cat_1_issue_oa-aera oa-aera_0_lgubcg32vs9u_佐藤優、50歳以降は「積極的消極主義」のススメ 「うまく逃げる」も重要 lgubcg32vs9u lgubcg32vs9u 佐藤優、50歳以降は「積極的消極主義」のススメ 「うまく逃げる」も重要 oa-aera 0

佐藤優、50歳以降は「積極的消極主義」のススメ 「うまく逃げる」も重要

2021年8月2日 19:00 AERA/写真部・東川哲也

 長い人生、自分らしく生きるために、50歳から新たな戦略が必要だ。どのような姿勢で人生を歩めばいいのか。AERA 2021年8月2日号は、佐藤優さんに聞いた。
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 50歳を過ぎたら、肩の力を抜いた守りの姿勢で、意図的に消極的な選択をするよう心がけてみる。そんな「積極的消極主義」が非常に大切になってくると考えています。

 いま巷にあふれる50歳以降や定年後の人たちに対するメッセージには「まだまだやれる、がんばろう!」という話が多すぎるんです。体が動く限りがんばって働き続けないといけない。言われなくてもみんなわかっています。でも、もうこの先はがんばりすぎても、積極的に「新しい挑戦」に打って出たりしても、ろくなことはありません。

 たとえば50を過ぎてから、それまで手掛けたことのない新分野のプロジェクトチームで責任者をやってくれ、などという話には決して喜んで飛びつかないことです。そういう話はたいてい筋の悪い案件だったりで、あなたが選ばれたのは責任を取ってほしいから。そういう「組織のずるさ」も知り、消極主義でうまく逃げることが重要です。

 私は最近、イソップ物語の「酸っぱい葡萄」に出てくるキツネのことをよく考えるんです。腹を空かせたキツネが、木になった葡萄の実を取ろうとするけれど、届かない。キツネは「この葡萄は酸っぱいんだ」と捨て台詞を残して立ち去ります。負け惜しみを言うみっともないキツネ、というとらえられ方が一般的です。

 でもよく考えると肉食獣のキツネは葡萄を食べても栄養になりません。届かないものをいつまでもめざしているより、別のものを狙った方がいいはず。同じことが人間の50歳にも言えると思うんです。

 会社で働くなかには必ず、競争があります。その中で、組織の上位層に行ける人かそうでないか、というところは50歳を過ぎると必ず見えてきます。そしてその見通しに「逆転」はまずありえません。そうであるなら、「酸っぱい葡萄」のキツネのように見切りをつけて、別の生き方へと転身していく。別の自分の居場所を見つけていく。それができるなら捨て台詞くらい言ったっていい。このキツネのような生き方の方が素敵なんじゃないかと感じます。

 さらに、自分の中で「お金と役職を基準にすること」に、もう見切りをつける。たとえば50代での役職定年や、60歳で再雇用になったとき、給料が減ったり、部下だった人間が相談に来ないどころか挨拶もしなかったりすることをいちいち気に病んで、鬱(うつ)っぽくなってしまう人がとても多いんです。そうならないためにも、遅くても45歳頃から、「(見切りをつけて)逃げ出してもいいんだよ」ということを自分に言い聞かせるイメージトレーニングを始めておくことも、重要だと思います。
【有働アナに対してムキになって…「菅首相」の“野心”が見えた瞬間 池上彰と佐藤優が語る】
※AERA 2021年8月2日号

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羽生結弦が6年ぶりに「ドリーム・オン・アイス」復帰 「必ず4回転半決める」と今季の決意語る

2021年8月2日 19:00 AERA/(c)朝日新聞社

 羽生結弦が6年ぶりに「ドリーム・オン・アイス」に帰ってきた。出演を決めたのは、ファンへの熱い思いだという。繊細かつ全力の演技で、冒頭から観客を羽生ワールドに引き込んだ。AERA 2021年8月2日号では、北京五輪を控えた羽生選手の現在を取材した。
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 羽生結弦(26)の「夢」に挑むシーズンが幕を開けた。

 7月9~11日に横浜市で行われたアイスショー「ドリーム・オン・アイス2021」。羽生が口にしたのは、五輪3連覇ではなく、前人未到の大技への決意だった。

 羽生がドリーム・オン・アイスに出演するのは6年ぶり。決め手となったのは、ファンへの思いだった。

「昨年はアイスショーがなくて、もっと皆さんの前で滑りたかった。昨シーズン、試合に出るたびに、演技することで誰かの役に立つんじゃないかと、何かを感じて頂けるんじゃないかと思いました。そういうことを少しでもやりたいと思い、出させて頂きました」

■激しい滑りに気迫十分

 報道陣に公開された9日の公演。オープニングはTシャツとジーンズの爽やかな姿で観客の視線を集めると、大トリでの出番では一転、黒と赤の衣装を身にまとい、ロックナンバー「マスカレイド」を披露した。

「なかなか演じられる機会がなかったですし、大人になってもっと表現したいこともあって。客観的に感じてもらえることがこの世の中だからこそ増えたのではと思い、選びました」

 冒頭から、その世界観に引き込んだ。滑り出しは勢いよく。その後の落ち着いた曲調のパートでは、繊細な指先の動きを伴う振り付けを見せる。

 中盤に高さのあるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させると、滑りは激しさを増した。気迫のこもった表情を見せながらスピード感のあるスピンへ。手袋を氷上に投げてフィニッシュ。熱のこもった演技で、観客のスタンディングオベーションを浴びた。

