ようこそ愛憎混じる学び舎へ   作:妄想癖のメアリー

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書いてみてわかったけど1話辺り1万字とか書いてる人ってまじでバケモンだなぁと思うこの頃
ちなみに水無瀬くんの一人称が「僕」に変わっていますがミスじゃないです!


第3話 地獄への道は善意で舗装されている

 さて、僕が転生を自覚して早10年がたった。4年ほど前にあの息が詰まる白い部屋から逃げ出し、生活の基盤を整え、平凡な中学生活を送り僕の待ちに待ったこの日がとうとうやってきたのだ。

 

 まったく本当に綾小路先生に対抗するための準備には非常に長い時間を要した。しかしそのかいがあって僕たちはつかの間の自由を得たのだ。

 

 嗚呼、彼女は元気にしているだろうか? あそこから抜け出した後は連絡も何も取ることができなかったが、松雄さん達とははうまくやれているのかな? そもそも約束通りちゃんと合格したのだろうか? 

 

 僕がいなくなった後も四期生の彼らとはうまくやれているのだろうか? きちんと自分を磨く努力を怠っていないだろうか? あの親バカ先生がいるからその辺はあまり心配していないが、もしもということがある。

 

 彼女が非常に優秀であることは疑いようのない事実だが、やはり気になるものは気になる。水無瀬はバスに揺られ、忙しなく指を動かしながら窓から流れる桜満開の景色を見ながら想いをはせる。

 

 

 

「あなたにしては随分と慌ただしいですね。そんなに彼女のことが気になるので?」

 

 水無瀬の目の前に座る杖を持った銀髪の少女が少し驚いたように彼に問いかける。

 

 水無瀬はその問いに素直に答えた。

 

「そりゃあ気になるさ。いくら彼女が優秀だとしても万が一のことがある。そもそも僕は彼女があそこから逃げ出す事には直接関係していないんだ。接触しようにも危険性を顧みたらそれもできないしね。だから僕は彼女達を信用するしかないのさ」

 

「……それでも意外です。あなたなら『彼女ならすべてうまくやってくれる。そう信じてるさ』とでも言うのかと思っていました。あなたから彼女の父親の話はよく聞きますが、あなた自身も大概ですね」

 

 呆れたように少女は語る。

 

「おいおい、僕が綾小路先生と同じだと言いたいのかい? ……まったく心外だ。僕はあの人ほど不器用で親バカではないよ」

 

 不機嫌そうに形のいい眉をへの字にして語る水無瀬。

 彼は続ける。

 

「それに君だって随分と楽しそうじゃないかい? そんなに彼女と戦いたいのか? 競争はそれぞれの実力を高いレベルへと導いてくれる素晴らしいものだとは僕も思っているが……やっぱり僕にはその考えはよくわからないよ」

 

「ふふ……いったい誰のせいだと思っているんでしょうか? 私をこんな体にした責任は取ってもらいたいものです」

 

 意味深な事をいう彼女に周りの乗客は驚いたように水無瀬を見る。

 

「はあ……からかうのはやめてくれないかい? ──有栖ちゃん」

 

「あら? 何も嘘をついたつもりはございませんが……一体何を想像したのか気になるところですが……まあいいでしょう。私のすることには変わりありませんから」

 

 にこやかに彼女──坂柳有栖は語る。

 

 

 

 

 

 

「私はあの偽りの天才を完膚なきまでに叩きのめし、天才は生まれながらにして天才だということを証明します。そしてその後は──水無瀬君、あなたです。……まだあなたの元までは届きませんが、いずれは必ず私はあなたを倒します。神に愛されたなどというあなたの妄言をたたき割って差し上げましょう」

 

「それは結構。……ところでここには20人近くの人が乗っているけどそこは気にならないのかな? 随分と格好よく決めたみたいだけど……」

 

 周りからの微笑ましいものを見る目に気づいた坂柳は水無瀬をジト目で見つめた。

 

 

 

 

 

 

「……意地が悪いですよ、水無瀬君」 「さっきのお返しだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※4年前 ホワイトルーム史上初めての脱走者が出た少し後の話

 

──報告書──

 

 20XX年XX月XX日 PM11:20-翌AM01:20

 上記時間に水無瀬柊(以下04-02)による脱走事案が発生。

 04-02は当日カリキュラム終了4時間後E-02からE-07までの施設の警備用電源を遮断。※1対処に向かった整備員や制圧に向かった警備員計12名を無力化したのち、西職員用出口より脱走。

 脱走後は○○氏(研究員。事案の関与は尋問※2ののち否)の自家用車にて南東の方向へと向かう。現場から南東60km離れたYY県YY市郊外崖下にて横転した状態で車が発見される。

 現場には04-02のDNAと一致する多量の血液が見受けられる。04-02は死亡したとみなし、捜査を打ち切る。

 

※1:遮断時の詳しい状況については下記報告書記載。

※2:四期生、担当職員すべてに調査を行った。内容については下記報告書記載。

 ──担当報告官 ▲▲── 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告を見る限り脱走したは良いが、慣れない運転と極度の緊張状態による不運の事故といったところでしょうか」

 

 報告書を読み上げた年老いた男性は失望を隠さずに感想を言う。

 薄暗い部屋に二杯のコーヒーが置いてあった。

 

「……よく見ろ。別途資料に記載されているが、事故の現場からは出血多量になる量の血液しか検出されていない。裏を返せば肉片や髪の毛なども確認されていないということだ。しかも炎上がひどく状態が悪いものばかり、事故時点で流れた血液かどうかも判別がつかない。死亡したとみなすには早計だ」

 

 男の体面に座る壮年の男──綾小路父は語った。

 

「彼の身体的にはかなりの量です。死亡は確定でしょう? さらに大々的な調査が実施できない以上死亡の判断は極めて正しいです」

 

「いいや、あいつは生きているだろう。それも間違いなく」

 

 そう言って一枚のカルテを取り出す。

 

「これは……」

 

「水無瀬柊のカルテだ、ここ2か月ほどの定期診断の結果だ。それ以前は極めて健康的だったが、基準値をギリギリ下回らない貧血の症状が出ている。おそらく奴は自分の血液をこの時のために抜いていたんだろう」

 

「そんな! あり得ません! 第一誰が彼に協力するというのですか!? ……いや、ありえない話ではありませんね」

 

「ああ、ホワイトルームも一枚岩ではないからな、おそらく奴が私の成果を嫌っている者に何かしらの条件を提示したのだろう」

 

「それで、彼が生きているとわかったらどうするので? 連れ戻すのですか?」

 

 綾小路父は乾いた口を潤すためコーヒーを一口含んで答える。

 

 

 

 

「いや、特に影響はないだろう。奴は外の世界に出たがっていたからな。ここにたどり着く可能性も限りなく低い。放置しても害はない」

 

 

 

「(……だが私の目的を阻むなら今までのように容赦はしないぞ……水無瀬柊)」

 

 

 

 

 

 

 

 ──最後の一口のコーヒーはひどく冷めていた──

 

 

 

 

 

 




結構時系列がばらばらになってる自覚はあります。
一応読みやすいように工夫はしましたが、もし読みずらい等あれば順序を変えさせていただきます。

皆がこの小説に求める要素

  • 綾小路や坂柳とのイチャイチャ
  • 上記以外のヒロインの追加
  • 恋愛要素以外の日常パート
  • 本編を早く進めること
  • その他(感想で書いて頂けると助かります)

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