【4月5日 時事通信社】ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで民間人とみられる多数が犠牲になった事件で、ロシア軍が撤退する前の惨状が明らかになってきた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は4日、衛星写真の記録から、占領下の3月中旬時点で路上に遺体が放置されていたと報道。住民の証言もあり、関与を否定するロシア側への「反証」となっている。

 ロシア国防省は3日、「トルコで対面の停戦交渉が行われた翌日の3月30日には(ブチャを)完全撤収した」と発表。「占領中、暴力による被害を受けた住民は一人もいない」と強弁し、事件はブチャを奪還したウクライナなどの「やらせ」と主張していた。

 住民の女性がロイター通信に証言したところによれば、夫と暮らしていた住宅にチェチェン共和国出身とみられる兵士が居座り、軟禁状態に置かれた。女性は解放されたが、夫は居場所が分からなくなり、傷ついた遺体が数日後に地下室で見つかったという。

 ウクライナ国防省高官は2日、北部キーウ州全域が「解放された」と発表。内外メディアがブチャに入り、写真や映像で被害状況を報道した。少なくとも410人の遺体が見つかったとされている。4日に現地を訪れたゼレンスキー大統領は「戦争犯罪であり、ジェノサイド(集団殺害)と見なされるだろう」とロシアを非難した。

 ウクライナ国防省情報総局は4日、ブチャに展開していたという極東ハバロフスク地方のロシア軍部隊の名簿を公表。「すべての戦争犯罪人は裁きにかけられる」と強調した。調査団体によると、1648人分の氏名、生年月日、パスポート番号などが含まれている。(c)時事通信社