ようこそ愛憎混じる学び舎へ   作:妄想癖のメアリー

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自分でこの作品を書き始めてから、お気に入り登録した作品の続きをあまりすぐに見なくなってしまいました。

今まではよう実等含む素晴らしい先駆者様方の作品が更新停止していたりして悶々としていましたが、もしそういう方がいたのなら自分で作品を書いてみるのもよいかもしれませんね。(露骨な誘導)

って言うか評価バー赤くなってる!?すごくないまじで!
皆さんありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!
そのモチベが有り余ったのか、今回は1万字超えです。
どうぞお楽しみに!



第9話 日常と成長

 ────時は少し経ち最初の土日を終えた月曜の朝。ドタバタとした金曜をを過ごした3人は、それまでのいざこざなど忘れて3人で仲良く横並びとなって登校していた────

 

「結局これから弁当は水無瀬が作ることになった……」

 

「おや? 不満かい? 頑張って作ったのだから喜んでもらえると嬉しいのだけどね」

 

「そうは言ってない。ただ水無瀬の負担が大きくなると良くない。私も何かできることはない?」

 

「適材適所だよ。君たちだって朝僕を起こしてくれたり、食器の跡片付けだったり色々してくれているじゃないか」

 

「当たり前でしょう。料理を作るのと皿洗いとでは、かかる労力が大きく異なります……そうですね、では私はこれから洗濯を担当しましょうか。現時点では水無瀬君に任せっぱなしでしたから」

 

「……助かるよ。女物の下着を洗濯するのは僕にとってはいささか心労が大きい」

 

 そう提案する坂柳に対して感謝する水無瀬だったが、その内心を悟った綾小路がそれに待ったをかける。

 

「……坂柳、あなたの魂胆は透けて見える。水無瀬の服をあなたに任せるのはあまりにもリスクが高い」

 

「あら? 何を言っているのかわかりませんね? どういう事でしょうか綾小路さん」

 

「金曜の夜。こっそり脱衣所の洗濯籠を見た。そしたら水無瀬のパンツが籠の一番上に置いてあった。その日水無瀬は一番最初に風呂に入ったのにこれはおかしい。あなたにしては珍しく詰めが甘かった」

 

「……」

 

「……洗濯は今まで通り僕が担当しよう。いいね?」

 

「はい……」

 

 

 

 ──そんな会話が流れて三人は各教室へと向かう──

 

 

 

「おはよう山内!」

 

「おはよう池!」

 

 二人が教室へと入ると、満面の笑みで池が山内に話しかけていた。それを見た水無瀬は彼らに話しかける。

 

「おはよう二人とも。今日は珍しく随分と速いんだね?」

 

 彼の言う通り、この二人はいつも遅刻ギリギリで登校していた。

 

「おう! おはよう水無瀬! いやー授業が楽しみで目が冴えちゃってさー」

 

「そうそう。この学校は最高だよな! ……っと綾小路! ここから先は女子禁制の場だ! シッシ!」

 

 そう言って虫を追い払うような動作をする山内。それを見た綾小路はほほを膨らませてこう言った。

 

「むう……私には堀北という親愛なる隣人がいる。別にそっちに行きたかったわけじゃない。堀北ー」

「……何かしら綾小路さん。急に抱き着いてこられると鬱陶しいのだけど?」

 

「ああ、行っちゃった……あんまり彼女をいじめないであげてくれよ? 彼女は友達が少ないんだ」

 

「っけ! こんな時にも心配かよ? いいよなー可愛い幼馴染がいてよ!?」

「堀北、私かわいいって言われた。でもうれしくない」

「……いい加減離れてくれないかしら?」

 

「まあ俺たちは優しいからな! 親愛なる我が友のお前には特別にこの特別な会に参加する権利をやろう」

 

 そうふんぞり返って池は続ける。

 

「おーい博士ー。ちょっと来てくれよー」

 

「フフッ、呼んだ?」

 

 太目な生徒が、あだ名なのか「博士」と呼ばれてゆっくりと近づいてくる。

 

「博士、女子の水着ちゃんと記録してくれよ?」

 

「任せてくだされ。体調不良で授業を見学する予定ンゴ」

 

「記録? 何させるつもりだよ」

 

