それと深夜テンションで書いたせいだと思うけど第0話が酷かったからいったん消しました。
※現在
「……悪かったよ、確かに少し意地を張ってしまった、いい加減拗ねないでくれ。新たなる門出の日に友達がそれだと気まずくてしょうがないじゃないか」
少し困った様子で水無瀬は坂柳に話しかける。
車内でのやり取りから数分が経過した後だった。
「いいえ、別に拗ねてはいないのでお気になさらず」
「それを人は拗ねているというのだよ。……柄にもなく僕も少し浮かれているようだ。何せこれから人生で一度しかない高校生活がまた始まるんだからね」
「……はあ。わかりました。今回は許して差し上げましょう。……それにしても今日は意外なことが多いように思えます」
「例えば?」
「あなたですよ水無瀬君。私はあなたとは長い付き合いであることを自覚していますがあなたは先ほどのように物事の始まりを気にする人とは思えませんでした。形から入るような人種とは真逆だと思っていましたが……」
「まあ気にして損はないからね……よく中学校の先生も言っていたじゃないか。『はじめと終わりよければすべてよし』って。誰だって出鼻を挫かれる事は嫌だろう? 僕もそのうちの一人なだけだよ」
「ふふ、そうですね……私もなるべくならこれから楽しい学生生活を送りたいものです。中学校では競争相手はあなたしかいませんでしたから」
上機嫌に坂柳は語る。
「やっぱり楽しそうじゃないか。まあそうだね……多分中学の時よりかは楽しめると思うよ。何せこれから向かう所は日本で有数の高校だ」
「あら? 楽しそうに見えますか? ……それだけではありませんよ。想い人の知らない側面を知れて私は嬉しく思います」
からかうような視線を向け坂柳は語る。
「……やめてくれ。さっきとは別の意味で気まずいよ。やっぱりまだ根に持っているじゃないか……あとこれから入学した後はそのような言動はなるべく控えてくれ。君は知らないと思うが周りに勘繰られて大変だったんだから」
当時を振り返り苦笑いしながら水無瀬は呟く。
「あら、その話は先ほど終わったじゃないですか? しつこい男は嫌われますよ? それにあれはわざとです。クラスメイト達の対応に暮れるあなたは見ていて面白かったですよ。彼らのような年頃の子供たちは美男美女に弱いですから。あなたは女性慣れしてるにもかかわらずかなり対応に困っていましたね」
当時の様子を思い出したのか楽しげに語る。
「勘弁してくれよ。それに僕はそんなに女性慣れもしていない……前を含めて恋愛関係になったのは片手の指に入るくらいだ」
どこか遠い目をしている水無瀬。
続けて彼は話す。
「そして自分で言うのか……それに君だって年は変わらないだろうに」
「それを言うならあなたもでは? 水無瀬君。あと容姿も生まれ持った才能であることに変わりはありません」
微笑みながら坂柳は語る。その容姿も相まって幻想的な雰囲気を醸し出していた。
それに劣らない容貌を持つ水無瀬だがその発言に対しては苦笑いをしていた。
「嫌な発言だね全く。……僕はまた特別さ、前と足したら君のお父さんとも対して変わりない」
「……にわかには信じられませんがね、その話は」
「まあ別に信じなくてもいいけどね」
──そんな会話を続けること十数分。──
「ん、ふうー……立ち続けるのも体が凝って大変だ」
バスから降りると伸びをし一人愚痴る水無瀬
目的地は高度育成高等学校前
──高度育成高等学校──
「爺臭いですよ水無瀬君。そんなに嫌ならわざわざ譲らずに、私の隣に座ればよかったものを」
「何を言っているんだ。優先席には座るべき人がいるだろう? 僕のような人間は座るべきではないよ。体調が悪い方や、お年寄り、妊婦さん等座るべき人に譲るべきだ。そのような心遣いは尊い愛だよ」
口角を上げ水無瀬は語る。
「また
「まあ僕が好き勝手やっていることだしね、他人に強制はしないさ。押しつけがましい愛ほど鬱陶しいものはない」
「よく言えますね。あなたは心の底では赤の他人への慈しみなど感じていないはずなのに、何がそこまであなたを動かしているのでしょうか?」
「……全く人を良く見る子だ君は」
重くなった空気を払しょくするかのように笑顔で彼女の頭を撫でまわす水無瀬。
撫でられた彼女は抵抗せずとも抗議するような目で彼を見つめる。