 終演の後、取材に対応した羽生はこのアイスショーに合わせて、入念に調整してきたことを明かした。

「かなり体を作って、焦点を絞って練習をしなければいけないと思っていました」

 自分のプログラムはもちろん、オープニングやフィナーレでも一挙手一投足が注目される立場。全力の演技で責任を果たすという思いが表れていた。

 ここからは、実戦に向けての本格的な準備が始まる。他の選手たちが来年2月に控える北京五輪への思いを語ったなか、3連覇がかかる王者は異なる心境を明かした。

「(17~18年の)平昌シーズンみたいに絶対に金メダルをとりたいという気持ちはありません」

 そして、こう続けた。

「ただ今季、必ず4回転半を決めるんだという強い意思はあります。しっかりと、その意思を、決意を持って、今季に臨みたいと思います」

 これまで語ってきたように、最大の目標がクワッドアクセル(4回転半)成功であることを改めて強調し、五輪はその「道の中にあるのであれば」と話すにとどめた。

 大技に向き合う現在の状況も説明した。

「体をいたわりつつ、アクセルの基礎の練習、一から4回転半に向けて作り直す作業をしっかりできたので、これから本格的に練習していきたいと思います」

 新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、拠点のカナダに移動することはなく、昨季と同じように国内でコーチ不在のまま練習に励む予定だ。決して、簡単な道のりではないが、自信はある。

「昨季の経験を踏まえて、日本で一人で練習しても成長できると感じているので」

■リモートで振り付け

 今季のショートプログラム(SP)は新しいものに取り組む。振り付けはリモートで行うという。

 そして、フリー「天と地と」は継続し、その冒頭にクワッドアクセルを組み込むことを想定している。

 昨季欠場したグランプリ(GP)シリーズにエントリーし、11月のNHK杯(東京)とロシア杯に出場すると決めたのも、この技を念頭に置いてのものだった。

「試合の機会がないと、やはり4回転半を決めても意味がないと思います。試合で決めたいという気持ちが強くあって、その機会を少しでも持てたらと思い、GPシリーズに出場させて頂くことに決めました」

 何度も口にしたクワッドアクセルへの思い。昨季は「あと8分の1回転」で着氷できるところまで迫っていることを明かしていた。その差を埋めるのはどれだけ難しいことなのか。

■決してあきらめない心

 幼少期の羽生を指導した山田真実コーチ(47)は「今は回転不足が厳しく取られてしまう時代。8分の1と言っても、そこを縮めるのにはとても時間と労力がかかる。さらにけがをせず、練習に耐えられる体を作るのも本当に大変なことでしょう」と思いやる。

 それでも、決して諦めない心中を山田さんはこう察する。

「誰が何を言っても、彼はやると決めたらやる。すでに色々なことができるからこそ、新しいことをやりたいと思うのでしょう。『挑戦』に価値を求めている選手ですから」

 マスカレイドの演技前、羽生の肉声メッセージが会場に流れた。

「今シーズンは、自分の最大の夢に向かって、全力で努力していきます」

 競技人生をかけた目標へ。羽生は挑み続ける。(朝日新聞スポーツ部・岩佐友)
【「目標は五輪金ではなく、4回転半」 羽生結弦が挑む前人未到の大技】
※AERA 2021年8月2日号

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声帯手術に膝骨折リハビリ…LiLiCo、50歳で初ミュージカルまでの道のり

2021年8月2日 19:00 AERA/写真・本人提供

 長い人生、自分らしく生きるために、50歳から新たな戦略が必要になる。とはいえ、多くの人は、思い切った行動を取るのは難しいはずだが、中には長年の夢をかなえた人もいる。50歳でミュージカルの舞台に立った映画コメンテーターのLiLiCoさんだ。そのポジティブな姿勢を参考にしたい。AERA 2021年8月2日号は、50歳の初挑戦に迫った。
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「ミュージカルは10歳の頃からの夢。50歳で実現したいとずっと思っていました」

 22歳で歌手としてデビュー、現在は映画コメンテーターとしても活躍するLiLiCo(50)。今年3月から上演された「ウェイトレス」で、初のミュージカルに挑戦した。なぜ、「50歳」だったのか。

「若い頃から、顔かたちも身体も『ミュージカルに向いてる』と言われ続け、自分でもそう思ってました。ただ30歳から始めても、その世代に合う役柄はきれいで歌のうまいライバルがたくさんいる(笑)。でも前田美波里さんや中尾ミエさんや森公美子さんのように、50歳くらいに合った『強烈なキャラクター』を演じられる人って、日本ではそれほど多くない。そんな戦略的な考えもありました」

 一方で、すでに40歳頃から「50歳でミュージカルやりたい」をできるだけ、「口に出す」ようにしてきたという。

「夢って、自分の心にしまっておいてもかなわない。今回も『50歳でミュージカルを』と話す私の記事を読んだ『ウェイトレス』のプロデューサーが声をかけてくれた。夢は口に出す。これ大切です」

■これまでの50年は貯金

 50歳の初挑戦。しかし、事は簡単に進まない。オーディションの際、「このままでは長丁場のミュージカルに適応できないかも」と、声帯をいちど診てもらうよう勧められたという。

「診てもらったらボロボロで。『ウェイトレス』がなかったら私、手術はしなかった。歌手LiLiCoは酒焼けのハスキーボイスでOKでしょ、と。でも、それまで何でも自分で決めて乗り越えてきたけど、このときはふと、『たまには人の言うことを聞こう』と思ったんです」

 昨年8月、人生初である声帯の手術を何とか乗り切ったLiLiCoだったが、その2日後、今度は転倒し、膝を骨折する大けが。また手術となった。

「ああ、ミュージカルの話、飛んだなと天を仰ぎましたよ。でもその後、リハビリの先生が『50歳になって、転んで膝折ったのにミュージカルやったら、超かっこよくない?』と(笑)。夢って、目標ですよね。絶対にあの舞台に立ちたい。その思いが原動力になって、痛くてつらいリハビリも乗り切りました」

 稽古期間中の約2カ月はお酒もやめた。「あのとき舞台でうまくいかなかったのは前日に飲んだからだ」とは絶対に思いたくなかったからだと言う。

「週8で飲んだくれていた人間ですよ。やめたのは自分でも信じられないけど、お酒で失敗するようでは舞台に失礼だなと」

 ただ、その稽古は「本当につらかった」と言う。キャストの中でミュージカル経験がないのは自分だけ。バラエティー番組では、リハーサルでは流れの確認だけで「本番でやります」が口癖だが、ミュージカルでは稽古場から全力。その違いからして戸惑った。稽古では演出家に「LiLiCoさん、日に日に身長が縮んでいくんですけど大丈夫ですか?」と心配されるほど、周囲に気を使った。