「博士にクラスの女子のおっぱい大きい子ランキングを作ってもらうんだよ。あわよくば携帯で画像撮影とかもなっ! どうだ水無瀬よ、イケメンとはいえお前を彼女いない歴年齢だと言っていたな? 気なるんじゃあないかい?」

 

 いつになく尊大な態度でかたる池。

 周りの女子たちは水無瀬の彼女遍歴に驚きつつも、平田と並んでクラスの人気者の彼の行動を注意深く観察する。

 

「綾小路さん。そろそろ離れてくれないかしら。愛しの水無瀬君が下劣な行為に手を出そうとしているわよ? 止めなくていいのかしら?」

 

「ふふふ、私を甘く見ないで。水無瀬は三日前に初キスを済ませたぴゅあですけべな童貞だけど、やってはいけないことの線引きはできている」

 

「随分と仲がいいのね?」

 

「どやあ!」

 

「……皮肉よ。そして自分の口でドヤ顔を表現する人を私は初めて見たわ」

 

 ……後ろで何か語っているが、その声を聞いた女子たちは何時かのように嘆きの声を上げ始める。

 

「おい!? どういうことだ水無瀬! お前は俺たちの仲間だと思っていたのに!?」

「どういう事!? 清楓ちゃん!?」

「……ふふふ、この写真を見ればわかる」

「……うわあ、えっぐいキスしてる……」

「しかも相手は清楓ちゃんじゃない!? 付き合ってるの二人は?」

「きゃー!」

「……まるでドラマのワンシーンね」

「この日の水無瀬は取り分けてかっこよかった。まず事の発端として……」

 

「(明日のあいつの弁当にたくさんピーマン入れてやる……!)ほら、須藤君。行こ」

 

「……おう」

 

 そう言って教室から出ていく二人。

 

「……お前も大変だな」

 

「分ってくれるのかい?」

 

 感動した様子で語る水無瀬。

 その様子を見ながら須藤は聞いた。

 

「……なあ、俺の勘違いだったら悪いんだけどよ? 中三の中体連全国バスケで当たった○○ん所トコのポイントガードってお前だったりするか?」

 

 訝し気に問う須藤に対して思い出したかのように手を叩く水無瀬。

 

「……ああ! 君はあそこの子か! どおりで見たことがあると思ってたんだよ。よく覚えていたね? 半年以上前の話なのに」

 

 嬉しそうに返答を返す水無瀬に対して須藤は呆れたように語る。

 

「……お前自分がどれだけ注目されていたのか分ってんのか? ぽっと出の学校がいきなり県でぶっちぎりで優勝。そして一番重要であろうポイントガードの奴は今まで大会に出たことがないやつで、尚且つバスケ部ですらないんだぜ。皆あの試合ではお前のことを見てたぞ?」

 

「結局負けてしまったけどね。君のチームのほうが強かったさ」

 

「ほとんどお前のワンマンだっただろあれ……その割には的確にチームに指示を出してたからな。俺のお前が逆の立場だとして勝ててたかどうかは怪しいぞ……バスケ部には入るつもりはないのか?」

 

「今のところはないね。放課後は少しやることが多いから……」

 

「……それが山内の言ってたAクラスの女子か? この年で女と同棲なんてお前も中々だな?」

 

 そう言って笑いあう二人。

 楽しげに語った後水無瀬はこう提案した。

 

「よし、今度時間あるときは1on1でもしよっか? 改めて自己紹介するよ。僕は水無瀬柊。君は自己紹介の時に居なかっただろう? 下の名前を教えてくれないかい?」

 

「……須藤健だ。ああいう雰囲気は嫌いだからな……あといくらお前でも負けるつもりはないからな?」

 

 好戦的な表情で語る須藤

 

「ああ、僕も負けるつもりはないよ。連絡先を交換しようか。まだ交換してなかったよね?」

 

「おう、よろしくな。水無瀬」

 

「こちらこそ」

 

 水無瀬のチャットの友だち一覧に須藤の名前が追加された瞬間だった。

 

 

 

 ──そして時は経ち水泳の授業が始まる──

 

「うひゃあ、やっぱこの学校はすげぇなぁ! 街のプールより凄いんじゃね?」

 

 競泳パンツをはいた池が50Mプールを見るなりそんな声をあげた。 水も澄んでいて綺麗そうだし、プールも屋内で天気の影響も受けない。環境は抜群である。

 