「……子供扱いはやめてください。私はもうそんな年じゃありません」
「昔から好きだっただろう? 君は僕から見たら慈しみ、護るべき大事な子供だよ。それに一つアドバイスだ」
なでる手を止め、その手で彼女の頬を優しくなでる水無瀬。
「子供扱いをやめろって言っているうちはまだ子供のままだよ。覚えておくといい」
「……」
────彼が彼女に向ける愛は、誰から見ても確かに本当に見えただろう────
──なおこれら全て学校で行われているが……それを指摘するのは野暮だろうか? ──
先ほどの場面とは打って変わって校舎内。ひときしりいちゃついた後周りから向けられる暖かい目とざわついた声から逃げるように速足で移動した彼らはクラス分けの掲示板前へと来ていた。
「まだそんなに人が来ていませんね……」
「……まあ急いできたからね」「はあ、全く一体誰のせいだと思ってるんでしょうか、明日には噂になっていますよ」「……いや、マジでごめん」
「私はAクラスで、水無瀬君はDクラスですね」
「ふむ、別クラスか、まあ確率は四分の一だからね。しかし君のお父さんなら僕と君は同じクラスにするだろうと予想していたが」
腕を組み首をかしげる水無瀬。
不思議そうにしている彼とは対照に坂柳は嬉しそうだ。
先にAクラスへと向かう二人
「まあ私としては嬉しい限りです。この学校で行われるであろう何らかの試験であなたと戦えるのですから」
「ほんとに君はぶれないね。というかその理事長情報は大分ズルいんじゃないかい? 僕は何も知らないというのに」
苦笑いで話す水無瀬。
それに対して不敵な笑みを浮かべる坂柳は語る。
「私は勝つためなら手段を選ぶつもりはございません。それにこのくらいのハンデも与えてくれないのでしょうか? 私の想い人は随分と狭量ですね」
「わかった、わかったよ。君が僕に挑んでくるなら僕は君のその愛を真正面から受け止めよう」
にこやかに人を惹きつける笑みで水無瀬は語る。
「……その言葉の節々に愛を入れ込む癖、最初は抑えた方がいいですよ。あなたのクラスメイトは変な勘違いを起こします。特に女子は。……無駄に不幸な人が増えるだけですよ」
彼に告白しては見事に撃沈、教室で泣いていた昔の同級生を思い出し遠い目をする坂柳。
「……そうだね、気を付けるよ」
──そうこうしているうちにAクラスの教室についた二人──
「放課後あなたの部屋へと行きます。部屋の番号を後でチャットに送っておいてください」
「ん、了解。一度部屋に戻ったら食品を買い出しに行くつもりだけど一緒に行くかい?」
「ええ、ここに来てからもあなたの料理が食べられるのは嬉しい誤算でした。あなた抜きで父が料理できるか心配ですが……」
「……まあ大丈夫だろう、いざとなったら料理本を送るし、連絡は取れるからね」
そう言って別れる二人、その後水無瀬はDクラスの教室へと来た。
彼は指定された席に座り訝しげに考える。
「(外から見たAクラスとは随分と違うみたいだね。それに日本有数の進学校の割には随分と……)」
クラスの様子を見て思索にふける彼だったが、後方からこちらを気にするような視線には気づいていた。
それを確認し水無瀬は表情には出さないものの内心は喜色にあふれていた
「(嗚呼、やはり君は素晴らしい、素晴らしいよ綾小路さん!! こんなに心躍ったのはいったい何十年ぶりだろうか? 少なくとも二度目の生を受けてからは初めてだ! あの白い部屋に生まれて来たことを喜んだのは初めてだよ! 4年だ、4年間我慢したんだ。僕がいない間に何を学び、どのように成長したんだい? 早く話したいよ綾小路さん!)」
とか内心思っている割に自分から話しかけに行かない水無瀬、面倒な男である。
だが心が荒れているのは彼だけではなかった。
「(丸4年と23日8時間……これは私が水無瀬が別れてから経った時間。昔と比べて約29㎝も身長が伸びてて体つきもがっしりしているし、顔つきも前はかわいい感じだったけど今は凛々しくなっている……訳4年の月日が流れてあなたもだいぶ変わった。
けどあの匂いと優しそうな表情、そして私の本能が間違いないと言っている! やっと会えた! でもどうして話しかけに来ない? ……そうだ、水無瀬は『受け身ではいけない』と言っていた!