「そんなとき、ある舞台関係者が『舞台に上がったら(ビギナーも経験者も)みんな同じだよ』と。その言葉は大きかった。勇気をもらえました」

 公演は成功をおさめ、夢はかなった。今後もミュージカルには挑戦したいと考えている。

「何事も、20年がんばって初めて『がんばった』と言えると思う。今後もミュージカルを続けて、70歳でも役が来たときに初めて、『がんばった』と言っていいかなと思います」

 悩める50歳にエールを、最後にそうお願いすると「50でなぜ悩むの、まだ人生半分だよ!」と笑い、こう続けた。

「これまでの50年は貯金。その間にした失敗も含めて、それを生かしてやっと花を咲かせられる。そんな年齢だと思います。大切なのは、自分で考えて、『ちゃんと生きる』こと。そうすれば人生、素敵なことがたくさんある。これからですよ!」

(構成/編集部・小長光哲郎)
【50歳になったら“脱・会社優先” 「組織人」から「私人」になるリハビリを】
※AERA 2021年8月2日号

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柳楽優弥×有村架純「つながっていると伝えたかった」三浦春馬との撮影秘話明かす

2021年8月2日 19:00 AERA/撮影・伊ケ崎忍

 太平洋戦争時、日本でも原子爆弾が研究されていた──。「映画 太陽の子」は、知られざる史実を背景に、3人の若者が抱く葛藤と希望を描く。本作に出演する柳楽優弥さんと有村架純さんが、印象に残ったシーンや映画を通して感じたことなどを語り合った。AERA 2021年8月2日号から。
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――「映画 太陽の子」の舞台は、太平洋戦争の終戦が迫る1945年の夏だ。切迫する戦局の中で、柳楽優弥演じる京都帝国大学の学徒、石村修は、原子核爆弾の開発に没頭している。建物疎開で家を取り壊され、修の家に身を寄せる幼馴染み・朝倉世津を有村架純が、修の弟で陸軍下士官の石村裕之を故・三浦春馬が演じた。

■素の時間と重なった

柳楽:監督の黒崎博さんが偶然目にした若き科学者の手記が、この物語のベースになっています。太平洋戦争中に、日本でも原子の力を利用した新型爆弾が研究されていたんだと、はじめて知る事実がたくさんありました。それを僕たち若い世代の俳優が伝えていくことの大切さを最初に感じました。

有村:それまでは被爆国としての歴史しか頭になかったので、この作品が背負う意味を、私も重く受け止めました。

柳楽:映画では、戦時中でも若者たちがそれぞれに青春をまっとうした姿が描かれます。同年代の俳優仲間である、架純ちゃん、春馬くんとの素の時間とも重なっていたと思います。

有村:私もキャストのお名前を聞いた時、柳楽さん、三浦さんの幼馴染みを演じられるということで、特別な時間になる予感がありました。

――戦時下という、現在と違う時間を、若い俳優たちはどうとらえたのだろうか。

柳楽:僕はどうしたら自分が物理学の研究者に見えるのか、そこからの出発でした。監督に勉強会を開いていただき、京大に残る研究所を訪ねたりしながら、いろいろ学びました。修は共感しやすいキャラクターではないんです。家族や幼馴染みとの絆はあるけど、戦争が進む中で原爆研究しか目に入らなくなっていく。普通に明るい青年が、知らず知らずに精神を崩していく感じが怖いんです。

有村:観ていただける方に一番近い存在は、たぶん世津だと思います。私も自分なりに過去のインタビューなどを調べていたのですが、ある女性兵士の話が印象に残りました。毎日、爆弾が落ちて、誰かが死んでいくけれど、美しい空、美しい朝は変わらぬままだったという話で、それが残酷で、同時に救いにもつながる気がしました。

柳楽:撮影は2019年9月、10月で、コロナ禍前でしたが、映画の内容はいまのコロナの状況にも通じますよね。何が本当かわからず、人々が世の中のムードにのみ込まれていく。この時代の修もそうです。それでもみんな毎日本気で、必死に前を向いていた。それが、この作品のよさで、時代が違っていても、共感していただけるところではないかな、と思います。

■よくご飯に行った

――映画では男性たちが戦争の狂気にとらわれる一方、女性は感情を押し殺し、冷静に現実を見据えている。

有村:日々、状況が荒れていく中で、生き抜くと決意しても、次の日はもうだめだと絶望する。世津はそういう葛藤をずっとのみ込みながら、未来を見つめて負けないでいる。ただ、3人で行った想い出の海で、抱えていた感情が爆発してしまうシーンがあるんです。

柳楽:あのシーンは夜明けの海で1回しか撮れない場面だったから、舞台みたいに緊張しました。実際、想定よりも天候が荒れて、演技どころじゃなかったんです。カットがかかった後はバタンと倒れて、しばらく動けなかった。その分、迫真のシーンになりましたけど。

――撮影中、お互いの芝居について話しあうことは少なかった。

有村:私たちは、お芝居のやり取りについては、あまり話さなかったんです。その代わり、よくご飯を食べに行きました。

柳楽:京都ロケで食べた焼き肉、おいしかったね。あと、のれんをくいっと開けて入っていく“ザ・京都”みたいな割烹屋さんとか。僕は架純ちゃんといると、ちょっと居心地がよくて。春馬くんとは10代からオーディションで競い合ってきた仲だし、架純ちゃんとも共演があったし。

有村:柳楽さん、三浦さんとは、最初から幼馴染みのような関係性ができていた感じで、現場は穏やかで楽しかったです。

■本当につながったな

――そんな俳優たちの息がぴったりと合ったシーンが、縁側で修と裕之が盃を交わす場面だ。

有村:ある夜、兄弟の真ん中に私がいて、3人で話をするんです。世津は「戦争が終わったら」と、未来を語ります。台本にはなかったのですが、その時、二人の手を取りたいなあと思ったんです。どうにかして、私たちがつながっていることを伝えたかった。

