4回目接種は、オミクロンに有効なのか? 「中和抗体の量」という落とし穴!?

感染対策の基本も守ることが大切
宮坂 昌之 プロフィール

しかし、接種回数を増やせばいいものではない

ただし、追加接種の間隔を短くしすぎると、追加接種の効果が十分に出ず、抗体価が高くなっても、変異株に対する中和能が限定的となる傾向があります。

一般には、免疫の回数を増やせば強い免疫が出来ると思っている方が多いと思いますが、決してそうではありません。免疫反応には「成熟」という過程が必要で、しかるべき時間をおかないと、「良質の免疫」ができてきません。

「良質の免疫」とは、新型コロナの場合、「変異株にも対応できるような質の高い免疫」のことで、抗体を作る細胞=Bリンパ球の成熟に伴って出現する現象です。

図を用いながら説明しましょう。ご存じのように、B細胞は抗原、たとえば新型コロナのスパイクタンパク質)による刺激を受けると、スパイクタンパク質に対する抗体を作ります。B細胞はこの過程で細胞増殖をしながら遺伝子変異(改変)を起こします(リンパ球は普通の細胞とは異なり、抗原刺激を受けると遺伝子変異(改変)を起こすのです)。

すると、大きく分けて、以前よりコロナに強く反応できるようになった細胞(=うまく成熟した細胞)と、弱くしか反応できない細胞の2種類が出来てきます。前者のうまく成熟できたB細胞は、再び抗原刺激を受けると、以前に比べて、より強い抗体を、より多量に作るようになります。

この場合、「より強い抗体」とは、新型コロナでは、「多くの変異株を中和できる抗体」という意味です。一方、弱くしか反応できない細胞は、うまく抗原刺激を受けることができないので、いずれ死滅します。

これがB細胞の成熟という過程です。効率的に成熟が起きるためには一定の時間が必要です。これに対して、B細胞の成熟が十分に進まないうちに刺激を加えすぎると、B細胞は抗体をより多く作るのですが、変異株にはあまり効果がない「質の低い」抗体しか作りません。これが、なぜワクチン接種の間隔を十分にあけたほうがいいか?という問いに対する答えです。人生と一緒で、何事にもある程度の時間が必要なのです。

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