MLBでも通用する素質を有しながら、国家的損失とも呼べるあまりに居たたまれない悲劇的な状況に陥っている阪神タイガース藤浪晋太郎投手。
この問題の原因を探ってみたところ、現在の完全な瓦解に至ってしまった原因は「テークバックのアーム式化」にあると考えられます。
まず2015年。高卒3年目ながら199.0回、211奪三振、四球82・死球11、防御率2.40
次が2016年、前年より不調ながら、169.0回、176奪三振、四球70・死球8、防御率3.25の成績を残す。
↓動画は伝説となっている161球の時
そして2017年、39.0回、41奪三振、四球45・死球8、防御率4.12と、現在まで続く制球の崩壊に至ってしまう。
この2015年・2016年・2017年を比較してみると、その差は歴然。
(※2017のみ上下アングルが多少異なるため体形・見え方が別2年と若干違う)
2015年・2016年と、2017年の最大の違いは、右腕のテークバック動作。
2015年・2016年は右腕を内側に畳みながら上げているのに対し、2017年は1コマ目のテークバック開始位置(テークバックポケット)から右腕をそのまま外側に回している。
また3コマ目を見ると、ボールが肩高さに上がった時点で2015年・2016年はボールが右肘より胸側に見えているものの、2017年はボールが右肘を隠す位置に来ている。
この2015年・2016年は「持ち上げ式テークバック」である一方、2017年は典型的な「アーム式テークバック」に陥ってしまっています。
【引用】図1-1: 『持ち上げ式(曲げ上げ式)テークバック』の定義と標準的な方法
【引用元・参考記事】
・サイトトップページ(野球の動作分析と強化指導方法、参考写真)
・サイトトップページ(野球の動作分析と強化指導方法、参考写真)
このうち当サイトで完全推奨としているのは前者の、藤浪投手が2016年まで行っていた「持ち上げ式テークバック」です。
一方のアーム式テークバックについては、投球腕をトップまで上げていく際、体重移動と逆方向に加速度をつけて腕を上げる必要があり、腕が後方(右投手の二塁方向or一塁方向)に残りやすくなるため、当サイトでは非推奨の動作としています。
もちろんアーム式にも、元中日岩瀬投手や、現役でもオリックス山本由伸投手や巨人中川皓太投手等の好投手は存在しますが、彼らはプロ入り前からずっとアーム式で投げてきた投手達。藤浪投手のように「図らずもアーム化してしまった投手」とは異なる位置づけです。
ではなぜ藤浪投手は、2017年から2019年現在に至るまでアーム式になってしまったのか。
大阪桐蔭高校での大活躍から2015年まで、順風満帆な結果を残してきたものの、入団後3年間で約500回を投じた代償として2015年オフに肩痛を発症、その影響か2016年は2015年より成績を落とす。それでも2016年はテークバックが崩れることはなかった。
2017年シーズンになぜテークバックが変わってしまったのか、明確な理由は分からないものの、持ち上げ式テークバックを採用していたとはいえテークバック開始前に腕を大きく背中に入れる投手であり、加齢や累積疲労による身体の変化により従来の深い腕引きからのテークバックが出来なくなった可能性はあります。
阪神藤川球児投手のように、腕を深く引いても問題なくテークバック出来さえすれば問題はないのですが、これまでの様々な選手の動作観察上、腕引きタイプの選手がテークバックで腕が上がらなくなった場合、同じ腕引き位置から従来通りの持ち上げを回復するのは非常に困難なものです。
例えば元早稲田大学の大石達也投手も、大学4年時にこの問題を生じ、解消されないままドラフト指名され現在に至っています。
では藤浪投手は、どのように動作修正をすればいいか。
このタイプ・問題に共通するのは、腕が最大でも背中ラインに来た時点からテークバックを開始することです。
ただし、現在の動作のまま単純に右腕が背中ラインに来た位置からテークバックするようにタイミングを早めるだけでは、体重移動を使って適切に投げることはできません。
現在の体重移動を生かしたままテークバック動作修正を入れ込むには、グラブの出し方、投球腕の下ろし方、体勢の取り方など、当サイトの指導のキモとも言える具体的方法をかませる必要があります。
腕を深い位置に引いていた選手が、持ち上げ式テークバックを行えなくなった場合、それは身体の柔軟性回復で解消されるものではありません。
肩甲骨の可動性を高めても、肩関節の柔軟性を上げても、胸郭の回旋性を回復させても、人体にとって自然な肩甲骨面から大きく逸脱するような動作を再現することは困難であり、対処法としても望ましくない。まず着目すべきは、その身体の不調よりも先に、問題となっている動作そのもの。
管理人の実際指導においても、このテークバックの改善は指導事例の5割ほどを占めるものですが、テークバックの修正のみで球速が10km/h上昇する、長年悩まされた肩痛・肘痛・投球数が嵩んだ際(とはいえ100球程度)の疲労が解消され試合登板が可能になったなど、テークバック是正の効果は絶大なものがあります。
藤浪投手の問題の原因はイップスではなく、純粋な動作の崩れによるもの。
日本の国家的資産、藤浪投手の再起を願わずにはいられません。
↓藤浪投手と同様の動作崩れを抱える選手を含め、動作指導を行っています。
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