柳楽:最初に裕之の手を取ったんだよね。「お、いいな。で、俺の手も?」ってドキドキしてたんだけど。

有村:修の手もちゃんと取りましたよ(笑)。

柳楽:一瞬、驚いた後に、本当につながったな、と感じました。

有村:あの時代を過ごしていた人たちが、「生きる」という選択をしてくれたから、歴史がつながって、自分たちがいま、ここにいる。この作品をきっかけに、そのことを大事に考えていこうと思っています。

――映画の完成披露上映会の舞台挨拶で、柳楽は、三浦との時間を「これからも愛して大切にしていきたい」と、オマージュを捧げた。

柳楽:僕にとって本当に特別な作品。その思いとは別に、自分たちが未来のために、どのような選択をするか。10代、20代の人たちに、ぜひ観てもらいたい映画です。

(構成/ジャーナリスト・清野由美)
【コロナ禍で「飢餓のパンデミック」の恐れ ノーベル平和賞受賞のWFPが危機を訴える】
※AERA 2021年8月2日号

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50歳になったら“脱・会社優先” 「組織人」から「私人」になるリハビリを

2021年7月30日 19:00 AERA

 仕事や会社中心で50歳を迎えると、限界を感じ、壁にぶつかることがある。仕事とどう向き合い、どう働けばいいか。AERA 2021年8月2日号は「50歳からの戦略」特集。

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「この先、55歳になれば役職定年で給料は減額、出向する可能性だってある。もうあまり無理はしないつもりです」

 こう話すのは、埼玉県に住む会社員の男性(48)だ。中途入社のため、もともと出世には期待していなかったが、実際に年下の上司も増えてくるなか、むなしい思いがあると言う。

「定年までしがみついているとは思います。でも最低限、自分のやるべき業務をきちんとこなすだけ。50歳を前にそう考えるようになりました」

 これからの50代はその上世代とは違うと話すのは、企業研修などを展開するエマメイコーポレーション代表取締役の大塚寿さん(59)だ。

「いま65歳以上の人たちは、年金も最初から満額もらえたり、退職金も潤沢。会社員として申し分ない『上がり』でした。でもいまの50代は、『失われた30年』を経て、給料はぜんぜん上がらない。さらに、以前は課長代理だ、副部長だ、担当部長だとたくさんあったポストも、組織がフラットになり、約7割が課長にすらなれません」

 会社があてにならないのは、いまの40代以下はもっと顕著だ。多くの会社員の場合、出世争いは実質40代で決まり、50歳を迎えると、漠然とした不安が焦りに変わる。

「私の会社員人生って何だったんだろう、こんなはずではなかった、と立ち止まらざるをえない。それが50歳です」(大塚さん)


■「会社優先」からの脱却

 フィールドワークとして数多くの会社員にインタビューしてきた健康社会学者の河合薫さん(55)もやはり、50代で大きな節目があるという。

「自分ではまだ若いつもりだった人も、会社から突然、役職定年などで『実年齢』を突き付けられる。がんばって積み上げてきたものは後輩育成を名目に奪われ、崖から突き落とされる。現実を受け入れるのは簡単なことではありません」

 そんな危機から、どう抜け出すか。河合さんは「開き直れるかどうか」を挙げる。

 役職なんて贅肉みたいなもの。なくなることは「強制からの解放」と考え、もう好きなことをやろう、と。そして少しだけ他人に役立つこと、たとえば朝一番に出社し、掃除をしたり、後輩が困っていたら、自分の経験や技術をさりげなく伝え、縁の下で支えたりする。

「『自分の半径3メートル以内』の人たちに、いかに溶け込んでいけるか。そのことで年下社員との距離感が縮まり、結果的に職場で居場所を獲得していける人もいます」(河合さん)

 前出の大塚さんは、突きつけられた現実を「会社から自分へ人生の主導権を取り戻す」きっかけにしては、と話す。

「もう、『何事も会社優先』から脱却することです。ときには会社の言うことにも従わず、ある意味わがままになってみる。50歳になったら、会社人間という『組織人』から、自分という『私人』の人生を取り戻す。取り戻せるのは定年後だとしても、そのリハビリを始めるんです」

 冒頭の48歳の男性も、会社の仕事からは一歩身を引きつつ、リハビリを着々と始めている。

「組織を『卒業』した定年後も働く。そのために、50代はマンション管理士やドローンの操縦免許など、年齢に関係なく役に立ちそうな資格取得に努めたい。仕事の傍ら、通信教育を受け始めています」

 組織から飛び出した人もいる。神奈川県に住む女性(46)は、約20年間「天職」とさえ思っていた小学校教師を辞め、今年4月からフリーランスになった。一昨年、別の組織に管理職として異動し、やりがいがなくなったことがきっかけだった。


■幸福度は爆上がり

「娘が大学進学を機に家を離れ、子育ても一段落。70代の両親はまだ元気。動くなら今がチャンス!と、安定した公務員から転身しました。向いてないことを続けるほど人生長くない」

 昨年夏からオンライン講座で、仕事に生かせる新しい技術を学び、それを生かす仕事や、ベビーシッター兼家庭教師の仕事も請け負っている。

「フルタイムの仕事を辞めたことで収入は減りましたが、自分の時間もできましたし、幸福度は爆上がり、ですね」

 仕事の時間や収入が減っても、幸福。前出の河合さんは、本当の幸せとは、「仕事・家庭・健康という三つのボールがジャグリングのように順調に回っていること」だと話す。

「自身の体力の衰えを感じたり、親が年老いて介護のことを考える必要が出てきたり。50歳の不安や危機感は、三つのジャグリングがより難しくなること。そんななか『自分のやりたいこと』に、勇気を出して一歩、踏み出してみる。そして組織や役職を取っ払った一人の人間として、楽しんでみる。そこで得られる気づきでまた一歩、前に進めると思います」

(編集部・小長光哲郎)

【「大減収時代」に年収100万円アップ! コロナ禍の転職でも引く手あまたの職種とは?】

※AERA 2021年8月2日号より抜粋

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映画「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」の青山真也監督。開会式にみる「失望と矛盾」

