そしてTS綾小路ちゃんの名前が出てきます!イメージと違っても許してね。
side:綾小路
「皆、少し話を聞いてもらっていいかな?」
私が彼に何と言って話しかけるかを考えていた時、一人の男子生徒が呼びかけた。いかにも好青年といった雰囲気の少年だった。
「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから自発的に自己紹介を行って、一日でも早くみんなが友達になれたらいいなと思うんだ。まだ入学式まで時間もあるし、どうかな?」
ナイス少年! これで彼に成長した私の完璧な自己紹介を見せつけられる!
そして皆に私と水無瀬の関係性を周知させることができる。彼は間違いなくモテる。悪い虫が寄ってきて万が一のことがあってはならない。
逆に考えてほしい。モテない要素がどこにあるというのだ? 超イケメン。実力もあの白い部屋の歴代最高傑作と言われ、そして何より彼の愛第一主義は周りの空気を暖かいものとするのだ。顔もいい頭もいい運動もできる性格もいい四点セット。モテモテコンボはそれぞれ二乗していくのだ。その数して16倍である。そもそもとしてだいたい彼は……
──自己紹介を提案した彼、平田洋介の手本になる自己紹介を全く耳に入れず。隣の堀北達が教室を去っていること身も気がついていない綾小路であった──
綾小路の思考が再び暴走する中、自己紹介の番は水無瀬へと回ってきた。
「じゃあ次は先生に質問していた君! お願いできるかな?」
平田がにこやかに話しかける。
水無瀬は女子からのキラキラした目と男子からの嫉妬の目を浴びる中、手慣れた手つきで自己紹介を行う。
「ああ、僕の名前は
そう彼が問うとクラスの女子を筆頭に次々と手を上げ、騒ぎ始めた。
「質問質問! 高校では何の部活やるの~?」「どんな本読むの?」「愛するってロマンチック!」
等々たくさんの質問が寄せられる中、彼は苦笑いして答える。
「ごめんごめん、一つ一つ答えてくよ。現時点で高校では特に所属する予定はないよ。勉強に余裕があったらってとこかな? 中学の時も無所属でよく助っ人でいろんな部活に交じって大会に出たりしていたからね。読む本は割といろんなジャンルを読むかな。文学全般ははもちろん哲学や歴史、最近だとライトノベルも読んだりするよ。そして愛に関しては僕の生きがいでもあるからね。人を愛し、人に愛される人間になりたいんだ僕は」
「なんか大人って感じ!」
「イケメンが言うと似合う~」
「っけ! 臭いこと言いいやがt……うわ! 誰だよお前! 怖えよこっち見んな!」
「……」
「こんな感じかな? 時間を多くとって悪かったね。次行って貰って結構だよ、洋介君」
ナチュラルに名前で呼んだ水無瀬に数人の女子がざわめきを上げる中、十数人を経て順番は綾小路の番へと回る。
「じゃあ次、君。お願いできるかな?」
無言で立ち上がる綾小路。
「……私の名前は綾小路
「(!!?!??!……勘弁してくれ綾小路さん)」
──この日一番の爆弾が投下された瞬間だった──
数名を除いた自己紹介を終え、数時間が経過した。
特大の爆弾を落とした後、綾小路は話すことはない。とでも言うかの如く教室で寝てしまったため、水無瀬は阿鼻地獄と化した教室にてクラスメイトの対応を一人で行わなくてはいけなかった、それでも「ただの幼馴染」という結論まで持っていった水無瀬と、クラスメイトを落ち着かせた平田の手腕は称えられるべきものであろう。
その様子を聞いていた綾小路は「久しぶりに本気で焦っていた水無瀬を見れて嬉しい」と後に語っている。
その後は数人を除くクラス全員とアドレスを交換し、グループに所属した水無瀬。誰かさんとは違って順調に交友関係を広めていた。
そして入学式は特に何もなく予定通り行われ、それぞれが解散となる。
「水無瀬君! これからみんなでカラオケに行くつもりなんだけど、一緒に行かない?」
茶髪の明るい雰囲気を持つ少女、櫛田桔梗は水無瀬に話しかける。
「(学校の全員と仲良くなりたいと言っていた子か、美しい……素晴らしいじゃないか! ……どのような心持ちかは置いておいてね。うまく隠せているだろうが、まあ腹の内は真っ黒だろうな)ん、あーごめん櫛田さん。中学校の時の同級生と少し会う約束をしていたんだ。今度誘ってくれたら必ず行くと約束するよ。誘ってくれてありがとう」
「女の子じゃないだろうな! 水無瀬!」
そう言って水無瀬に疑いの目を向ける生徒、池寛治である。
その質問にに彼は端末をいじりながら苦笑いで答える。
「あはは、別に君が思ってるような関係じゃないよ」
「その言い方は絶対女の子だ! このイケメンが! 羨ましいー!」
「(意外と鋭いな……)どうだろうね? じゃあお先に失礼するよ」
血の涙を流す池を尻目に教室を後にした。──
──後ろに一人の気配を感じながら彼が向かう先は寮の部屋。放課後かなり話し込んでいただけあって人通りは少なくなっている。
「そんな付いてくるくらいなら話しかけてきてくれればよいものを、僕のことが嫌いになってしまったのかな? 綾小路さん」
そういうと背中に小さく衝撃が走る。すっかりと大きくなった彼の背中に抱き着くのは綾小路。すすり泣く声もセットで聞こえる。
「…………」
「おいおい、四年ぶりに合って最初にすることがこれかい? ほら、こっち向いて顔を上げてくれないか? 卸したての制服が濡れてしまうじゃないか」
そういうと、抱き着いていた腕が離れる。振り返って近くではっきり見えた彼女の顔は、かつての面影が残っている。しかし確かに成長していた。
整えてきたであろう眉毛を歪め、大きな瞳からは涙が零れている。前髪もぐちゃぐちゃになっていた。
「久しぶり、綾小路さん」
「……うん」
────夕陽を背に抱き合う二人。その光景はとても幻想的で、まるで映画の一幕のようだった。────
──綾小路が落ち着いた後、夕日に背を向けてベンチに腰掛け語り合う彼ら。失った二人の時間を取り戻しているようにも見える彼らだったが、何か忘れてはいないだろうか? ──
[30分後くらいに迎えに行くから、もうちょっと部屋で待ってて]
[わかりました。夜は混むと思うのであまり遅れずに来てくださいね]──
──[水無瀬君? 先の約束からもう一時間経っていますが、今どこにいるのですか? ]
[ふふふ……自分から約束しておいて既読もなしですか? いい度胸ですね。今父に連絡して鍵を開けてもらいました。あなたの部屋に居ます、覚悟しておいてくださいね? ]
「……やらかした」
────その翌日、夕陽をバックにアスリート顔負けの速度で寮までの帰路を走る男女二人組のうわさが立ったとか立たないとか。────
名前どうするかのアンケートで予想が反して割と拮抗したから、やっぱり清隆のどちらかの要素を残したいと思ってTS綾小路ちゃんは「綾小路清楓(さやか)」ちゃんになりました。
響きと見た目で選びましたが、結構気に入っています。
感想と評価のほどよろしくお願いいたします!
皆がこの小説に求める要素
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 綾小路や坂柳とのイチャイチャ
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 上記以外のヒロインの追加
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 恋愛要素以外の日常パート
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 本編を早く進めること
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 その他(感想で書いて頂けると助かります)