つまり私から話しかけに行かないといけないという事、でもどうしよう。彼に言われてから私は他者と積極的にコミュニケーションをするように心がけた。しかしまだ私には実力が足りない……どうしよう、なんでホワイトルームではこういう時の対処法を教えてはくれなかったの!?)」
ホワイトルーム関係者が聞いたらそんな状況あるわけないだろ。とでも言いそうな理不尽なことを思う綾小路。
こっちも大概重い女だった。
そんな様子のおかしい綾小路に対して隣人の黒髪の少女、堀北鈴音は動揺を隠さずに問う。
「……先ほどから随分と血走った眼で彼を見つめているけど大丈夫かしら? 綾小路さん?
……はっきり言って申し訳ないけれど隣で知人がそんな目をしていたら気持ちが悪いわ。
そんなに気になるなら話しかけにでも行けばいいじゃない? 私の隣でバスで不適切な音量でおばあさんに席を譲るぐらいの図太さがあるなら難しいことではないはずよ」
こちらも一悶着あったようだ。
「(水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬……)ん? どうかした? 堀北」
「……何でもないわ」
たった今気が付いたようなそぶりをみせる綾小路に腹を立てた堀北だったが、話が通じないことが分かると冷たい目を彼女に向けながら今後話しかけることはなかった。
──そして時は流れ全員が席に着いて数分、教師と思われるスーツを着た女性が教室に入ってきた──
水無瀬も綾小路も脳内が荒ぶっている中、彼女は告げる。
「新入生諸君、私がDクラス担任の茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。まず初めに言っておくが、この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの三年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。今から一時間後に入学式があるがその前に、この学校に設けられている特殊ルールについて書かれた資料を配る。以前入学案内と合わせて配布してあるがな」
そういって前の席から全員に資料が回ってくる。この頃には流石に二人とも落ち着いていた。
side:水無瀬
配られた資料を確認する、まあ合格発表とともに送られてきた資料で内容は一字一句すべて把握済みではあるが一応内容を確認する……うん特に変わりはないようだね。
この学校には全国に存在する高等学校とは異なる特殊な部分がある。そのうちの一つはこの高校の生徒全員に敷地内での学校生活を義務付けるものである。
まあこれだけならそこまで珍しいものでもない。しかし決定的に異なる点として、在学中は特例を除き敷地外部から一切出ることは出来ない。外部との連絡を含む接触を完全に遮断しているのだ。たとえ親兄弟であってもそこに例外はない。
が、しかしその反面生徒たちが苦労しないような設備も充実している。60万平米おもの広大な土地の中に数多くの施設が存在する。カラオケ、映画館、カフェ、大型ショッピングモール等だ。正直下手な県庁所在地よりも都会であることは否めないだろう。
東京湾を埋め立てた土地で、そこに小さな町を箱庭のように作って何をしているかと思えば、毎年たったの160人の高校生を入学させているときた。昔この学校の存在を坂柳理事長から直接聞いたときは自分の精神年齢も忘れてワクワクしてしまった記憶がある。
まあそれは置いておいて、茶柱先生は説明を続ける。
「今から学生証カードを配る。それを使えば敷地内の全ての施設を利用することができ、売店などで商品を購入することも可能となっている。端的に言えばクレジットカードのようなものだな。ただし消費されるのはこの学校内でのみ流通しているポイントだ。
「施設では機械に学生証を通すか、あるいは提示することで使用できる。非常にシンプルな使い方だろう? それからポイントは毎月一日に生徒全員に自動的に振り込まれることになっている。新入生全員、平等に一人十万ポイントが支給されているはずだ。なお、このポイントは一ポイントあたり一円の価値がある。それ以上の説明は不要だろう」
最後の一言に教室中がざわめく。新入生全員、つまり入学しただけで皆10万円のお金が支給されたのだ。僕らのような学生の身においては大金に思えるだろうが内心僕はこうも思っていた。
「(まあそこまで驚くことでもない額だ。少し多い気もするがこんな箱庭を作るほど国が金をかけているんだ、妥当っちゃ妥当であるといえるだろう。高校生の小遣いだけならともかく、衣食住の住以外のすべてを自分たちで賄わなければならない状況だからな)」