「女子は? 女子はまだなのかっ!?」

 

「着替えに時間かかるからまだだろ」

 

「なあ、もし俺が血迷って女子更衣室に飛び込んだらどうなるかな?」

 

「女子に袋叩きにされた上に退学になって書類送検といったところかな? あと清楓ちゃんのこぶしは重いと思うよ? 一発で意識を持ってかれる」

 

 にこやかに語る水無瀬。

 

「……リアルな突っ込みやめてくれよ……てか怖お前の彼女!?」

 

 池は想像して怖くなったのか、ぶるぶると身を震わせた。

 

「変に水着とか意識してると皆に嫌われちゃうよ?」

 

「意識しない男が居るかよ! ……勃ったらどうしよう……」

 

 きっとその瞬間から卒業するその日まで、池は嫌われ続けることだろう。

 

 

 

「うわ~。凄い広さ、中学の時のプールなんかより全然大きい~」

 

 男子グループから遅れること数分、女子の声が耳に届いた。

 

「き、来たぞっ!?」

 

「長谷部がいない! ど、どういうことだ!? 博士っ!」

 

 授業を見学する博士が慌てた様子で見学用の建物の2階から、全貌を見渡している。 

 池たちが見逃した獲物を高台から、メガネの奥の小さな瞳で瞬時に見つけ出すはずだ。だが、その姿をどこにもとらえられない。 

 信じられないと言うように博士は首を左右に振る。

 

「う、後ろだ、博士」

 

「ンゴゴゴ!?」 

 

 池が指をさし叫び、事態が明らかになった。長谷部は博士と同じ見学組だったのだ。 

 

 続々と女子の面々が、見学組として2階に姿を現す。

 

「な、なんでだよ……これ、どういうことだよ!」

 

 池は信じられないものを見るかのように頭を抱えてその場に崩れた。

 その様子を見て苦笑いする水無瀬。

 

「そりゃそうだよ。あんなに露骨に賭け事なんかしてたらそうなるに決まってるさ」

 

「そうね、当たり前の結論だわ……見直したわよ。水無瀬君」 「みなせー!」

 

 いつの間にか隣にいた堀北とそれを追うように水無瀬の元へ駆け、飛び込む綾小路。

 

「おっとと、駄目じゃないか清楓ちゃん。プールサイドは走ったら危ないよ?」

 

「大丈夫、私の運動能力で「そういう話をしているんじゃないんだ」……はい。ごめんなさい」

 

「……まるで従順な犬と飼い主ね」

 

 呆れたように彼女を見る堀北。同性だからか、それとも鍛えられた協調性なのかは定かではないが、以前見た時より少しだけと仲良くなっているようにも思える。

 綾小路に抱き着かれながら、彼は堀北に話しかける。

 

「いつも済まないね、堀北さん。多分この子は君をお姉ちゃんみたいに思ってるんだと思うんだ? これからもよろしく頼む」

 

 知らず知らずかそうではないかは知らぬが、水無瀬の言葉は堀北の心を覆う固いガラスに対して傷を入れた。

 その様子を目ざとく感じ取る二人。

 

「(やはりキーワードは兄弟か……折り合いが悪いのかな? ままならないね……本当に)」

 

「……別にいいわ。でも突然暴走されると困るの。それだけは言って聞かせて置いてくれないかしら?」

 

「むぅ、堀北は私を水無瀬のペットだと勘違いしてる。私の愛は水無瀬には止められ「いいかい? 清楓ちゃん?」……はい……」

 

「ふふ、やっぱりペットじゃないの。バカみたいね? 本当に」

 

 そう言って笑う堀北。

 2人は目を丸くしてその様子を見つめる。

 

「あ、堀北が初めて笑った! 学校に来て初めて!」

 

「そうなのかい? それは良かった。笑うことはいい事だ。それだけで健康になれるし心を豊かに出来るからね」

「水無瀬、ジジくさい……」

「……」

 

「……そんなずっと一緒にいられてるように思えるのは心外だわ。まあ事実私の知人と言える人は彼女だけなのだけど」

 

 今までの彼女ではその事実は認めてはいなかったのだろう。

 しかし入学から1週間で綾小路は図らずとも堀北の心の壁を少し溶かしたのだ。

 