2021年7月30日 19:00 AERA

 直前まで様々な問題が噴出していた東京五輪の開会式。当日は波乱なく終わったが、この式典を映画監督の青山真也さんはどう見たのか。AERA 2021年8月2日号でインタビューした。

*  *  *
 2014年から3年間にわたり、国立競技場の建て替えによって移転を強いられた都営霞ケ丘アパートの住人の生活を撮り続けました。大切なコミュニティーを引き裂かれ、命がけで立ち退いた高齢者がいる中で五輪開催が強行されたことに、今も強い疑問を持っています。

 正直に言えば、開会式も競技も見たくない。でも、現に様々な問題が起こっていて、これからも問題が起こるかもしれないこの東京五輪を、最後まで見届ける必要があるのではないかと思い直しました。

 私の心にとくに引っかかった場面が三つあります。

 まず、もっとも目と心を奪われたのは、聖火台に聖火をともす最後の場面です。吉田沙保里さんと野村忠宏さんが競技場内に聖火を持ち込み、長嶋茂雄さん、王貞治さん、松井秀喜さんに渡す。そして医療従事者、パラトライアスロンの土田和歌子選手、被災地の子どもたちにつながれ、最後のランナーとなったのは大坂なおみ選手でした。

 BLMの問題に言及したり、スポーツ選手のメンタルケアに配慮すべきだというメッセージを発信したりしてきた大坂選手。非常にいい人選だったと思います。でも同時に、この場面だけでダイバーシティーを語ろうとしているようにも見えて、複雑な思いになりました。


■人選が象徴する矛盾

 選手入場の際に「ドラゴンクエスト」のテーマ曲が演奏されました。作曲したすぎやまこういち氏は、LGBTの人たちに対する差別的な主張をした杉田水脈議員に共感するコメントをした人物です。「多様性を認めよう」「心を一つに」と言い、直前に小山田圭吾、小林賢太郎の両氏を外しながらも、なぜ彼の曲を採用したのでしょうか。出場選手の中にもLGBTの人はいますし、この世界で生きるすべての人に対して開かれた大会であるべきです。

 次に印象に残ったのは、森山未來さんが登場した場面。コロナ禍で亡くなった方やミュンヘン五輪で亡くなったイスラエル選手団に対して捧げた鎮魂の舞踏でした。森山さんは今年6~7月に上演された舞台「未練の幽霊と怪物」で、新国立競技場の設計者として脚光を浴び、後に撤回された建築家、故ザハ・ハディド氏の霊を演じています。また彼が出演した大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」は、政治家がパフォーマンスの道具として五輪を利用することを批判し、スポーツビジネスとして過度に膨れ上がる現在の五輪のあり方にも厳しい視線を送っているような作品でした。そんな彼のシーンは様々な方向から語るべき意味や価値のあるものだったと思います。

 三つ目は、各国の選手たちの入場行進です。先頭のギリシャに続いて2番目に入場したのは、戦乱が続くアフガニスタンや内戦下のシリアなど、11カ国出身の29人で結成された難民選手団でした。

 その一方で、日本が難民(認定申請者)に対して強硬な態度をとっていることは知っておく必要があるでしょう。五輪を安心安全に開催するという名目で外国人取り締まりが強化され、入管の収容所に長期間拘束されている人もいます。入管施設で命を落としたスリランカ人女性のことは大きく報じられましたが、この死亡事件と五輪は無関係とは言えないと考えてよいと思います。

 私は心から難民選手団の活躍を願っていますが、「努力をして心清くスポーツに励む若者=難民」というイメージが固定化されないことを切に願います。

(構成/編集部・藤井直樹)

【浜矩子「一部の日本人の無知・無魂・無涙が、五輪開会式の醜聞を生んだ」】

※AERA 2021年8月2日号

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しし座は“独立自営業者” ストレスにならない人との距離を保って自分だけの時間をアドバイス

2021年7月30日 19:00 AERA

 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

*  *  *
Q:3年前に東京から地方へ引っ越し、義理の両親と同居しています。うまくやっていると思いますが、常に気を使うし、嫁として今こうすべきか、など考えて疲れてしまいました。自分ばっかり大変、の気持ちが大きくなってきてイライラと不満が。更年期かもしれません。こんな私にアドバイスお願いします。(女性/自営業/40歳/しし座)

A:しし座は12星座の中でも一番と言っていいほど「独立自営業者」的な人たちです。仕事もプライベートも「管理されない時間」が必要で、一挙手一投足を24時間管理される状況に置かれるとどんどん弱っていってしまいます。元気なしし座の人って、ぷらっとアフリカに行ったり、お菓子教室に参加したり。子どもの自由時間みたいな、どこにも報告しない自分だけの時間を持っていることが多いです。

 すごく気を使えるから、接待をするのも得意です。よく気づいてくれて、一流ホテル並みの完璧な接待をしてくれる。相手が喜ぶようなパフォーマンスを発揮することができるのがしし座なんです。

 ただやっぱり“サービス”をやり続けるとストレスにはなります。

「人との距離感」は、ストレスの原因第1位と言っても過言ではありません。改善していくための第一歩として、自分にとっての「距離感」のストレスを知ることです。人と向き合うって、やっぱりどこかでサービスが入ってしまう。ドライな言い方になっちゃいますが、自分が「得られるものがない」時間というんですかね。刺激とか知識とか、自分にとっての面白さがない単なるサービス提供であるなら、それは金銭を受け取るべき時間です。


 自分の限界って、仕事ができる人や優しい人ほど気づけない人が多いように思います。「疲れてない?」って聞いても、「まあ疲れるけどみんな疲れてるから」と回答できてしまうから。優しくて気が回る人、仕事ができる人ほど、ブレーキをかけられない面を持っています。自分のモヤモヤとか不安の芽を早期の段階で摘んでおくことができるのは、仕事ができる人や生産性が高い人の特徴ですが、でもその「感づく」「気づく」力をどこかで抜いて、完璧じゃないものと共存する訓練も、現代人には必要になっている気がするんですよね。

