「店まで来て、買う物を忘れた」「電子レンジの中に料理を一晩置きっぱなしにした」。年を取ると誰もが気になってくる「物忘れ」ですが、近年こうした物忘れに「血糖値」が深く関係していることがわかってきました。もともと糖は脳に欠かせないエネルギーですが、血糖値が高い状態が続くと、なぜか物忘れがしやすい状態になってしまうのです。でも今回、実は私たちの体内で作られる「インスリン」に、物忘れを改善させる効果があることが判明。物忘れや認知症を予防できる、新たな可能性が見えてきました。1分でできる物忘れのセルフチェック法や、対策のポイントなどをお伝えしました。
血糖値が高いと物忘れしやすくなる?
近年高血糖による物忘れ(認知機能の低下)が注目されています。番組ではアメリカなどに住む約3000人の糖尿病患者と認知機能との関係を調べた研究を紹介しました。その研究によると1~2か月の血糖値の平均を示すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が高い人ほど、記憶に関係するテストの成績が悪かったのです。
このような研究は今世界中で進められており、糖尿病ではなくても血糖値が高めの状態から、記憶力の低下が起きていたり、放っておくと認知症のリスクになったりすることが明らかになってきたのです。
注意してほしいのはこんな人
いったいなぜ高血糖が物忘れを引き起こすのか。その鍵を握るのがすい臓から出るインスリンです。インスリンは体の細胞に糖を取り込むよう指示を出し、血糖値を調整する役割を担っています。脳でも同様に働いていますが、食べ過ぎや運動不足などによって血糖値が高くなると、脳に届くインスリンの量が減ってしまうことがわかってきました。その結果、特に脳の中でもインスリンを必要とする記憶力や注意力に関係する機能に影響が出て、物忘れをしやすい状態になってしまうと考えられています。
血糖値に以下の特徴がある方は、高血糖が原因で物忘れが起きているかもしれません。生活習慣の見直しをお勧めします。
高血糖による物忘れをしているかもしれない人
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
65歳未満の方 5.7% 以上
65歳以上の方 6.2% 以上
※HbA1cは1~2か月の血糖値の平均を示す値です。 - 食後2時間後の血糖値 140mg/dL 以上
※食後血糖値は、市販の血糖値の検査キットなどで測定することができます。
※糖尿病の疑いのある方は、専門の病院などで検査を受けることができます。
高血糖で増えるタイプの物忘れはコレ
物忘れと一言で言っても種類はさまざま。高血糖によって影響を受けやすいのは、「作業記憶」という 、何か作業をしているときに一時的に覚えている機能が低下することで 起きる物忘れです。料理中にコンロの火を消し忘れたり、目的地に向かう途中でやることを忘れたりするのが、このタイプに当てはまります。
この物忘れが起きやすいかどうかを調べるチェック法として番組でご紹介したのが、1分間に 動物の名前をいくつ言えるかというもの。13種類以下であれば少し注意が必要です。
※知識などに個人差があるためあくまで一つの目安です。13以下の人が即危険ということではありません。
高血糖による物忘れと認知症の関係は?
最新の研究では、高血糖と認知症は密接に関係していると考えられ始めています。専門家によると、高血糖の状態が続くと神経細胞がダメージを受けます。この状態が長引くと、認知症で最も多いアルツハイマー病になってしまう可能性が高まると考えられています。血糖値が高い人は生活習慣を見直して血糖値をコントロールすることが、認知症の予防につながります。
※糖尿病の方が、必ず認知症になるわけではありません。血糖値を適切な値にコントロールすることが大切です。
※糖尿病の治療で行うインスリン注射で物忘れや認知症が改善するわけではありません。
血糖値改善で物忘れ&認知症を予防!
新潟県魚沼市では町ぐるみで糖尿病対策を行ったところ、物忘れや認知機能を示す数値が改善する人が相次ぎました。実際に改善した方々が行ったのは主にこの3つです。
- 週2~3回の適度な有酸素運動
- 適度な糖質制限
- 野菜から先に食べる
生活習慣を見直して、高血糖の状態を改善することは、物忘れや認知症を予防する上でも重要と考えられています。
※血糖値の下げすぎも脳に悪影響を及ぼします。既に糖尿病と診断されている方は必ず医師に相談してから、こうした対策を行ってください。