2022.03.30

「肉食」から「植物食」に進化…“謎恐竜”テリジノサウルスの「奇妙な生活」が見えてきた…!

今、日本の恐竜研究が熱い!!

私はNHKの番組ディレクターとして15年以上に渡り、特に恐竜研究(古生物研究)の最前線を自らの足で追いかけている。「ダーウィンが来た!」ではティラノサウルス、丹波竜、デイノケイルスなどを、「NHKスペシャル」では、むかわ竜(カムイサウルス)を特集した「世紀の発見!日本の巨大恐竜」(2017年)、モンゴルや北極圏の恐竜を特集した「恐竜超世界」(2019年)などを制作。日々、目まぐるしく情報が刷新されていく「恐竜たちの新たな世界」を様々な放送枠で紹介している。

そんな私が最近、特にホットだと感じているのがこの日本だ。世界的に重要な恐竜化石が日本から次々と見つかっているのは勿論、日本人研究者による恐竜研究自体が大変、“熱い”のだ。今回は、そんなホットな日本から届いたばかりの最新の話題を二つ紹介する。「謎の恐竜テリジノサウルスの正体」、そして「岡山発!ジュラシック・パークもビックリの極秘研究」だ。

(本記事は3月30日放送・NHKスペシャル「恐竜超世界 in Japan」の内容の一部を記事化したものです)

モンゴルのテリジノサウルス/NHK提供
恐竜界の王者ティラノサウルス/NHK提供
 

謎の恐竜、テリジノサウルス

コロナウイルスの流行で、海外渡航が極めて難しくなった2020年夏、恐竜学の世界的な権威、北海道大学の小林快次(こばやし よしつぐ)博士から連絡をもらった。例年ならアメリカのアラスカや、モンゴルのゴビ砂漠へ発掘調査に行き、何ヵ月も日本を不在にするはずの夏に、小林さんと電話で話すのは不思議な気分だった。で、肝心の話の趣旨は次のようなものだった。

「コロナで日本に留まらなければならなくなった分、地元北海道で過去に見つかった恐竜化石を改めて調べている。その過程で北海道北部、中川町で見つかった化石に面白い秘密が隠れていたことに気づいた」

それは“謎の恐竜”として世界的に有名な「テリジノサウルス」の正体に迫る重要な秘密だと言う。

「テリジノサウルス」とは、世界の恐竜学者の興味を引き付ける“ミステリー恐竜”。モンゴルで1940年代に見つかった恐竜で、1m近くにも達する異様に長い爪が特徴的な恐竜だ。その形から「獣脚類(じゅうきゃくるい)」と呼ばれる恐竜の仲間と早い段階で同定されている。

獣脚類とはあの有名なティラノサウルスなど、殆ど全ての肉食恐竜を含むグループ、つまりは“肉食恐竜の集団”だ。多くの獣脚類は鋭い爪を操って獲物を狩ることが知られているが、爪だけを1m近くにまで長く伸ばしたのはテリジノサウルスだけ。その使い道はいったい何なのか、狩りで獲物を倒すには長すぎるのではないかと、“謎の恐竜”として世界の研究者の興味を引き付けてきた。小林さんは、中川の化石がこの恐竜の謎に迫る手がかりになる、と言うのだ。

モンゴルのテリジノサウルスの異様に長い爪(撮影協力:御船町恐竜博物館)

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