久住:そこには、本当に原作のマンガを愛してくれてる、全員一丸となった熱意があったんです。ボクらも自然とそれが乗り移ったというか、正直大変だったんだけど、楽しんで音楽制作しました。打ち上げは本当に全員笑顔で「またこのメンバーでやりましょう!」と盛り上がりました。苦しかったけど、いい現場だったと思います。

そういえば毎回、ラストのコーナーで久住さんご本人が登場するのにもびっくりしました。

久住:正直、ちょっと抵抗あったんだけど「よし、みんなのために、ひと肌脱ごう」と(笑)

で、音楽CDのお話です。ギャラとしては見合わないけれど、実写の主人公を作品の世界に定着させられるであろう計算はあって、図に当たった。それだけでは「著作権フリー」とは結びつきませんよね。

久住:うん。あのね、「孤独のグルメ」を放送したテレビ東京に、音楽について打ち合わせに行ったときに、テレビ東京が窓口になって、実務としてはJASRACがやる形で著作権を登録しませんか、という話が出たんですよ。ところが、その直前にちょうどJASRACから、これまでに登録した分の代金が振り込まれて来まして。振り込み金額が23円(笑)。80円切手を貼った封書で届いた。

なるほど。

久住:JASRACに登録することにどういう意味があるのか、実はずっと考えていたので、これはいい機会なんじゃないかと。考えていた、というのは、まず、自分自身が自分の楽曲を演奏したり録音するのにも、申請や料金が発生する仕組みがよく理解できない。

 理屈はいろいろあるんでしょう。でも、僕はライブでお客さんが喜んでほしいから、「孤独のグルメ」やそのアレンジを演奏したいし、いろいろなバンドと組んでいるので、それぞれの演奏もして欲しいし、自分のCDにだって収録したい。これに自分でお金払ったり許可を求めるのって、なんだかおかしいでしょう? その不自然さに見合うメリットも、少なくとも僕にはないし。登録するメリットの有無は「10万枚以上売れるかどうか」と音楽業界の人から聞いたことがあります。

 昔は「そうは言っても、レコード会社と契約しないとお客さんに音楽を聴いてもらえない、買ってもらえない。会社がJASRACと契約すると言うなら仕方ない」だったけれど、今はもうご存じの通り、ネットで聞いてもらえるし、買ってもらえるよね。だけど当時の習慣に、なんとなく違和感を覚えつつ縛られていたんです。

 このレコードはインディーズから出しました。ですので、JASRACに登録するかどうかは僕の自由です。印税契約ではなくインディーズにしたのは、ギャランティの問題もあります。

著作権フリー化は音楽を殺すか?

ここで、印税の話をざっくりしておきましょう。歌唱印税が上代の1~3%、作詞作曲の著作権印税は、レコード会社がJASRACに使用料として上代の6%を支払って、そこからJASRACがその6%、音楽出版社が50%前後の手数料を引いて、残りが作詞作曲者の手元に入る。

 ですから、演奏して作詞作曲の場合でだいたい上限6%ですね。売れた枚数ではなく、作った枚数ベースになるところがミソです。インディーズの場合はどうなりますか?

久住:インディーズと言っても、やり方売り方は様々なので、もはやひと口には言えません。ただ原理的には、ジャケット印刷代、マスタリング代、CDプレス代、そして録音費を稼ぎだせばあとは儲けということですよね。今回、スタジオ録音費はボクが最初の1回分払って、あとは基本自宅録音ですから。500枚弱も売ればペイできるはずです。あとは会社とボク等で分けると。

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