過去には旅客機撃墜=ロシア、捜査協力せず―「感情より証拠」必要
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【4月5日 時事通信社】ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで住民とみられる遺体が多数発見された。ロシアの軍事行動に絡み、一つの事件で大勢の民間人が犠牲となり、国際問題化したものは初めてではない。2014年に東部ドネツク州の親ロシア派支配地域上空でマレーシア機が撃墜され、乗客乗員298人全員が死亡する惨事も起きた。
「ロシア軍による残虐行為の映像に衝撃を受けた。国際法廷での追及に向けて必要な証拠収集に協力する」。欧州連合(EU)のミシェル大統領は3日、ブチャの事件を受けてツイッターにこう投稿し、捜査を後押しする姿勢を強調した。
ロシアのプーチン大統領がウクライナの「非ナチ化」などを一方的に掲げ、侵攻が始まったのが2月下旬。民間人の犠牲をいとわない無差別攻撃が続き、世界各地のデモやウクライナ国内で「プーチン氏をオランダ・ハーグに」と訴える声が出た。戦争犯罪をめぐるハーグの国際刑事裁判所(ICC)に捜査を求める趣旨だ。
やはりハーグにある国際司法裁判所(ICJ)は3月16日、ウクライナの提訴を受け、ロシアに軍事行動を停止するよう仮保全措置命令を出した。法的拘束力があるが、プーチン政権は無視。ロシア軍の撤収時、今回の事件が判明した。
今後の捜査では、ロシア側が真っ向から反論したり、協力を拒んだりする可能性が高い。14年のマレーシア機の事件では「ウクライナ軍機が撃墜した」「ウクライナが地対空ミサイルを発射した」と主張し、情報を混乱させた上で関与を否定。殺人容疑などで訴追された元情報機関員の身柄引き渡しにも応じていない。犠牲者が多かったオランダの裁判所で20年に審理が始まったが、今も被告不在のままだ。
「第2のスレブレニツァ」。ブチャは1995年のボスニア・ヘルツェゴビナ東部での約8000人殺害事件を世界に想起させ、非難の声が広がっている。
ウクライナには冷静な意見もある。有力メディア「ゼルカロ(鏡)」は4日、戦争犯罪を裁くためにこそ、国内での本格捜査が必要だと指摘。悲しみや怒りといった「感情ではなく、証拠を集めている」という検察当局者の立場を伝えた。(c)時事通信社