「そうか、じゃあ僕と友達にならないかい? 清楓ちゃんのお世話をしてくれている君なら大歓迎さ!」

 

 嬉しそうにそう語る水無瀬。先の兄弟関係のワードを出してくるあたり彼も少し意地が悪いのだろう。

 綾小路は嬉しいような怒っているような表情をしながらこちらを向いていた。

 対象的な2人の顔を見て堀北は間を置いてこう言った。

 

「……遠慮しておくわ。第一私はあなたの事をよく知らないし……ただ、知人としては別に構わないわ」

 

 そんなことを言う堀北に対し2人は顔を合わせて同時に語る。

 

「「……悩んでたね?」」

 

「……うるさいわよ」

 

「水無瀬、私の堀北。可愛いでしょ」

 

「ああ、とても愛らしいよ。ありがとね堀北さん」

「……マズい。水無瀬がその顔を向けた女子は尽く落とされたと坂柳に聞いた。堀北もいずれそうなる」

「……ふざけんな。なんてことを言ってくれたんだ彼女は」

「今のうちライバルは消しておくべきだろうかおくべきだろうか……」

「思ってもいないことを言うもんでもないだよ? 清楓ちゃん」

 

 まあ実際に落とされるのだが、それはまた別のお話である。

 微笑ましい目でこちらを見つめる2人。

 それに怒ったように堀北は言い放つ。

 

「それ以上その目で見るのならぶつわよ。私にはその技術がある。2日3日は痛みが引かないわ」

 

「まずい、堀北が怒った。逃げろー」

 

「あ、こら! 待ちなさい綾小路さん!」

 

「(2人ともとても愛らしいなぁ……)」

 

 やはりジジくさい水無瀬であった。

 

 

 

 少しして戻ってくる二人。プールサイドを少し走って来たようだ。プールサイドと言っても普通の25メートルではなく、50メートルの長さのため走ってきた堀北の息は少し切れている。

 それに対して息切れの一つもない綾小路、そんな彼女に堀北は問いかける。

 

「……はあ……綾小路さん。あなた何か運動とかしていたのかしら?」

 

「昔ちょっと色々やってたくらい。水無瀬のほうがすごい」

 

「……その色々というのが気になるのだけど、確かに彼の体はすごいわね」

「堀北のエッチ」

「……一体あなたはその小さな脳みそで何を想像したのかしら? 答えによっては覚悟しておくことね?」

「あぅ……ごめんなさい」

「……全く、あまり揶揄わないでほしいものね」

 

 何の気なしに話した綾小路だったが、それを隣で聞いていた水無瀬は驚いていた。

 何せ今までの彼女であれば誤魔化していたであろうはずの内容だったからである。

 堀北を信用していったのか、それとも彼女にできた心の余裕からなのか、それはわからなかったが確実に彼女が精神的に成長していた証であるといえよう。

 

「(ヤバい、泣きそうかも……やっぱりここにきて正解だったね清楓ちゃん……!)そうかい? 割と普通だよ」

 

「……これのどこか普通か教えてほしいものね」

 

 水無瀬の体は、男性女性含めた理想の体と言えるだろう。

 八つに割れた腹筋、筋の浮き出た二の腕や、高低差のある胸筋等。アスリート顔負けの体系である。

 後ろから彼に抱き着き、形の良い腹筋をさわさわと触る綾小路はこう語る。

 

「説明しよう。水無瀬の身長は182㎝。体重は70㎏と少し重いけど、その実態は体脂肪率訳5%の筋肉でできている。握力は80キロくらいで、ちゃんとしたところで走れば100メートル10秒前半も狙える。さすが私の水無瀬。それに……ふふふ、これは言わないでおこう」

 

 どこかで聞いたことがあるフレーズで語りだす綾小路

 だんだんと体を触る手つきがやらしくなっていく彼女に気づかず、水無瀬は聞く。

 

「一体何を聞こうとしたんだい?」

 

 小声でボソッと答える綾小路

 

「……それは水無瀬のモノが「ああもういいよ、もう。何も話さないでくれ……全く」それにしても良い体……ちょっと興奮してきた」

 

 段々と腹筋をさする手がそれぞれ上下に移動し始める。

 

「おいやめろ」

 

「あう」

 

