藤浪投手はできる事はやっている

 藤浪投手が11失点もしたので、多くの野球関係者が見当外れなアドバイスをしている。彼らは過去に活躍した選手でもあり、一見、正しい事を言っている様に見える。しかし、日本人は運動メカニズムを理論化できるだけの知能がないため、その理論は見当外れなものばかりだ。最近でも元阪神投手の中田良弘氏がアドバイスをしている。


その内容は2点で、1つは投球後に左足に体重を乗せきる事。もう1つはボールの回転をきれいにする様に意識する事だ。

 しかし、長年ピッチングを研究してきた我々から見れば、このアドバスは間違いだ。まず、左足に体重を乗せきる事だが、これはメジャーのマウンドの様に高さがある硬いマウンドでは正しいやり方だ。こうする事により、ボールスピードが出るからだ。しかし、高校生も使用する事を考えて、マウンドが低い甲子園球場では、このやり方では低めにボールコントロールができなくなる。こうした低いマウンドではスタンスを大きく取り、腰を落として投げる必要があるのだ。スタンスが広くなるため、投球後は多少、体重が後ろに残る。つまり、藤浪投手は状況に適応した正しいフォームで投げている。

 また、ボールの回転を意識して、きれいな回転にすれば、プロネーションが抑えられ、ボールコントロールは良くなる事は間違いではない。藤浪投手の問題はプロネーションのスナップの掛かりすぎなので、これで問題は解決する様に見える。しかし、プロネーションを過剰に抑えると、ボールスピードが落ちてしまう。コントロールで勝負する投手ならそれでも問題ないが、藤浪投手は速球で勝負する投手だ。これではプロでは通用しないのだ。

 プロネーションの問題を解決するため、藤浪投手はよりスライダー気味にボールを投げている。藤浪投手はサイドスロー気味であり、スライダーはスリークォータースローのカーブに当たる。カーブはプロネーションを後らせて投げるフォームであり、プロネーションが早く掛かりすぎる欠点を補正するものだ。これは手首を立てろとか、ボールをより前でリリースしろというアドバイスと同じ効果がある。そして、右腕を下げるのはよりサイドスローに近づける事により、このフォームの修正の効果を高めているわけで、できる範囲では最も効果的な対策をしているのだ。

 結局、藤浪投手のやり方は全く正しい。それでも11失点もしたのはコントロールが悪くて自滅したからではなく、キャッチャーの配球がバッターに読まれたからだ。元々速球投手の藤浪投手なら、多少、コントロールが悪くてもキャッチャーはバッターを打ち取れなければならない。バッテリーの成績の半分はキャッチャーの責任だ。例えば、元ヤクルトの古田捕手はノーコンの石井一久投手を大活躍させた。コントロールの悪い石井投手にコースを突く事は要求せず、スライダーとスピードボールの緩急でバッターの裏をかいた。特にジャイアンツ打線は彼のスライダーに手を焼いた。大きくブレーキが掛かり、左バッターの外に逃げていくからだ。

 藤浪投手は現時点でも完全復活をしている。成績が伴わないのは彼自身の責任ではない。また、修正法に慣れれば、さらに投球は良くなる。ここで首にするのはあまりにもったいない。日本人は責任の所在が不正確だ。だから、ドラマの視聴率を主役のせいにしたりする。ドラマの視聴率の最終責任はプロデューサにある。俳優は役を完璧に演ずれば、視聴率に関しては責任はない。野球も同じだ。バッテリーの最終責任はキャッチャーにあるのだ。失投を連発したのでなければ、投手に責任はないのだ。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント