極秘研究の存在を知る
時間が空いてしまったが2020年、いよいよ千葉さんの取材が実現した。きっかけはやはりコロナウイルス。「ダーウィンが来た!」制作のために予定していた3、4月の海外ロケが突如、中止となってしまったことだった。海外ロケがなくなったのは残念だったが、GW開け頃には気持ちを落ちつけ、「日本人研究者の研究成果をベースに新たな古生物番組を作ろう」と思い直した。そしてここで思い浮かんだのが、あの千葉さんだった。
2020年6月、岡山理科大学にいらっしゃる千葉さんをいよいよ訪ねた。
千葉さんは子供の頃に「恐竜少年」としてNHKで特集されたこともある、筋金入りの恐竜好き研究者だった。特にトリケラトプスに代表される角竜と呼ばれる植物食恐竜を研究しているという。
小林さんが推薦してくれただけあって、千葉さんが教えてくれた「角竜に関する研究」はとても魅力的で、自分の脳内で角竜たちが躍動する様子が鮮明に思い浮かんだ。ぜひ「ダーウィンが来た!」実現に向け企画書を書いてみたい内容だった。
1時間半くらい話を聞き、盛り上がったところで、「千葉さん、今聞いた話はとても面白い。それをベースにダーウィンの提案を書いていいですか?」と最終確認した。が、返事は予想に反するものだった。「いや、まだ研究中なので番組では出せません。当分、待ってください」との冷静な返事だったのだ…。
今現在も、その時聞いた話はここで書けないが、自分の感覚的に本当に面白い話だった。だからこそ「まだ当分は紹介できない」と分かった事の落胆ぶりが、冷静を装いつつも、体中からダダ漏れしてしまっていたのだと思う。そのまま沈黙が1分近く続いただろうか、このまま「ありがとうございます」と言って手ぶらで帰るか、もう少し“踏ん張るか”を一生懸命、逡巡した。そして深呼吸してから一言。「では、まだ、ほかに何かありませんか?」、せっかく岡山まで来ただけにもう一歩、踏ん張って聞いてみた。
「そんなこと言われても…」と黙り込む千葉さん。しかし、「あ、あれはどうかなあ…」とつぶやき、急に電話を始めた。「今、NHKさんが来ているんですが、“あの話”、言ってもいいですか?」と、誰かとなんとも思わせぶりな会話を始めるではないか。自然と体が前のめりになった。
「OKですか! ではそちらに行ってもいいですか? じゃあ、今から行きます」と千葉さんは電話を切った。「じゃあ植田さん、共同研究者から許可をもらったんで。一緒に行きましょう」とのことだった。
千葉さんは後に、「あの時の“重い空気”に耐えられず、生贄的にその研究の話をしてしまった(笑)」と言っていたが、これこそが私と岡山理科大3人衆による極秘研究との出会いだった。何の話が飛び出すか、とにかく千葉さんについていくことになった。