 そう言って軽くデコピンをする水無瀬。

 

「……公衆の面前でいちゃつかないでほしいわね」

 

「そうだぞ水無瀬!」

 

 池がヤジを飛ばしクラスで笑いが起こる。

 こんな事を毎日しておいて疎まれていないのは彼ら二人の人徳が為す故だった。

 そこに櫛田が話しかけて来る。

 

「堀北さんは泳ぎは得意なの?」

 

「櫛田、居たんだ」

 

「あはは、三人とも仲良さそうだったから入りずらくて」

 

「櫛田のような天使でもそんなこと思う……意外」

 

「そんな、天使だなんて。そんなことないよ綾小路さん」

 

「堀北さんは泳ぎは得意なの?」

 

 櫛田からの質問に少しだけ怪訝そうな表情を見せたが、堀北は静かに答える。

 

「得意でも不得意でもないわね」

 

「私は中学の時、水泳が苦手だったんだ。でも一生懸命練習して泳げるようになったの」

 

「そう」

 

 先ほどとは打って変わって興味なさげに答え堀北は少し櫛田から距離を取った。

 その態度に一瞬違和感を感じた二人だが、いつものこと。特に気になりはしなかった。

 

 

 

「よーし、お前ら集合しろ」

 

 いかにも体育会系といった体付きの男性教師が全員に集合をかけた。

 

「見学者は……16人か。随分多いようだが、まぁいいだろう」

 

 明らかにさぼりである生徒もいたが、彼は咎めることはなかった。

 

「よし。早速だが、準備体操を終えたら全員泳いでもらうぞ。お前らの実力が見たい」

 

「あの先生、俺あんまり泳げないんですけど……」

 

 一人の男子が申し訳なさそうにそう申し出た。

 

「俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやるから大丈夫だ」

 

「別に無理して泳げるようにならなくてもいいですよ。海なんていかないし」

 

「そうはいかん。いまは構わないが()()()()()()()()()()()()()()()()()()ぞ? 必ず、だ」

 

 彼はそう意味深に締めくくると、準備体操に入るよう全員へ促した。

 

 

 

「水無瀬」

 

「ああ、やっぱりあるだろうね。泳ぎに関する試験。夏の時期に特別試験を行うらしい。内容は毎年バラバラ。ただ泳ぎが大事になってくるのはあの口ぶりからして確実だろう。僕らには必要ないけど。学んでおいて損はない」

 

 

 

 準備体操を終えた後は、皆50メートルほど流して泳いだ。

 

「とりあえず殆どの者が泳げるようだな。では早速だがこれから競争をする。男女別50メートル自由形だ」

 

 彼のその言葉にクラス一同はざわつき始めた。

 

「1位になった生徒には、俺から特別ボーナスで5000ポイント支給しよう。ただし一番遅かった生徒は補習になるぞ。だから手を抜かず、覚悟して取り組むように」 

 

 その言葉にクラスでは泳ぎの得意な生徒と苦手な生徒ではっきりと違った反応が出た。

 

「悪くない条件だ、僕ら二人でサクッと取って今日はご馳走にしよう」

 

「やった! 頑張る……一位になったら褒めてほしい」

 

「ふふふ。言われなくても」

 

 

 

 そう言って、まず初めに女子たちの競争が始まった。

 

「櫛田ちゃん櫛田ちゃん櫛田ちゃん櫛田ちゃん。はあはあはあはあ」

 

 池はすっかり櫛田にぞっこんだ。

 それを見た水無瀬はやんわりとなだめる

 

「いったん落ち着けなよ池君。興奮した状態で水に入ると心臓に良くない」

 

 変な切り口から切り込む彼に池はすっかり落ち着き、呆れたように返答する。

 

「……お前イケメンで頭よさそうなのに変わりもんだよな。だから彼女今までいないんじゃねえの?」

 

「え、なんで僕が呆れられるん? 謎なんだけど???」

 

 そう言って軽くキレる水無瀬、口調がブれているぞ。

 その様子を池は面白そうに見てこう続ける。

 

「なんかお前って最初綾小路とイチャついてたしいけ好かない感じかと思ってたけど、やっぱ面白くていいやつなんだな! 巨乳好きだしお前とは親友になれそうだ!」

 

