[名称] OD321
[種類] 光ディスク
[記録方法] 金属皮膜(追記型)
[サイズ] 300mm
[容量] 7GB(片面3.5GB)
[登場年] 1990年頃~
今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。
「OC321」は、日立製作所と日立マクセルによって開発された追記型光ディスク。容量が片面3.5GB、両面で7GBと1990年頃とは思えないほど大きいのが特徴です。この容量を実現するため、ディスクサイズは約12インチ(300mm)、カートリッジ重量は約1.2kgと、かなり大きく重たいものとなっています。当然ながらコンシューマーではなく、エンタープライズ向けとして登場しました。
OC321の前身となるのは、同じ12インチ光ディスクの「OC301」。1984年に日立マクセルが初めて製品化した追記型の光ディスクで、容量は両面2.6GBというものでした。これをベースに記録方式をマークエッジへと変更したほか、MCAV方式の採用、レーザーの短波長化といった改良を加え、両面7GBという大容量を実現しました。
それぞれの技術がどういうものか、簡単に紹介しておきましょう。
マークエッジは3.5インチ第3世代MO(640MB)でも触れましたが、マークによってデータの0/1を表す(マークポジション)のではなく、マークの端でデータが反転することを表す方式。例えば「10」というデータを記録するなら、マークポジションの場合は「●○」となりますが、マークエッジであれば「●」で済むわけです。これにより、最短ビット長が短くなります。つまり、同じ記録密度でも、より多くの情報が記録できるわけです。
MCAV(Modified Constant Angle Velocity、改良型一定角速度)方式は、角速度(回転数)は一定のまま、記録密度が一定になるようセクターを配置したもの。CAVでは外周に行くほど記録密度が低くなってしまいますが、MCAVなら、内周でも外周でも同じ密度で記録できるため、面積当たりの効率が上がります。
レーザーの短波長化は、小さなマークを読み書きするのに必要な技術。トラックピッチなどを詰められるため、物理的な記録密度が高くできるのがメリットです。
容量は大きくなっているものの、それぞれの技術は従来の延長線上にあり、順当に進化したモデル、といえそうです。
ということで、OC321のカートリッジを見ていきましょう。
両面メディアということもあり、裏も表もほぼおなじ。変わる部分といえば右上の「A」が「B」になるくらいです。
なお、片面のみは「OC321-1」、両面は「OC321-2」といったように製品名が異なっています。今回紹介しているのは両面となる「OC321-2」です。
シャッターの左にある白い四角が、ライトプロテクトスイッチ。右寄りになっているときが書き込み可、左寄りだと書き込み不可となります。現状は、書き込み可の状態ですね。
写真ではサイズが伝わらず、「MOっぽいね」くらいの感想になってしまうので、せっかくなので比較としてCD(直径約120㎜)を置いてみました。スゴイデカイというのが伝わるのではないでしょうか。
シャッターは裏表一体型で、A面とB面が同時に開きます。左右どちらにも動くようになっており、A面B面関係なく、一方向へと動かせばいいような作りです。
シャッターを動かすと、ディスク面が登場。光を当ててよく見ると、セクターの長さが外周でも一定となっているため、キレイな放射状に並ぶCAVとは違い、少しずつズレていっている様子がわかります。
ちなみに、ディスクの基板はガラス。記録層はテルル合金の被膜となっていて、ここにレーザーを当てて穴をあける(破壊する)ことで、データを記録していきます。
この時代の光ディスクはエアサンドイッチ構造となっており、記録層の隣に空間、つまり、空気の層が作られていました。これは、記録層に穴をあけるときに起こる膨張や収縮などの影響を抑えるためのものとなります。
側面にある白いスライダーは、カートリッジ内でディスクがガチャガチャと動かないよう固定するためのもの。ガラス基板の300mmディスクは半端なく重たいので、カートリッジの交換や輸送時に割れないために、こういった工夫があるのでしょう。
この白い部分を手前に引くことで、中のディスクを手で回せるようになります。
手で回すことなんてないだろう……と思うかもしれませんが、ディスクに付着したホコリや汚れを落とすときに回します。この手順、カートリッジ付属のマニュアルに書いてあったので、公式のものです。
ペンをシャッターの穴に通し、固定するというのも公式です。
12インチの光ディスクは日立以外にも、Plasmonやソニーが製品を発売していたほか、松下電器産業も研究開発に取り組んでいました。
この時代の光ディスクは各社独自、もしくはそれに近い互換性のない規格となっていましたが、5.25インチでは統一規格に。追記型は光ディスク、書換型は光磁気ディスク(MO)が、長く使われることになりました。
ちなみにコンシューマーでは、3.5インチMO、そしてCD-Rが普及していきます。
参考:
12型光ディスク OC-301, 産業技術史資料データベース, 産業技術史資料情報センター
高速大容量12インチ追記形光ディスク装置, 日立評論1991年1月号, 日立評論