポンと小さくパンチする櫛田。どうやらその手に乗る気はないらしい。

 

「……バカ。アンタってほんっとにバカ。そんなこと言ってホントはただのドMの変態なんじゃない?」

 

 余りの言いように顔を歪める水無瀬。

 

「おいおい、流石に心外だぞ?」

 

「ふふっ、水無瀬君の変態! バーカ!」

 

 その反応が面白かったのか、更に暴言を吐く櫛田。しかし先程とは違って、その顔には心からの笑顔が浮かんでいた。

 それを見た水無瀬は思わず彼女の頭を撫でながら優しく語り掛ける。

 

「……ほら、ちゃんと笑えるじゃないか」

 

「撫でるなバカ……どうせいろんな女の頭で慣れてるんでしょ? ファンクラブでは有名なんだよ? 『水無瀬柊は女たらしでナデポ野郎だー』って」

 

「……色々と初耳なんだが……てか何? ファンクラブって……」

 

「あれ! 知らないの!? ──」

 

 

 

 

 

 

 ────先ほどの空気とは打って変わって穏やかに語り合う2人。笑みを浮かべながら話す彼らは、傍から見たら楽しげに遊ぶ親子や兄弟に見えたそうな────

 

 

 

 

 

「でね! 池の奴すっごい気持ち悪いんだよ!? 私の水着姿を見て『櫛田ちゃん櫛田ちゃん櫛田ちゃんー!』って。マジでゲロ吐きそうになっちゃったもん!」

 

「ははは、彼らしいと言えば彼らしいね」

 

「水無瀬君からもやんわりと言っといてよー『それじゃあモテないぞー』って」

 

「彼女いない歴=年齢の僕がそれを言っても説得力0だよ……」

 

「彼女いないんだ? じゃあ私が立候補しちゃおうかな?」

 

「おいおい……クラスの天使様がそんなこと言ったら君のファンから殺されてしまうよ」

 

「そんな天使様を水無瀬君はたぶらかしたんだよ? その罰として皆に言っちゃおうかなー? 『私……水無瀬君が好きなの』って」

 

「勘弁してくれ、池と山内に殺されてしまうよ」

 

「ふふっ、それにね────」

 

 

 

 

 ────そんな彼らの語らいは、閉校のチャイムが鳴る頃まで続いたとさ────

 

 

 

 

 

 

 

 




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皆がこの小説に求める要素

  • 綾小路や坂柳とのイチャイチャ
  • 上記以外のヒロインの追加
  • 恋愛要素以外の日常パート
  • 本編を早く進めること
  • その他(感想で書いて頂けると助かります)

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