 そう言って肩を組んでくる池。水無瀬は嫌がることなく笑っていたが一つ聞き流せないことがあった

 

「そりゃどーも……って何それ? どこ情報?」

 

「え? 綾小路だけど」

 

「(いやだっる)……それは間違いだよ。僕は愛した女性に胸の大きさは関係ないと思ってる」

 

「隠さなくていいんだよ! お前も恥ずかしがり屋だなあ!」

 

「……」

 

 そんなやり取りがあったとかなかったとか。

 

 

 

 そして時は流れ第一レースがスタートする。

 

「おお! やるなあ堀北!」

 

 タイムは28秒とかなり早いほうであった。見た目と雰囲気から文武両道な感じはしていたがやはり優秀らしい。

 続いて行われるのは第二レース、こちらには池のお目当てである櫛田と、綾小路がいた。

 男子たち皆に笑顔で手を振る櫛田と、水無瀬に凛々しい表情でサムズアップ綾小路。実に対照的だった。

 そしてスタートした第二レース。この試合は盛り上がりに盛り上がりを見せた。

 綾小路と水泳部の女子のツートップ争い。最終的には指先一つの差で綾小路が勝ったがそれはそれは盛り上がった。

 タイムも25秒90と26秒で断トツであった。

 惜しいレースだったのだろう。水泳部の女子は悔しそうに苦笑いを浮かべていた

 

「やったあ! みなせー!」

 

 プールから上がって一目散に水無瀬の元へ駆けよる綾小路。

 教師もそれをとがめることなく皆微笑ましい目で見ていた。空気の読めるいい男である。

 

「おっとっと、頑張ったね。清楓ちゃん。流石だ」

 

 それを受け止め、優しく頭をなでながら水無瀬は語る。

 

「うん! ありがとう!」

 

 少しの間嬉しそうに彼の胸板に顔を付ける綾小路であったが、一通りやって満足したのかふと彼から離れ一人の生徒の元へ向かう。

 その生徒は二レース目でトップを争った小野寺だった。

 

「小野寺」

 

「綾小路さん……?」

 

 ほかの生徒と話している最中に来た綾小路に訝し気に返事をする小野寺

 そんな彼女に綾小路は右手を差し出し、力強く言った。

 

「いい試合だった。次もまたやろう」

 

「……! うん! 次は負けないからね!」

 

 そう言って握手をする二人。

 

「うおおおおおおお! かっけええええ!」

 

 そう語るのはさっきまで櫛田の胸を見て興奮していた池。

 ほかの男子たちも、先ほどとは別の意味で興奮していた。

 

「……素晴らしい! どうだ綾小路! 水泳部に入る予定はないか? お前なら皆歓迎するだろう!」

 

 そう言って語り掛けるのはその様子を見ていた教師、彼もそのやり取りに感動していた者の一人である。

 

「……はあ、全く皆して子供みたいね。そう思わない? 水無瀬君」

 

 そう語りかける堀北だったが、すぐ後に彼の顔を見て驚愕することになる。

 

「……? 水無瀬君? ……どうして泣いているのかしら」

 

「……ああ、すまない……成長したんだね。清楓ちゃん」

 

 その様子に呆れたように堀北は言い捨てる。

 

「彼らは子供みたいだけど、あなたも大概親バカみたいね」

 

「……ああ、そうかもしれない。涙が止まらないよ」

 

 今回に関しては素直に認める水無瀬であった。

 

 

 

 時は飛ばして第2レース目。

 第一レースをぶっちぎりで突破した須藤が同じように水泳部に勧誘されるが、それはまた別のお話。

 

「ねえねえ、どっちが勝つと思う!?」

「やっぱり水無瀬君じゃない!? すごい体してるよ」

「私は平田君を応援するわ!」

「水無瀬が優勝するに私は今日の晩御飯をかけてる。水無瀬が負けるはずがない」

「流石彼女さんは覚悟が違うわね!」

「……私は水無瀬の彼女ではない。大事な人で幼馴染」

「またまた照れちゃって、かわいー綾小路さん」

 

 

 

「……俺やっぱお前のこと嫌いだわ」

 

「おいおい、酷いじゃないか」

 

 そんなことを言い合う池と水無瀬。すっかり打ち解けているようだ。

 

「でも俺はお前を応援するぜ! がんばれよ水無瀬!」

 

