まん延防止解除!オミクロンは軽症ではなく後遺症が大変
まん延防止措置が解除になりました。といっても、まだ東京の感染者はきのうも4000人弱。経済回復を急ぐための解除と見えてしまいますが、その背景には「オミクロン株は重症化しない」という意識があるようです。
ただ、コロナの後遺症を診る医師からは、後遺症の急増、悪化の声が出ています。そのオミクロン株の後遺症について、「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で取材、報告しました。
★後遺症外来の受診者の4割弱が「準寝たきり」状態に
新型コロナの後遺症について、詳しい話を、東京「ヒラハタクリニック」の平畑光一さんに伺いました。
「今1月末から比べると、やっぱり1・5倍ぐらいの感覚にはなってると思います。今は多いときで1日100人ぐらい診てますので、かなりの数と言っていいかなというふうに思いますね。新型コロナの後遺症というのは、寝たきりの状態になりやすいと、当院にかかられてる患者さんの中の4割弱ぐらいが、準寝たきり以上の状態になると。かつ、なるまでのスピードがですね、どうもちょっとオミクロンの方が早いと。オミクロンは「軽い軽い」と言われていますけれども、実際はそんなことはなくて、感染力が強くて、同じぐらい寝たきりになって、より早く寝たきりになると。後遺症っていう観点からすると、オミクロンが今までで最悪の株ということが言えると思います。もうこのレベルになりますともう働くのは絶対に無理なんです。他に言葉がないので「倦怠感」という言葉を使っていますけれども、鉛を背負ったようになって動けなくなってしまうと。「倦怠感」っていうとちょっと生ぬるい感じがします。」
(ヒラハタクリニック 院長・平畑光一さん)
▲ヒラハタクリニック 院長 平畑光一さんに話を伺いました。
オミクロン株の感染拡大で、まず、後遺症になる方の数も増えていて、さらに、若者や子供の感染が広がるにつれて、後遺症の患者も若い層が増えているということです。また、オミクロン株では、「味覚や嗅覚障害は少ない」とされますが、後遺症では味覚嗅覚障害も報告されています。
さらに辛いのが、倦怠感。これは起きて動くだけで辛く、「準寝たきり」という言葉がありましたが、仕事どころか、料理など、生活するのも困難で、こうした人たちが、受診患者の4割くらい出ているようです。
そして、この「準寝たきり」になるケースは、コロナが重症だった方より、軽症や無症状の方が多いということなので、「オミクロンは軽い」は間違い、むしろ軽いほうが後遺症は怖いと指摘。こうした状況でのまん延防止解除を平畑先生は心配していて、後遺症の大変さを知って、感染防止を続けて欲しいと訴えていました。
★厚生労働省の”手引き”が問題
そしてもう1つ問題視していたのは、後遺症についてはまだ医師の間でも知識が不足していて、治療できる病院が少ないこと。それに加えて、厚生労働省の間違った指導があるということです。
「厚生労働省の手引きが、まだ暫定版ということになってますが、非常にちょっと、現実とは乖離したような内容になってまして、まだ現場で使えるようなものになってないんですね。一番問題になるのはですね、精神的なことで後遺症が起きるんだっていうことが随所に出てしまってるんですね。でも実際はですね、不安とか精神的なことで後遺症が起きるなんていう論文はないわけです。患者さんからすると、心が弱いから後遺症になってるんだみたいな見え方になってしまっているので、患者さんたちが憤慨しているという状況がありますね。あとは症状が重い方がリハビリすると余計悪くなる、そういう病気なんですね。WHOのリーフレットなんかにも、悪くなりやすいタイプの方は、運動しちゃいけない、活動しちゃいけないっていうふうに明記されているんですけれども、厚生労働省は、その資料を引用しておきながら、全員にリハビリしろというような乱暴な内容になってまして、これは患者さんを逆に追い込んでしまう。もっと言えば自死に追い込んでしまいかねない非常に危険なリーフレットになっています。」
(ヒラハタクリニック 院長・平畑光一さん)
こちらは去年の12月に厚生労働省がまとめたもので「罹患後症状のマネジメント」=つまり後遺症をどう扱うかという冊子ですが、後遺症の臨床の立場からすると、間違いだらけ…。
コロナの診療の手引きの「別冊」という位置付けで、元はコロナの診療の方がメインのためか、監修した人もコロナの急性期の専門で、後遺症に詳しい人がいないということです。それだけでなく、後遺症外来を取材した形跡もないと問題視しています。
そして特に危険だとしているのが「リハビリ」。後遺症が悪化するケースがあり、病後2ヶ月は激しい運動は避ける必要があるのに、リハビリを勧める内容となっています。平畑先生は「軽い散歩など負担がなければいいそうですが、筋トレなど激しい運動は2ヶ月は避けて」ということです。
★「上咽頭擦過療法」の可能性を探る
このように、色々な意味で深刻な後遺症ですが、では、治療法はないのか?平畑先生に聞きました。
「実は日本だけなんですけども、非常に有効な治療がありまして、「上咽頭擦過療法」といいまして、鼻の奥のところに塩化亜鉛ってお薬を擦り付けるような治療ですね。擦り付けることによって、炎症、むくみを取っていくんですね。脳のすごく近いところにあるんで、脳の血流が良くなったり、リンパの流れが良くなったりして、自律神経等々の働きが正常化すると。これをやっていただきますと、半分以上の方に効果が見られまして、寝たきりの人が生活できるとこまで回復するってことはもう日常茶飯事。非常によく治る治療ということが言えます。かつものすごく安いんですね。そうですね3割負担の場合で、最新ですと300円台。何十回も受けなきゃいけないのでそこが大変なんですね。ちょっと血も出ますし、ちょっと痛みもあったりするので、そこがちょっと問題ではあるわけですけれども、ただこれは非常に福音だというふうに思います。」
(ヒラハタクリニック 院長・平畑光一さん)
「上咽頭擦過療法」というのは、元々は「慢性上咽頭炎」という上咽頭=鼻の奥の突き当たりに炎症ができたときの治療法。ここに炎症ができると、自律神経に影響して、体のあちこちに不調が出るが、この治療で治るものです。
そして、コロナの後遺症患者も、この上咽頭に炎症があることが多く、知り合いの先生がこの治療を始めたそうで、お話の中で「半分以上が回復」としていましたが、さらに漢方など組み合わせると7割が治るということでした。賛否両論あったそうですが、有効性が見えて来たことから、今、世界に向けて論文を書いているそうです。
取材・リポート:TBSラジオキャスター田中ひとみ