MMOの開発はとても刺激的!『FFXIV』のサーバーシステムを支えるプログラマーが語る「スクウェア・エニックスの開発環境」
最初にお話を伺ったのは、プログラマーの鮫島和展さん。前職では、据え置き機への某タイトルの実装を担当したほか、ツールやスクリプトエンジンを作っていたそうです。その後、スクウェア・エニックスに転職。現在は『FFXIV』のサーバーシステムに携わり、世界中のプレイヤーに快適なゲーム空間を提供しています。
――今のお仕事内容と、第三開発事業本部について教えてください。
鮫島 第三開発事業本部は『FFXIV』の部署というわけではなく、『ドラゴンクエストビルダーズ』などのタイトルも手掛けていますし、大規模な新規プロジェクトも進行しているところです。そのなかで自分が主に担当しているのは、サーバーシステムです。新しい機能が欲しいという要望に応えることが多く、最近ですと「サーバー間のパーティ 募集」機能を実装するなど、割とシステマティカルなことが多いです。以前は『FFXIV』のゲームコンテンツを作っていましたが、3年ほど前にこちらの班に移ってきました。
――ご自身の希望で、コンテンツからサーバーシステムに移られたのでしょうか。
鮫島 当時のサーバーシステム班のリーダーから誘われたのがきっかけでした。実際、コンテンツを作っているのに『FFXIV』がどう動いているかわかっていませんでしたし、システムに対する興味がわいたことも理由のひとつです。これほど大きなタイトルで「システムやサーバーのことを学べる」機会はそうありませんから、その点でも良い機会かなと思いました。
――スクウェア・エニックスで働くことになった経緯をお聞かせください。
鮫島 プログラミングを仕事にしようと思ったのは、大学のときですね。授業でプログラムにふれたとき、自分が指示したとおりにコンピューターが動くのが楽しくて、「この道でがんばってみよう」と思いました。初めて就職した企業では、ゲームではなくIT企業で業務システムを作っていたのですが、その後小さなゲーム会社を経て、6年ほど前にスクウェア・エニックスに転職しました。
転職先にゲーム会社を選んだ理由は「おもしろいものを作っていきたい」と考えるようになったからです。システムの場合、最初からお客様の要件が決まっているので「これを作ればいい」というものがあります。ところがゲームは、「おもしろくなければならない」ものですから、臨機応変な対応が必要です。もちろん、初めに大枠の設計図はありますが、だいたいひっくり返されます(笑)。
――たくさんあるゲーム会社の中から、転職先にスクウェア・エニックスを選んだのは『FF』の開発元だからですか?
鮫島 子供のころからスクウェア・エニックスのゲームはよく遊んでいました。一番好きだったのは『ファイナルファンタジーV』で、自分も「こういうゲームを作りたい」と思ったタイトルでしたね。スクウェア・エニックスのゲームには、グラフィックから技術の高さを感じていましたから、ここだったら「技術的に良い経験ができる」と考えて転職しました。実際、サーバーシステム班として、MMOの中で問題とされていたサーバー間の通信を解決して、プレイヤー に喜んでいただけるシステムを作れたことは印象的です。停滞していたゲームが一気に動いたときにはやりがいを感じました。
――お仕事で使っているツール、言語について教えてください。
鮫島 基本的にC++で実装しています。パラメーターの調整、リアルタイムでの反映、ウェブツールを作るためには、PHPやJavaScript、C#も使います。ひとつの言語を極めていたほうが、応用が利くので良いと思います。あとは、ネットワークに関する知識があればうれしいですね。
――プログラマー職への応募者には、技術以外で何を望みますか?
鮫島 月並みですが、コミュニケーション力です。大きなプロジェクトですから、ひとつの機能の実装にいろいろなセクションが関わってきます。そこで齟齬があると問題が起きますから、情報共有を密にできるほうがいいですね。連絡にはSkypeを使うことが多いのですが、直接会って話をしたり、会議で話し合ったりすることもあります。私は対面のほうが好きなので、話ついでに遊びに行ったりもしています。
ほかには、「ゲームを作りたい」「このゲームをおもしろくしたい!」という熱意が大切です。たとえ実力が少し足りなくても、熱意があれば学習速度も速いので、それをフォローする組織作りはできています。例えば、バージョン管理ツールは「Perforce Helix」を使っていますが、ほかの会社では「SVN(Subversion)」が多いと思います。でも、「慣れようという意志」と「技術的な基盤」があれば応用は利きますし、すぐに慣れるものですから大丈夫でしょう。
――スクウェア・エニックスの待遇や社内環境に満足されていますか?
鮫島 社内活動は活発に行われていて、お昼に 対戦ゲームで遊んでいるグループも見かけます。福利厚生も不満はありません。休日はほぼカレンダーどおりに取れていますし、働いていく上でとてもいい会社だと思います。また、新しい技術や開発手法に関してのセミナーや講演などに参加し、学ぶこともできる環境です。もちろん、レポートの提出は必要ですが、会社で費用負担がありますよ。
――最後に、未来のチームメイトに向けてメッセージをお願いします。
鮫島 これまでHDゲーム(High Definition=家庭用やPCの高解像度なグラフィックのゲーム)を作っていた方は、3年とかの長期スパンで開発をするという形だったと思います。でも、MMOの場合は、2~3ヵ月に1回パッチを出して、短いスパンでプレイヤー の反応をいただける刺激的な環境です。その分、たいへんなところもありますが、私たちといっしょにがんばってくださる方に応募していただければうれしいです。
鮫島さんの一日のスケジュール
- 10:00
- 出社
- 午前
- メール、GM(ゲームマスター)のレポート、サーバーがダウンした情報のチェックと報告
- 12:00
- 休憩
- 午後
- 通常業務
- 19:00
- 退勤
株式会社スクウェア・エニックス
第三開発事業本部 プログラマー
鮫島和展
IT会社、小規模な開発会社を経て、スクウェア・エニックスに入社。『FFXIV』のコンテンツプログラムを経験後、サーバーシステム班に異動し、世界中の冒険者を抱える巨大なシステムを支えている。