「ああ、できる限りのことはするつもりさ」

 

 平田と違い、イケメンや運動神経を鼻にかけない水無瀬は池にとって相当好感が持てるのだろう。

 まあ最も平田も鼻になどかけてはいないのだが。

 

「おい水無瀬、今回は前哨戦だ。バスケで勝負する前に叩きのめしてやるから必ず決勝上がって来いよ?」

 

「ふふふ、いいね須藤君。決勝で会おうじゃないか」

 

 そう言って拳を交える二人。やはり先ほどの流れによって全員テンションがかなり上がっていた。

 

 

 

 先生の笛が鳴り、きれいなフォームで飛び込む二人。

 最初は二人が水から顔を出すたびに黄色い感性と野太い声援が聞こえてきたが、半分の25mを過ぎたあたりで、その声は唐突に聞こえなくなった。

 

「……第一位、水無瀬柊……タイムは22秒99だ……」

 

()()()()()()

 

「やべえええええええ! かっけえええええ!!??!」

「キャー!!!」

 

 これまた池を筆頭に大喝采が起こる

 

「よーし! どうだい? 応援には答えられたかな? 池君」

 

 そう言って笑顔で男子の輪に入る水無瀬。さっきから泣いたり笑ったりと忙しい男である。

 

「すげえよお前! マジですげえよ!」

 

 無くなった語彙でひたすら興奮をあらわす池。

 ほかの生徒も彼に駆け寄って矢継ぎ早に話しかけていた。

 

「完敗だよ柊君、おめでとう」

 

 そう言って近づいてきたのは女子の話題に出ていた平田だった。

 

「ああ、ありがとう洋介」

 

 朗らかに水無瀬は返す。

 そして彼の泳ぎに当てられたのは彼も例外ではなかった。

 

「素晴らしい泳ぎだ。称賛に値するよラビングボーイ」

 

「おお。ありがとう高円寺君」

 

 普段は全くコミュニケーションを取らない高円寺だった。

 彼は拍手ををしながらこう語る。

 

「私も勝負事は好きではなかったが、存外私も子供のようだ、決勝で会おう。ラビングボーイ」

 

 そう言って周りの驚きを後ろに第三レースを泳ぎ切った高円寺。

 彼の想像以上のアグレッシブでどこか繊細な泳ぎに、タイムを切った先生はこれまた動揺を隠せない。

 

「22秒90……高校一年生でこれだったら日本記録取れるぞ……やはり恐ろしい学校だ」

 

 ストップウォッチの画面を見ながら語る教師。

 

「燃えてきたぜ……」

 

 二人のタイムを聞いた須藤はこぶしを握ってこう語った。

 

 

 

 時は流れ決勝。授業の一部とは思えないような緊迫した空気の中、決勝に進んだ生徒は用意をする。

 

「水無瀬」

 

「ん?」

 

「頑張れ」

 

 そう言って彼の頬に軽くキスをした綾小路。

 何度目かわからない歓声が響いた。

 

「……こりゃ何が何でも優勝するしかなくなったね。ありがとう清楓ちゃん」

 

「ん」

 

 そう言ってサムズアップをする綾小路

 

「これより男子決勝を行う」

 

 そう言って笛を構える教師。その集中した様子は大会の決勝を思わせる。

 

 笛が鳴ったと途端に弾丸のように飛び出した水無瀬、高円寺、須藤の3人

 平田を含む二人も少し遅れて飛び出したが、やはり首位はこの3人の痛烈な争いだった。

 固唾をのんでその様子を見守る全員。どこからか聞きつけたかは知らないが、他の作業中だった体育教師も見に来ていた。

 

 最終的に須藤が少し遅れる形となり、ほぼ同時に水無瀬と高円寺が向こうの壁にタッチした。

 

「どっちだ!? どっちが勝った!」

 

 池が大きな声で問いかける

 

「いや、結果は見えている。彼が本気を出したんだから」

 

「どういうことだよ綾小路!?」

 

「……! 結果は……」

 

 

 

「第一位。22秒40! 水無瀬柊!! 第二位高円寺……」

 

 

 

「うおおおおおおおお!!! 水無瀬が勝ったあああああ!!!!」

 