 自分の限界を知るためには「10年先までこれをやり続けることができるか」という設定にしてみると、気づきやすいかもしれません。そこで「あ、ちょっと難しいかも」と思ったことは、断捨離リストに入れて。断捨離が無理でも、ちょっと軽減していく。少しサボったり、密度を減らす、時間を減らす、接触を減らすみたいな感じでやっていくのがいいです。

 できたらこれから先、「3年に1回だけは正月を両親と過ごさない」とか、そういう新しいプランニングに挑戦してみてもいいのではないでしょうか。

●しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気

【相性が合わない人へ、憎しみの手前でブレーキをかけるコツは…しいたけ.さんがアドバイス】

※AERA 2021年8月2日号

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コロナ休校で広がる教育格差 0点取っても「塾に行かせる余裕ない」 とり残される低所得家庭の子ども

2021年7月30日 19:00 AERA

 昨春の新型コロナウイルスでの休校期間は、子どもたちの学習にどんな影響を与えたのか。特にどんな家庭に影響が大きかったのか。大規模な調査結果が出た。AERA 2021年8月2日号の記事を紹介する。

*  *  *
 新型コロナウイルスは、子どもたちの学びの機会を奪った。一見、それはみんなが「平等」に奪われたようにみえるが、度合いには差があるようだ。

 関東地方に住む女性(51)は、高校生と小学生の3人の子どもを育てるシングルマザー。このところ、小6の長男(12)の成績が悩みの種だ。

 授業についていけなくなった長男が、漢字テストなどで0点を取ってくるようになった。

「もともと成績はいい方ではないけど、明らかに学力が低下している。0点だなんて、(ドラえもんの)のび太じゃないんだから」

 勉強の遅れが気になり始めたのは、昨春の一斉休校がきっかけだ。休校中はドリルを30分程度やる以外、1日のほとんどをゲームに費やした。


 女性は当時、病気のために仕事をやめたばかり。食費をどう工面するかなど日々の生活に精いっぱいで、勉強を教える余裕はなかった。

 学校再開後は、休校の遅れを取り戻すために授業のスピードが上がった。わからないまま授業は進んでいく。だからなのか、帰宅後はゲームを始め、寝るまで離さない。コロナ前よりもゲーム時間は延びた。「依存症みたいになっているよ」。女性が声をかけても耳を貸さない。

 以前は、学校で放課後にボランティアから勉強のフォローを受ける「寺子屋」と呼ばれる場があった。だが、感染拡大を防ぐために中止になり、いまだに再開されていない。

「寺子屋で勉強時間が確保できていたのに。塾に行かせる経済的余裕はないし、ありがたかったのですが……」

 長男は来年、中学生だ。今よりお金もかかるため、とにかく経済面と学習面が心配だという。現在、女性は求職中だが、今の体調ではできる仕事が限られ、コロナで求人も減っている。再就職は難しそうだという。

「まずは経済的に安定しなければ。ただ、再就職できても塾に行かせる余裕はない。どうすればいいのでしょうか」


■親が勉強を見られるか 休校中は直接「差」が出た

 コロナの拡大前と、全国的な臨時休校期間中について、子どもの平日の勉強時間を比べると、年収800万円以上は1.1時間減だが、400万円未満は1.5時間減った──。

 こんな調査結果を6月、日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表した。データは全国の小学生から高校生の子どもがいる世帯の親4千人から集めた。

 調査では、臨時休校前(昨年1月)と全国的な休校中(昨年5月)に加え、休校後(今年1月)の勉強時間も調べた。すると、年収400万円以上の世帯は休校前よりも、休校後は勉強時間を増やしたが、400万円未満の世帯は休校前の水準に戻っただけだった。もともと、年収ごとに勉強時間の「差」は存在していたが、休校を経てそれは拡大したようだ。

 さらに、世帯類型で切り取ると、ひとり親世帯に大きな影響が出たことがわかった。休校前から休校期間の減少幅は、夫婦世帯や三世代世帯はそれぞれ1.3時間だった一方、ひとり親世帯は1.6時間だった。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林庸平・主任研究員は「調査は年収にフォーカスしているというより、より厳しい状況に置かれた子どもたちの状況を捉えたい趣旨だった」と前置きしたうえで、こう指摘する。

「休校期間中はオンライン学習も進んだ。さらに、タブレット端末があるかなど家庭のIT環境は収入と相関するのでそれも影響したのだろう。さらに、昨年行った調査の分析では、『親が子どもの面倒を見てあげられているかどうか』ということが大きく影響を与えていることもわかった。親が勉強や生活を細かく見てあげられているかの差が、休校下では直接的に出たのではないか」

■スクリーンタイムの制限 親も一緒にルールを作る

 ただ、各調査項目の増減幅を比較しても、その差は1日あたり数分から数十分だ。これをどう捉えればいいのか。

「休校期間が一番格差が広がっていた。しかし、休校が終わっても完全には戻りきらなかった。1日で見たらわずかでも、その差を足し上げれば大きい。早めにそうした子どもたちに支援策を進めないといけない」(小林さん)

 また、この調査は勉強以外でテレビやゲーム、携帯電話を使う時間を示す「スクリーンタイム」についてもアンケートをとった。世帯類型別にみると、もともとコロナ前からひとり親世帯は高水準にあったが、休校期間の増加幅は夫婦世帯の0.8時間増に対して、1.2時間増となり、大きかった。ここにも、親の関与の度合いが影響しているとみられる。


 勉強時間の確保とも密接にかかわるスクリーンタイム。親はどう向き合えばいいのだろうか。小児科医の半谷まゆみさんに尋ねた。

 所属する国立成育医療研究センターで半谷さんらが行ったアンケートによると、勉強を除いた子どもたちのスクリーンタイムは、コロナ前より長くなっている。1日4~6時間という子も多く、それ以上というケースもあるそうだ。そのうえでこう指摘する。

「生活を見直すには、子どもだけではなく、家族で一緒にルールを作れるといい。食卓ではスマホを触らない、寝室に持ち込まないといった決まりを作り、親も一緒に取り組む姿勢を見せることで、子どもに響くこともある」