「ポイントの支給額の大きさに驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たした時点のお前たちにはそれだけの価値と可能性がある。それはお前たちに対する評価の表れだ。遠慮なく使え。ただし、ポイントは卒業後には全て学校側が回収する流れとなっている。現金化などは不可能だから貯め込んでいても得にはならんぞ。配られたポイントはどのように使おうがお前たちの自由だ。仮に必要ないと言うのであれば誰かに譲渡することも問題は無い。だがカツアゲのような真似はするなよ? 学校はいじめ等の問題には敏感に対処する。何か質問はあるか?」
少し気になったことがあるため質問させてもらおうか。
「質問よろしいでしょうか!」
僕は意図的に少し明るい口調で先生へと問いかける。
「……水無瀬か。いいだろう質問を続けろ」
……やはり坂柳理事長の言ってた通りこっちの情報はある程度深いところまで伝わっているみたいだね。
あまり時間をかけるのはよくないだろうしさっさと質問するか。
「ありがとうございます! 先生は毎月1日にポイントが振り込まれると仰っていましたが、振り込まれるポイントは例えば問題行動などで減ったりするのでしょうか?」
僕がそう質問すると、先生は少しにやにやとして質問の答えを返して佐枝くれた。
「なんだ水無瀬、入学早々喧嘩でもする予定か? すまない、冗談だ。質問に答えよう……と言いたいところだが、その質問には答えることはできない。だが先も言った通り
落ち着きのないクラスメイトをよそに茶柱先生は締めくくり、教室を後にした。
望んでいた答えは返ってこなかったが、僕は自分の推測が正しいことを確信した。
「(なるほど。ある程度の当たりはついたな。茶柱佐枝は間違いなく優秀だ。あれでは見抜ける生徒は殆どいない。だがあまり嘘が得意ではないのだろう、読み解くこと自体はそこまで難しくはなかった。彼女が事実と微妙に異なることを説明した点は何点かある。
一つはクラス替えについて、専門科目を学ぶような学校でもない限り基本的にはクラス替えは行うはずだ。なぜなら同じクラスで3年間過ごしたとして交友関係が狭くなり、コミュニケーション能力が磨かれなくなる。坂柳理事長がそれを理解していないはずがない。つまり進級とは別の何らかの条件でクラス替えは発生するか、メンバーがバラバラになったら不都合が生じるということ。これは有栖が言ってたクラス間の競い事があることの裏付けにもなる。
そしてポイントについて。上手く思考を誘導させた手腕は目を見張るものがあるが彼女は言っていた『この学校において買えないものはない』と。それが例えば出席日数、テストの点数等成績にかかわってくるものかどうかの確定はできないが、覚えておいて損はないだろう。
そして最後が支給されるポイントと評価の関係について。やはりポイントは変動する。それも大きな校則違反などではなくおそらく授業態度等の小さな面でも判断されるだろう……妙に多くの監視カメラがあった理由がこれというわけだ。そしてこの評価が何を基準に、どのように増減するかはわからない……これも調べる必要がありそうだ)」
「(入学して良かったと心から思えるよ! ……楽しくなってきたじゃないか!)」
────先ほどと同じように頬杖をついて学校について考える水無瀬は、とても楽しそうに見えたと後に綾小路は語る。────
高度育成高等学校学生データベース
水無瀬柊
※イラスト、キャラのイメージを損なう可能性あり。
推し男子高校生メーカー Picrewより
茶柱先生の説明のあたりはほとんど原作のままです。
もしよければ評価、感想のほどよろしくお願いします。
追記 原作によく出てくる学生評価を作ってみました。ネットから素材があったのでそれに僕のイメージの画像をメーカーで使わせていただきました。
皆がこの小説に求める要素
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綾小路や坂柳とのイチャイチャ
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上記以外のヒロインの追加
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恋愛要素以外の日常パート
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本編を早く進めること
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その他(感想で書いて頂けると助かります)