 第二位の結果を待たずして歓声と拍手が響き渡る。

 皆が駆け寄る中彼に語りかけたのは第二位の高円寺だった。

 

「嗚呼、まさかこの私が本気を出し、それでも尚勝てぬ相手がいるとはね。完敗だよラビングボーイ。君の勝ちだ」

 

「……勝負に運はつきものだ、今回は僕がそれに恵まれただけだよ」

 

「謙遜はしなくてもいいさ。先程の状況では私は間違いなく君に勝つことはできなかった。誇ると良い」

 

 敗北を喫したのにもかかわらずどこか上から、そしてどこか嬉しそうに高円寺は続ける。

 

「……この学校に私と同等以上能力を持った人間がいるとはね。いいだろう。俄然面白くなってきた。次は負けるつもりはない。私は必ず君に追いついて見せようじゃあないか」

 

「いいね、その時は受けて立とう。その時は僕ももっと自分を磨いて負けないようにするから簡単に勝てるとは思わないほうがいいよ?」

 

 どこか面白そうに語る水無瀬。

 そんな彼の言葉を聞いて、彼の肩に手を置いてすれ違う高円寺。その姿は、傍から見たらとても楽しそうに見えたという。

 

「水無瀬。お疲れ様」

 

「……ほんとにあなた達が何者なのか気になるところだわ。あなたの記録、一昔前の日本記録に匹敵する早さよ」

 

 彼のそばに駆け寄る綾小路と堀北。

 苦笑いして水無瀬は返事をする。

 

「あはは、ちょっと柄にもなく張り切りすぎちゃったかな? だけどスポーツっていうのはやはりいいものだね。人類が生み出した素晴らしい文化だ。よし、清楓ちゃん。着替えたら先に寮に戻っててくれないか? 少ししたら追いつくよ。今日はご馳走だ」

 

「わーい。この前焼肉食べたから海鮮がいいかも」

「じゃあここのスーパーに行こう。確か海鮮のコーナーがあってそこにでっかいカニがあったはずだ。今日はそれでしゃぶしゃぶでもやろうじゃないか」

「今日は阪柳も予定がないって言ってた。だから三人で行こう」

 

「……普通に夜一緒食事しているのね……あなた達」

 

 

 

 ────そんな会話があったりとかなかったりとか────

 

 

 

 side:?? 

 

「それでは条件が達成され次第契約を遂行しましょう。この紙の通りでよろしいですね?」

 

「……ああ」

 

 目の前の生徒が提示した契約書を見る。

 恐ろしい生徒だ。この学校のシステムをほとんどすべてたったの一週間で把握してしまった。やはり歴代最高生徒と名高いだけあるだろう。

 

「改めて説明させていただきます。私から示す要求は二つ。現在残っている400のすべてのクラスポイントを学校側に返却、代わりにその分だけ入るポイント、計毎月160万ポイントを私の元へと譲渡する。そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()こと。そしてあなたが提示した要求は、そのポイントを使って()()()()()()()()()()()()()()()()()。ないしAクラスへ行くことの()()()()を負う事。そしてこの契約内容は、何者にも漏らしてはいけない。破った場合のペナルティは、破った側の提示する要求すべてを棄却すること。この契約は私、水無瀬柊またはあなたのどちらかがこの学校に在籍している限り永久とする。これでいいですね? ──茶柱先生──」

 

「……ああ」

 

「分りました。それにしてもあなたも罪な人だ。教師という立場を利用して生徒に脅しをかけるだなんて。そしてその上こんなめちゃくちゃな契約、普通通ってはいけないはずなのに」

 

 そこが知れない昏い目でこちらを見つめる彼、その心の中を読み解くことは、私にはできなかった。

 

「話はもう終わったか? では失礼する」

 

「ええ、良い取引でした。さようなら先生」

 

「…」

 

 ────私が取引してしまった人間は、果たして天使か悪魔だったのかは。その時は誰も、誰も分らなかった。ただ一つだけ言えることは。彼、水無瀬柊は最も危険な生徒であるという事実のみ。たったのそれだけだった────

 

 




結構ザワザワしてて詰めた会話は行間を開けずに表現しました。違和感があれば直します!

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  • 綾小路や坂柳とのイチャイチャ
  • 上記以外のヒロインの追加
  • 恋愛要素以外の日常パート
  • 本編を早く進めること
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