 まずは大人が変わることが第一歩のようだ。さらに、こんなアドバイスも。

「小さい子では、時間を区切るうえで子ども自身に選択させるのが良い方法です。『どの番組を見るか決めていいから、それで終わりにしようね』などと交渉をしかけて、本人に選んでもらうと納得しやすいかもしれません」

 スクリーンタイムの増加はなぜ問題なのか。半谷さんがまず挙げたのが視力への影響だ。さらに、就寝時間の遅れや集中力の低下を招く可能性もある。ゲーム依存症のようになれば、医療機関との連携も必要になるという。最後にこんな提言をしてくれた。

「スクリーンタイムによる負の影響から守るには、子どもにわかりやすく説明し、親も一緒に取り組む努力が必要。また、行政には子どもも含めた啓発に力を入れてほしいと思います」

(朝日新聞記者・岩沢志気、松本千聖、田渕紫織)

【ホームレス生活10年、一番つらいのは「そういう目」】

※AERA 2021年8月2日号より抜粋

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俳優・塩野瑛久「人生は一回。踏み出さないのはもったいない」 自分の足を動かす哲学

2021年7月30日 19:00 AERA

「HiGH&LOW THE WORST」の不良役で、ネクストブレーク俳優として注目されるようになった、俳優の塩野瑛久さんがAERAに登場。今年でデビュー10年目を迎えた彼に、現在の思いを語った。AERA2021年8月2日号から。

*  *  *
 撮影は温かな空気感に包まれていた。

「見た人が全員目を奪われるような、すごいのを撮ろう!」

 本誌表紙フォトグラファー、蜷川実花が楽しげに気合を入れた。二人は以前から交流があるが、仕事としてタッグを組むのは初だ。

「目標でした。かなったことがうれしい」

 2年前に出演した映画「HiGH&LOW THE WORST」で、金髪ハーフアップに青いサングラス姿の不良、小田島有剣を外連味(げれんみ)たっぷりに演じ「ネクストブレーク俳優」と目されるようになった。クセの強い役にも果敢に挑み、デビュー10年目を迎えた今年は原点に戻って演技に向き合いたいと、それまで所属していた事務所を退所。さらなる挑戦に踏み出している。

「気も使うし腰が重い時もあるけど、なるべく素直に自分の足を動かしたい。それでダメなら、諦めもつくので」

 蜷川との縁もその精神で引き寄せた。仕事で訪れた撮影所で、たまたま蜷川組も撮影中だった。面識はないが、インスタグラムで相互フォローだった蜷川に「見学に行ってもいいですか」とDMを送った。「でも、そんなことをしたのは、ほぼ初めて。実花さんの映画を見て、柔軟に受け入れてくれる人だと感じたからできたことです」

 8月からは「来世ではちゃんとします2」に出演する。性依存系女子、BLオタク、風俗ガチ恋など、あらゆるこじらせ男女を描く。前作に続き、主人公・大森桃江(内田理央)のセフレで本命の、SM好き商社マン・Aくんを演じる。

「きっと誰もが何かをこじらせている。僕もそうです(笑)。必死で生きている人に寄り添う、みんなが愛おしくなるドラマ。共感しながら楽しんでもらえたら」


 ドラマにちなみ、「来世でちゃんとしたいことは?」と尋ねると、「ない」と答えた。思いは現世でかなえたい。

「人生は一回。可能性があるのに、踏み出さないのはもったいない」

 その言葉の通り、まっすぐに生きている。

(ライター・大道絵里子)

【「すごい! 背中が光ってる」 黒羽麻璃央の魅惑の美背中と真っすぐな願い】

※AERA 2021年8月2日号

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ウルフ・アロン「愚直にここまでやってきたよかった」柔道男子100キロ級で日本勢21年ぶり「金」

2021年7月30日 19:00 AERA

 東京五輪は7月29日、日本武道館で柔道男子100キロ級があり、2017年世界選手権優勝のウルフ・アロン(24)が金メダルを獲得した。日本勢の同階級制覇は00年シドニー五輪の井上康生・日本男子監督(43)以来、21年ぶり。

*  *  *
 ウルフは決勝で18年世界選手権優勝で韓国の趙グハム(28)と対戦し、延長の末に大内刈りで一本勝ち。同日にあった女子78キロ級の濱田尚里(30)とそろって世界の頂点に立った。

 井上監督は、世界選手権、全日本選手権に続き五輪を制して「三冠柔道家」の仲間入りをしたウルフについて「(自分と)直接対決したらどうなっていたかわからないなと思うような素晴らしい選手」とたたえた。

 ウルフと井上監督の試合後の報道陣とのやり取りの全文は以下のとおり。

――だいぶ実感がわいてきましたか。

 目標にしていた大会だったので、僕自身の持ち味のしぶとい柔道をして勝つことができてよかったです。

――決勝は苦手なタイプの選手だったが、どういう対策をしたのでしょうか。

 ほんとに苦手なタイプの選手なので。僕自身の柔道って結構押していく柔道だったんですけど、そういう柔道をすると逆に担がれてしまうところがあったので、前半も、ゴールデンスコアに入ってからもずっと我慢我慢で、組手で相手を下から持つとすぐ背中にくるので持たせないという試合運びをしながら。また、片手でもいいから技をかけるということを意識しながら、少しずつでも相手のスタミナを削って試合をしようと考えていました。

――後半、利き手で上腕を持つようになりましたけど、それは十分いけるようになったからそうした?

 相手のスタミナが少しずつ減ってきて、僕自身が相手の釣り手を殺す対応をしていく中で相手の袖がつかめるようになってきたので、そこをつかめば大内刈りがいけるなと思っていたので、そこは最後、大内刈りで決めようと考えていたところがうまくできたと思います。

――ひざの状態は?

