障害年金
しょうがいねんきん
年金制度に加入している間または20歳になるまでに、病気やけがをして治癒したのちも一定の障害が残ったとき、その程度に応じて被保険者に支給される年金。
以前は国民年金、厚生年金保険などの各年金制度ごとに内容が異なっていたが、基礎年金構想に基づき、1986年(昭和61)の新国民年金法などの成立によって大幅に改正された。その後も年金額は改定され、2011年(平成23)時点で、国民年金加入者には障害基礎年金(年間で1級98万6100円、2級78万8900円。子の加算として、子の数によって第2子まで1人につき22万7000円、第3子以降は1人につき7万5600円が加算される)が支給され、ほかの年金もこの額を基礎としている。たとえば厚生年金加入者の場合は、以上の障害基礎年金の保障のほかに、障害厚生年金として1級では(報酬比例の年金額×1.25)+(配偶者の加給年金額)が、2級では(報酬比例の年金額)+(配偶者の加給年金額)が上乗せされ、3級では報酬比例の年金額のみが上乗せされる。しかし、障害年金の支給を受けるためには、所定の保険料納付要件を満たしていることが条件になっている。
なお、現行の制度については、無年金障害者(年金の未加入や保険料の未納のために、たとえ障害者に該当しても障害年金の受給権がない)問題や、障害認定の基準や適用方法などが明確さを欠くなど、いくつかの課題がある。
[白沢久一・小谷浩之]
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障害年金
しょうがいねんきん
公的年金の被保険者が傷病により障害者になったときに支給される年金。障害基礎年金,障害厚生年金,障害共済年金の 3種類がある。(1) 障害基礎年金 国民年金の被保険者,あるいは日本に在住している被保険者であった 60歳以上 65歳未満の者が,加入期間中に初めて医師の診療を受けた傷病で障害の状態になり,障害認定日に障害等級 1級あるいは 2級に該当した場合に支給される。ただし,初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間の 3分の2以上の期間について,保険料が納付または免除されていること,または初診日のある月の前々月までの 1年間に保険料の未納がないことが条件。初診日と障害認定日が 20歳になる前の場合,20歳に達したときに障害基礎年金受給に該当するか審査される。受給権を得ても,本人の所得によっては全額あるいは半額が支給停止となる。(2) 障害厚生年金 厚生年金保険の被保険者で,加入期間中に初診日のある傷病で障害の状態になり,障害認定日に障害等級 1級から 3級に該当し,障害基礎年金の保険料納付要件を満たしている場合に,障害基礎年金とあわせて支給される。(3) 障害共済年金 共済組合の被保険者で,加入期間中に初診日のある傷病で障害の状態になり,障害認定日に障害等級 1級から 3級に該当し,障害基礎年金の保険料納付要件を満たしている場合に,障害基礎年金とあわせて支給される。いずれの年金にも事後重症制度,併合認定の制度がある。
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知恵蔵「障害年金」の解説
障害年金
公的年金に加入中、病気やけがで障害者になった時に支給されるのが障害年金。加入すべき期間の3分の1以上の保険料未納がなかったことが要件となる。障害基礎年金(国民年金)は、障害が2級の場合は老齢基礎年金の満額と同額で、1級は2級の1.25倍の年金が支給される。障害厚生年金は、厚生年金に加入中の賃金の平均と加入期間に応じて計算され、1、2級のほか、3級と障害手当金がある。一方、遺族年金は、年金受給者や加入者が死亡した場合、同人に生計を維持されていた遺族に支給される。加入すべき期間の3分の1以上の未納がないことが必要。遺族基礎年金は、老齢基礎年金の満額と同額の年金に子供の数による加算がある。遺族厚生年金は、2004年の年金改正で、まず妻自身の厚生年金を受給した上で、その年金額が亡くなった人がその時点で受けるはずだった老齢厚生年金の4分の3より少額の場合、その差額を受け取る仕組みとなった。
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障害年金【しょうがいねんきん】
年金保険の給付の一種。労働者が廃疾状態になった場合,その廃疾度に応じた額の年金が支給される。給付は事故の全期間あるいは老齢年金の受給まで継続され,傷病手当金と老齢年金との中間的性格をもつ。
→関連項目共済年金|国民年金
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しょうがいねんきん【障害年金】
年金制度において,被保険者が障害状態になったとき支給される年金給付で,日本の公的年金制度では,国民年金制度を通して支給される全国民共通の障害基礎年金と,厚生年金保険(または共済年金)から支給される障害厚生年金(または障害共済年金)がある。
[障害基礎年金]
障害基礎年金は,初診日において,(1)被保険者であること,(2)過去に被保険者であった者で,日本国内に住所があり,かつ60歳以上65歳未満であること,のいずれかに該当する者であって,かつ資格期間の要件を満たしている者が,障害認定日に障害等級の1級または2級の障害の状態に該当する場合に支給される。
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世界大百科事典内の障害年金の言及
【厚生年金保険】より
…被用者が老齢,障害,死亡により所得を喪失した場合,本人および家族の生活を保障するために主として年金給付を行う社会保険である。 1942年実施の労働者年金保険に始まり,44年に一般事務職,女子も対象に加えて,厚生年金保険の名称に改められた。戦時体制下に制定されたこの年金制度には,生産力の拡充のための労働力の増強確保と強制貯蓄的な機能が期待されていた。第2次大戦後は激しいインフレのために一時は存在の意義も疑われたが,54年の抜本的な改正によって一応の体制を整え,新しい厚生年金保険として再出発することとなった。…
【国民年金】より
…このような残された問題を完全に解消するために,全額国庫負担制に切り替えるべきだとか,当面,基礎年金に対する国庫負担を引き上げて保険料負担を軽減すべきだといった提案も行われている。年金障害年金遺族年金福祉年金【山崎 泰彦】。…
【障害者福祉】より
…これによって,身体障害者対策の目標が社会復帰,すなわち自立生活への復帰であることが明確化された。(4)59年には国民年金法が制定され,障害年金および障害福祉年金の制度が設けられた。後者は20歳前から障害のある者についても支給されるもので,公的扶助以外では幼少期以来の障害者に対する初めての所得保障となった。…
【年金】より
…この公的扶助も,広義の年金の一種と考えている国もある。 年金の主要な給付は老齢年金だが,このほかに一般に障害年金と遺族年金が支給される。年金制度は,老齢,障害,死亡による所得の喪失に際して一定の年金を支給する防貧の制度で,公的扶助はすでに貧困におちいった者を事後的に救済する救貧の制度である。…
※「障害年金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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