司法試験受験生は、ほかの法律系資格にも関心があるのではないでしょうか。
行政書士試験は試験科目が司法試験の勉強でほぼカバーできることもあり、他資格の受験を検討する際にはおすすめの資格です。
このコラムでは、司法試験と行政書士試験の比較や受験するメリットなどについて解説します。
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目次
司法試験と行政書士試験 基本事項を確認
ご存知の方が多いとは思いますが、改めて司法試験と行政書士試験、弁護士と行政書士の基本事項について確認しておきましょう。
司法試験合格後の進路
司法試験合格後は、弁護士、裁判官、検察官のいわゆる「法曹三者」のいずれかになるのが基本的な進路です。
弁護士の中には、法律事務所に勤務、独立開業するという選択肢以外にも、企業内弁護士も近年は増加しています。
また、司法試験合格後に必ず法律家になるとは限らず、その知識や経歴を生かして政治家や実業家、ジャーナリスト、コンサルタントなどになる人もいます。
行政書士試験合格後の進路
行政書士試験合格後は、独立開業、行政書士事務所勤務、一般企業勤務などの進路が考えられます。
独立開業しやすいことが魅力の資格であるため、社会人経験がある場合には資格取得後にすぐ独立開業する人も比較的多いと言えます。
一方、スキルアップのために資格を取得するものの、行政書士業務を行わない人も多く、会社員などを続ける人もいます。
弁護士と行政書士 仕事内容の違い
弁護士は、あらゆる事件において代理人となることができ、訴訟や交渉などを通して紛争解決を図ることができるため、業務範囲が非常に広いと言えます。
弁護士の仕事について詳しい解説はこちら
一方、行政書士は官公署などに提出する書類の作成、代理等が主な仕事であり、紛争性のある事件では代理人となることはできません。
そのため、行政書士が行う仕事は、弁護士が紛争解決であるのに対して、紛争を予防するための手続きとなる場合が多いでしょう。
行政書士は弁護士のように裁判業務を行うこともできません。
ただし、行政書士のメインの仕事である許認可申請業務は1万種類以上あるとされており、業務は多岐にわたります。
行政書士の仕事について詳しい解説はこちら
弁護士と行政書士 なり方の違い
弁護士になるためには、司法試験に合格する必要があります。
司法試験を受ける前提として、法科大学院で法学未修者は3年間、法学既修者は2年間の課程を修了するか、予備試験を受験して合格する必要があります。
弁護士になる方法についての解説はこちら
一方、行政書士になるためには行政書士試験に合格する方法が原則です。
その他、試験が免除される方法もあります。
ひとつは、公務員として通算17年(高卒の場合は20年)以上の行政事務の職務経験がある場合です。
もうひとつは、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士のいずれかの資格を持っている場合です。
これらの資格を取得すると、自動的に行政書士になる資格も取得できるのです。
そのため、行政書士は他士業との兼業者も多く存在します。
行政書士になる方法についての解説はこちら
司法試験・予備試験受験生が行政書士を受けるメリット
司法試験や予備試験受験生が行政書士試験を受けることは珍しくありません。
メリットどのようなものがあるのでしょうか。以下でご紹介します。
①行政書士試験に合格すれば自信につながる
司法試験を目指している人にとって、行政書士試験が最終目標とはなりづらいかもしれません。
しかし、法律系の国家資格である行政書士試験を受験して合格することで、自分が一定以上のレベルに達していることを実感し、自信につながるというメリットがあります。
難関資格を目指す人にとって、精神状態が安定していることは非常に重要です。
本命の司法試験に合格する前に他の国家資格に合格して実績を作り試験慣れすることで、精神衛生上よい影響を与える場合が多いでしょう。
②試験科目がほぼ重なっている
司法試験を目指す人にとって、無関係な科目を勉強するのでは時間のロスが発生してしまいます。
その点、行政書士試験の受験科目は司法試験の受験科目でほぼカバーできるため、ゼロから新たな科目を学ぶ必要は基本的にありません。
難易度も司法試験と比較すれば易しいと言えるでしょう。
行政書士試験の試験科目についての解説はこちら
一方、行政書士試験と比較されることの多い司法書士試験の場合、不動産登記法や商業登記法といった主要科目を新たにゼロから学ばなければならないため、司法試験受験生にとっては負担が大きくなります。
難易度についても、司法書士試験は合格率5%程度なので、司法試験受験生にとっても決して易しいものではありません。
行政書士と司法書士の違いについての解説はこちら
③司法試験を諦めた場合でもこれまでの学習が役に立つ
司法試験の受験から撤退することになった場合、これまで努力してきた結果を何らかの形で残したいと思うのではないでしょうか。
そんな時、行政書士試験は司法試験の受験対策と科目がほぼ重なるため、受験して合格すればこれまでの学習が役立ったことになります。
そして、行政書士試験に合格すれば、行政書士として独立開業するなどの展望が開けるため、司法試験を諦めた場合でも気持ちを切り替えやすく、新たな人生設計をしやすくなるでしょう。
司法試験と行政書士試験Q&A
ここでは、司法試験・予備試験受験生が行政書士試験を検討する際によくある疑問にお答えします。
Q1.行政書士試験の勉強をしなくても合格できる?
A.合格できる人もいますが、そうでない人もいます。
行政書士試験の受験科目は、司法試験の学習歴があればほぼカバーでき、難易度についても司法試験よりは易しいと言えます。
ただし、出題の形式や傾向には行政書士試験固有のものがありますので、過去問を解くなどの対策は必要です。
上級者向けや司法試験・予備試験受験生向けの行政書士試験対策講座もあるので、一発合格したい場合は検討してみてよいでしょう。
Q2.行政書士になる気はなくても受験すべき?
A.メリットがあると感じる人にとっては受験を検討することをおすすめします。
行政書士試験に合格しても、必ず行政書士になるとは限りません。
自分の実力を試すため、スキルアップを目指すために受験する人も多数います。
司法試験受験生にとっては、行政書士試験に合格することで自信につながったり、将来のための保険ができたりというメリットはあるでしょう。
Q3.弁護士を諦めて行政書士になる人は多い?
A.比較的多いと言えます。
弁護士を目指していた人は、法律に関わる仕事をしたいと望んでいることが多く、法律系資格の中では比較的合格しやすい行政書士になるケースは多いと言えます。
同じ理由で司法書士を目指す人も多いものの、司法書士試験は司法試験受験生になじみのない不動産登記法、商業登記法が主要科目に入っていることもあり、新たに真剣に勉強に取り組まなければ合格することはできません。
これ以上時間を無駄にはできないという人には、行政書士の方が短期間で合格しやすいと言えるでしょう。
まとめ
司法試験受験生にとって、精神的に安定していることはとても重要です。
行政書士試験に合格することで、努力が報われる経験をして自信につながればアドバンテージになるのではないでしょうか。
行政書士になることが最終目標ではない人にとっても、受験を検討してみる価値は高いと言えるでしょう。