主張

日米地位協定を改定せよ② ~イデオロギーからの脱却~

 米軍機の運用については、わが国の航空法が適用されるのですが、「日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」(航空法特例法)及びその政令により、適用除外の範囲が定められています。
自衛隊機の運用についても、自衛隊法により航空法の適用除外の範囲が定められているのですが、最後に添付した別表を見て頂ければおわかりのように、米軍機には相当幅広く適用除外を認める一方で、自衛隊機への適用除外は限定的になっているのです。

 沖縄県の現地調査によると、ドイツにおいては、航空法や騒音に関する法律、ドイツ軍の規則などを原則として米軍にも適用させることで夜間の飛行など米軍の活動を制限しており、また、米軍の飛行もドイツ航空管制が原則としてコントロールし、空域での訓練はドイツ航空管制の事前許可が必要とされています。

 イタリアでは、米軍基地はすべてイタリア軍司令官の下に置かれ、米軍の訓練等の活動には事前にイタリア軍司令官の許可が必要となっており、また、米軍基地の航空管制はイタリア軍が行っているとされています。

 ドイツやイタリアでは米軍機の度重なる航空機事故をきっかけに地位協定の見直しが行われました。わが国においても米軍機の運用について見直せないはずはなく、自衛隊機の運用との均衡をとるような形で見直すことはできるはずです。(なお、自衛隊機の運用に係る規制が厳し過ぎる部分があれば、その緩和について検討する必要はあります)

 航空機の運用に関して縷々述べてきましたが、これ以外にも地位協定に関する論点は多々あります。2000年に沖縄県が「日米地位協定の見直しに関する要請」を取りまとめ、施設・区域への立入りに関することなど、11項目にわたる要請事項が提示されました。

 2003年には、自民党国会議員でつくる「日米地位協定の改定を実現し、日米の真のパートナーシップを確立する会」が、また、2008年には、民主党・社会党・国民新党が具体的な改正案をまとめています。更には、2014年に日本弁護士連合会が、2015年には米軍提供施設等が所在する主要都道府県で構成する渉外知事会がそれぞれ改定案をまとめるなど、各界から多岐にわたる論点が提示されています。

 しかしながら、政府はこれまで地位協定の改定には消極的な態度をとり続けています。内閣の重要課題として位置付けなければ取り組めない大きな課題であることは間違いありません。ドイツやイタリア、そして韓国でも地位協定の改定が行われていますが、事件・事故後の世論の高まりを受けてのものでした。日米地位協定の改定に関しても国民世論の高まりが必要です。

 私のような保守の立場の者が日米地位協定改定の必要性を訴えることで、国民の中に耳を傾けて下さる方も増えてくると信じています。例えば、「原発ゼロ」も少し前まで政治的に偏った人の主張だと見なされることがありましたが、東日本大震災を経て、現実を見据えて議論しようという新しい動きが出てきました。日米地位協定の改定も、イデオロギーにとらわれるのではなく、原発の問題と同じように一般的に議論されるテーマにしていければと考えています。

 あまり報道されませんが、沖縄に所在する米軍は沖縄県民の方々との信頼関係を深めるために様々な努力を行ってきているのも事実です。
 例えば、毎年秋には嘉手納空軍基地において、沖縄県の知的障害者の方々やその家族を招いて「スペシャル・オリンピック」を開催しています。米軍の若い兵士達がボランティアで参加し、選手と一緒になってグランドを走り、ボールを投げ、そして笑いや喜びを家族とともに分かち合っています。

 地域の清掃活動や英語教育への協力など、毎日のように沖縄県のどこかでボランティア活動が行われています。沖縄や日本の文化を学ぶための研修活動も行われています。しかし、このような努力を積み重ねても事件・事故がなくなることはなく、悲惨な事件・事故が起こるたびに県民の怒りが爆発します。
 「米軍基地があるから事件・事故が起こるんだ、だから米軍基地には出て行ってもらわないといけない」と主張される方も沢山います。

 しかし、現在の厳しい国際情勢に対応するためには日米間の緊密な連携が必要であり、在日米軍が日本から撤退するという選択肢は現実的ではありません。それだからこそ、事件・事故をなくすための取組みに全力を尽くす必要があるのです。
 安倍晋三首相も「できることはすべて行う、沖縄の基地負担軽減には全力を尽くして参ります」と言われています。厳しい国際情勢が継続する中、日米安保体制に対する幅広い国民の理解を得るためにも、米軍による事件・事故はあってはならず、「日米地位協定」の改定に真正面から向き合う必要があるのです。

 地位協定改定の実現に向け、地道な努力を続け、共感の輪を少しでも広げていきたいと思っています。

航空法第6章における米軍と自衛隊の適用除外の比較

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