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Tableau で前年比を計算する

Tableau で前年比を計算する

Tableauで視覚化する時、必ず受けるご依頼。「前年比を出して下さい」

私は、 Tableau の簡易表計算機能を使って前年比成長率をお見せし、「簡易表計算を使うと簡単に計算できますよ」と説明を続けます。

そうするとほぼ全員から「前年を100%にして比率を出して下さい」と言われます。

Tableauを使ったことがある方はご存知と思いますが、簡易表計算の前年比は成長率を表していて、100から110になると10%成長、と計算されるようになっています。

私は「前年を上回っていたらプラス、下回っていたらマイナスのほうが解り易くないですか?  どうしてですか? 」と説明し、次のグラフを見せます。

それでも、「今までそうしてるから」「変えるとみんな混乱しちゃうから」とか、なかには「数字がわかればいいんですよ。グラフのスペースもったいないし」とか言われます。(ああ、またか)と内心思いながら「では前年比はどのように計算させて頂いたらよろしいでしょうか?」と聞くと「当年÷前年 簡単でいいよ」「ではそのようにさせて頂きます」(Tableauを使い始めたらきっとわかってくれるだろう)と一端はそこで話を打ち切りますが、こんな会話をもう何十回してきたことか...

Tableau での前年比の出し方

Tableau で前年比を出す方法は、いくつか考えられるのですが、その方法は別の機会に譲るとして、

(必要であればこちらを参考にして下さい。 https://kb.tableau.com/articles/howto/yoy-and-ytd-table-calculations-are-disabled?lang=ja-jp )

簡易表計算で前年比成長率を出す時は、

「[年] がディメンションにないと前年比成長率が使えないので、必ず[年] をディメンションに入れて下さい」

「計算の方向を指定しないといけないので [表計算の編集…] で日付の年を指定して下さい」

などと説明を加えさせて頂きます。

ほとんどの方はここで目が点になります。

Tableau につまづく最初のポイントかも知れません。

言ってる意味がわからないようなので、簡易表計算で作られている計算式をお見せし説明するのですが、今度は lookup関数の意味を説明するのにまた一苦労。

私もTableau を使い始めた最初の頃、なかなか前年比がうまく出せなくて苦労した思い出があります。たかが前年比、されど前年比...です。

・Tableau の前年比成長率計算式

(ZN(SUM([売上])) – LOOKUP(ZN(SUM([売上])), -1)) / ABS(LOOKUP(ZN(SUM([売上])), -1))

( [当年実績] – [前年実績] ) / 絶対値( [前年実績] )

Tableau の前年比算出がこのような計算になっています。

理由は、大きく2つあると思っています。

一つは、日本的文化と欧米的文化の違い。日本では、前年を100%として見る習慣がありますが、欧米にはその習慣が在りません。私は外資系企業で働くことが多かったですが、欧米の方は前年比を成長率で見る習慣があります。

以前、米国の方に「このカテゴリの前年比は80%でした」と言ったら「Great!」と褒められました。一瞬、冗談を言っているのかと思ったら、彼は前年を80%上回ったと解釈してしまっていたのです。Tableau は米国で生まれたツールです。

一つはこの文化的違いから、簡易表計算はこのような計算式になっています。

[当年実績] ÷ [前年実績] で本当に大丈夫?

もう一つは、[当年実績] ÷ [前年実績] では正しい前年比が出せていない(出せない場合がある)ということです。

前年比の出し方をみなさんに伺うと、ほぼ「 [当年実績] ÷ 「前年実績」」と答えが返ってきます。

値は 1.1213 とかになりますが、Excel なら書式設定で表示形式をパーセントに変えれば良いですよね。

これで合っていると思っていらっしゃる方がほとんどですが、本当にそれで大丈夫でしょうか?


実績がプラスしかない時は、[当年実績] ÷ [前年実績] でも構いません。

でも実績にマイナス値がある場合はどうでしょう? 

例えば、実績に返品が含まれる場合や、利益に関しては、実績がマイナスになることもよく有りますよね。

カテゴリ別、商品別、日別などと分析を深めて細かく見ていくと、実績にマイナス値が含まれるケースは意外と良くあります。

次の表でその計算方法による結果の違いを示します。

前年比計算の違い

どの計算式も数学(算数)的には正しい計算式なのですが、前年がマイナス のところに違和感を感じませんか? 

前年がマイナスの場合、比率を見ただけでは、前年より良くなっているのか?悪くなっているのか?が全く解りません。

Excelで作られた表を拝見すると、こんな間違いが散見されます。表の中では、その事すら気づいていない方が多いです。

「ここは?」と尋ねると、「ああ、そこは前年がマイナスなので例外です。無視して下さい」などと訳の解らない回答が返ってくることがあります。


このように、実は、前年比を出す計算は、

( [当年実績] – [前年実績] ) / 絶対値( [前年実績] )

のほうがビジネス的には正しいのです。

百歩譲って、

( [当年実績] – [前年実績] ) / 絶対値( [前年実績] ) +1
(前年を100%基準とする)

なのです。

表で表現する時とグラフで表現する時の違い

Tableau を使い始める前の方は、「前年比」と言うと次のような表をイメージしておられる方がほとんどです。おそらくこんなイメージなのでしょう。

この記事の最初にお見せしたグラフとこの表を比較したら、どちらが解りやすいでしょうか? 

また、前年を100%基準としたグラフと前年との差を比率で表したグラフでは、どちらが解りやすいでしょうか?


解りやすさに関しては一目瞭然ですよね? ならば解りやすい方に変えていきましょう!


変化を恐れる必要はありません。解りやすくすることが分析の全てです。


これが Tableau を使うことによって生まれてくる「違い」だと私は思っています。

今回は、比率計算を行う時に注意しなければならないポイントと、 Tableau の前年比計算の意味についてのお話でした。

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この記事を書いた人:

BIエンジニア・Tableau画伯・Tableau Datasaber /a.k.a. Data Athlete
東京生まれ。趣味はトライアスロン。フルマラソンベストタイムは3時間8分。 (株)ナイキジャパン Sales Operations、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株) Sales Planning、(株)アダストリア 情報システム部を経て、現在は(株)クリーク・アンド・リバー社 デジタルマーケティンググループにてBIエンジニアとして活躍。 『データ活用で世の中を良くする』ことを信条としている。