久住:でもこれはあくまで自分たちで直接売った場合で、アマゾンで売ると、約5割、アマゾンに取られることになるそうで、これは今回初めて知ったんだけど、驚きましたね。そんなに? って。まあ、それだけの巨大なシステムですからね。
売れ行きに関しては、著作権フリー、コピーフリーでも問題はないですか?
久住:ええ、むしろおかげで売れているように思えます。「著作権登録をしない」とツイートした途端に、アマゾンの在庫がなくなりました(笑)。著作権と音楽に関して自分で色々考えた結果、こういう形にしたのですが、同じように感じていた人が沢山いた、ということじゃないでしょうか。
今後、いろいろなところで、作者も予想できないような場所で耳にしてもらえたら、23円しかもらえない著作権を主張するより売れるんじゃないでしょうか。これでやっとスタジオ代が回収できました(笑)。「いくらでもいい」と言っても、ボクらもプロフェッショナルですから、きちんと稼げなければ続けられません。
それに、印税では結局作曲者、作詞者しかギャランティできないけれど、これならば儲けをスクリーントーンズの全員で明朗に山分けできます。
今回の録音では、ドラムスを思いっきりひっぱたくような大きな音を出したり、非常に高いクオリティの音が必要な時はスタジオを使いましたが、それ以外は5人がネットを介して、お互いの演奏を重ねたり削ったりして作りました。こうなると誰がどの曲を作ったのかかなり曖昧になってくるし、それが面白いんだけれど、印税はそういう作り方を前提にしていない。JASRACに限らないけれど、音楽ビジネスの仕組みは、時代に置いていかれているところがたくさんあるんじゃないかと思います。
著作権が大活躍した時代も確かにあったけど
一方で、フリー化すると音楽で食べていける人が減って、いい作品が生まれなくなる、という意見もあります。
久住:ボクは、そういう意見は大嫌いです。
昔ね、中森明菜が全盛の頃、ワーナー・パイオニア(当時中森明菜が契約していたレコード会社)に行ったら、彼女のポスターが貼ってあって、社員の方が「我々は、この方に今年のボーナスをもらっているようなものなんです」と冗談半分に言うんです。当時「面白いことを言うなあ」と思いながら、なんかずっとそれが引っかかってたんです。よく考えると、これってある意味異常ではないですか?
何億円とプロモーションにお金をつぎ込んで、一人の歌い手さんに何十億円と稼いでいただき、たくさんの社員のボーナスも賄う。そういう時代が確かにあった。誤解されると困るのですが、著作権は無効だとか、ただ無くせとか言ってるんじゃないんですよ。
資本主義経済の中で、そういう音楽ビジネスバブルの時代があった。売れに売れて、儲かって、メジャーとインディーズのハッキリした時代があった。くやしいけど金のあるところで売ってもらえる音楽が、儲かる音楽だった。それを守るために、著作権も大活躍した。
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