 ひざの状態は良くない状態が続いていて、昨日も両方のひざに痛み止めを打ったので、そういう状態の中でもやれるだけのリハビリはしっかりしてきたので、そこまで不安な様子はなかったです。

――(世界選手権、全日本選手権、五輪の)三冠を取れたことについては。

 三冠を取って、歴史に名を残すというのが僕の目標だったので、それを達成できたというのは今までの柔道人生で努力してきたことが報われたのかなと思います。

――井上康生監督以来の金メダルについては。

 21年ぶりの100キロ級の金メダルということで、金メダルを日本に取り戻すことができましたし、また、井上監督が今年で監督が終わりなので、最後の最後でしっかり恩返しができたかと思います。

――さっき井上監督が「自分と戦ったらいい勝負だ」と言っていたが。

 いや~(笑)。ルールが違いますからね。ふふ。僕はもう組まないっすよ(笑)。

――大内刈りは、柔道を始めた頃に覚えたやりかた?

 どっちかっていうと、(千葉・東海大浦安)高校に入って(16年リオデジャネイロ五輪男子90キロ級金メダリストの)ベイカー(茉秋)先輩(26)や(東海大)浦安の先輩を見て身に着けた技かなっていうふうには思いますね。

――試合で勝って涙が出るのはどんな感情?

 今までやってきたものが報われたなと思ってこみ上げるものがありましたし、ほんとに愚直にここまでやってきてよかったなというふうに思いました。

――日本に8人しかいない三冠柔道家ですけど、これからどういうふうに自分の柔道人生を歩んでいく?

 結果として残すことはできましたけど、井上監督のような柔道家としても一人の人間としても立派な人を目指してやっていきたいです。

――現役としても?

 まだまだ続けますね。

――団体戦も2日後にあるが。

 3日間(痛み止めが)効くので、明後日まで行けます(笑)。1試合だけね。

――(日本勢の)五輪での男子5個の金メダルは1大会最多となった。

 それは今初めて知ったんであれでしたけど、日本柔道、すごい強いっすね。

――(米国人の父と日本人の母を持つ選手として金メダルを獲得し)東京大会全体としてダイバーシティー(多様性)を推進していると感じるか。

 僕自身、東京の下町で育って日本人として育ってきたので、そこまでそういう部分を考えてやってきたわけじゃなかったので。日本代表として金メダルを取ったということがまず一番ですかね。なんすかね。難しいっすね、そういう質問。でも、これからもっと日本人の多様性が増えていったらいいんじゃないかなと思いますね。


【井上監督】

――00年シドニー五輪以来の100キロ級の金メダル。

 シドニー以来ということは私以来、という形になりますが、その記録以上に、彼自身努力に努力を重ねていろんなことを考え抜いて今日戦ったと思います。そのすべてを今日出した優勝だったというふうに思いました。一見明るくやんちゃな面もあるんですが、こと柔道に関してはひたむきに東京五輪で優勝するために日々努力している姿を私自身見てきましたので、今日を迎えられてうれしく思っています。

――今日の戦いぶりを見ていて。

 非常に安定した戦いだったなと思います。内容を見ると、非常に接戦の接戦という戦いではあったのですが、これまで国際大会においてポイントをリードされたりする場面も非常に多かった。組手や受けの対策をしっかり練ったうえで、カバーしたうえで今回準備していたなと。本当に緻密(ちみつ)な戦いだったなというふうに思います。

――メダルラッシュが続いています。(コロナ禍のため開催に賛否が分かれた)世論の大会に対する感じ方は変わってきていると思いますか。

 われわれチームとしてはそれぞれの夢、目標を達成するために全力で戦っていくこと。もう一つは五輪と柔道を通じて少しでも今厳しい環境下の中で過ごされているみなさまに、何か元気を与えていけるような、そういう試合ができればということを、チームとしてみんなで言い合いながらここまで来た部分がありますので、少しでもこういう結果が、これは決して日本の国民のみなさまだけでなく、世界に、選手たちと切磋琢磨(せっさたくま)して戦うことが全世界のみなさまに何かよき影響が与えられているのであれば、われわれは五輪、また、このスポーツをやる価値は非常に大きいのではないかと思っております。常にわれわれ、一日一日の戦いでは感謝の気持ちを持ち、(柔道は)残り2日になりましたけど頑張ってまいりたいと思います。

――ウルフ選手は監督と同じ三冠柔道家となった。今後どんな存在になっていってほしいか。

 そうですね。試合前というか、直前ではないんですけど、練習や合宿のときに「おまえ、三冠狙える道にあるんだな」という話をしていたので、それを見事達成してくれた彼自身の戦いというものは、私自身誇らしく思いますし、私自身が現役のときと比較しても、これほど緻密にこれほど努力を重ねた選手はいないんじゃないかなと思うぐらい。まあ直接対決したらどうなっていたかわからないなと思うような素晴らしい選手に育っているんではないかなと思います。

――決勝は我慢の戦いだった。勝ち切った勝因は。

 初日から言えることだと思いますが、いかに今大会において粘り強く我慢強く戦っていくかというところが非常に大事なポイントでありましたので、ウルフの強さのひとつというものは、みなさんご存じのとおり、我慢強さというか、接戦になればなるほど彼自身の力が発揮される、それが彼の大きな強みではないかなと思います。そこは戦術面で十分に頭に入れた戦いでありましたので、それをしっかり試合で出したことの勝利だと言えると思います。19年(世界選手権準々決勝)では敗れていましたから、そこから非常に対策を練ったうえで準備していた。それが出た試合だったなと思いました。

――個人戦は明日が最後。人生の集大成というところにおいて、重量級の再建と言う意味での最終決戦。原沢(久喜)選手(29)にはどういう戦いを期待したい?

 これまでの過程においてはそういう言葉を使わせてもらった部分がありますけど、なにしろ原沢がここまで、彼も努力、誠実に実直にひとつひとつさまざまな経験をしながらここまでたどり着いた選手だと思います。そのすべてを明日出してもらえるように、しっかりサポートしていきたいなという風に思います。

(編集部・深澤友紀)

【瀬戸大也、競泳でメダル逃すも「すっきりしています」 見守り続けた妻・馬淵優佳のアスリートな本音】

※AERAオンライン限定記事

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