俺がウマ娘になってから、3年が経つ。
原因さえ未だわからず、自分が人間の男に戻る気配さえない。
「トレーナーさんが蛇を叩いてそうなったのなら、もしかしたら……だったんですけどね」
あいにくそんなことをした記憶はない。ありもしない糸口は消え、吐いた溜め息は自身の胸をほんのり温めた。
「やっぱり神話やお伽噺から手がかりを得るっていうのは無理があるのかなぁ」
「一概にはどうにも……さっきも言ったとおり、似たようなお話は日本にも外国にも古くからありますから」
「片っ端から試してたら、いい笑いものになりそうだな……」
何気ないぼやきに、ロブロイは苦笑を漏らす。

「私達ウマ娘にとっては、北欧神話のロキが有名かもしれませんね」
「ああ、ロキ。聞いたことくらいはあるな……性転換なんかしたことある人物だったのか」
「はい。古来よりトリックスターの代表的な存在ですが、変身術に長けていて、動物や女性にも自由に変化できるんです」
「それは実に羨ましいな……今の俺にとっては」
「特に私達にとって有名な逸話は、彼がウマ娘に変身し、子を成したことですね」
「子供をっ？」
ウマ娘となった今の自分にとって、やたら聞き捨てならない言葉に少し取り乱してしまう。
本棚から一冊の分厚い本を取り出したロブロイは、俺の座る前のテーブルにその本を広げて見せた。
「ウマ娘に変身したロキは、巨人族を誘惑し、交わり、スレイプニルというウマ娘を産みました」
「スレイプニル？」
「地も空も、あらゆる世界をも自在に駆けることのできる、神話上の最速のウマ娘です。現代ではウマ娘にとってひとつの信仰対象にさえなっているんですよ」
「へえ……初めて聞いたな……」
最速――ウマ娘に関わる一トレーナーとして、心をくすぐられる存在ではあった。

「ん……？」
興味を惹かれてまじまじと本を見ていると、不意にそのページに描かれている挿絵が気になった。
「なあ。この絵って、どっちがロキなんだ？」
「ええと、こちらがロキですね。……それが？」
首を傾げたロブロイの顔が、ほんの微かに薄笑いを浮かべているのに、俺は気付かなかった。
「いや、なんか……この絵に写ってるの、どっちもウマ娘だろ？　まるで巨人族と交わったウマ娘が二人いるみたいな絵に見えるなって……」
「いいえ。この絵は確かにウマ娘のロキと、巨人族の二人を描いたものですよ」
「いや、それだと変じゃあ……」
……言いながら、妙な違和感に襲われる。
描かれているもう一人のウマ娘の姿が、やけにロキより大きく見える。絵柄のせいか、遠近感なのかと思っていたが……
「……ウマ娘同士で、交わった？」
そんな、まさか。
眉をひそめる俺を見て、ロブロイはクスクスと笑い声を漏らした。

「このエピソードが有名な理由の一つが、まさにこれです。女性しかいないとされる、ウマ娘同士の交わり……」
不意にロブロイは、俺の背後に回った。
……彼女の声色に、妙な湿度が混ざっている……
「北欧神話だけではありません。いくつかの神話や歴史書には、ウマ娘同士の交わりや、子を成したという記述が残されているんです」
「何かの間違いじゃないのか？　フィクションとか……」
「多くは強いもの同士の血を掛け合わせることで、より強いウマ娘を作る為……そのような文献は数知れません」
「ロブロイ……？」
諳んじるような彼女の耳は、俺の声を聞き届けてくれない。
「科学の発展するより以前の時代には、弱いヒトの血が交わることでウマ娘の力も弱まると信じられていたとか」
椅子に座る俺の背に覆い被さるように、ロブロイの体がひっつく。
背中から柔らかく、大きな感触が伝わり、無意識に息を呑む。

「しかしその行いが神の怒りを買い、ウマ娘同士の子は未熟児ばかりになってしまった……ウマ娘はそれを避ける為、再びヒトと交わるようになったと言われています。その行為を……」
肩に、彼女の顎が乗せられた。
「――インブリード、と呼んだそうです」

口を開くと、張り詰めた息が塊となって転がり出た。
「……酷い話だな」
「そうですね」
身も蓋もない感想に、ロブロイは軽く笑った。

「ところで」

ふと、背後にいるロブロイがもう一冊の方を俺の目の前に広げる。内容は英語でよくわからない。
「……なんの本？　辞書みたいだけど」
「スラング辞書です。国によりますけど、罵詈雑言や隠語がまとめられた辞書というのも存在するんですよ」
「な、なんでそんなもの」
ロブロイは答える代わりに、ある一文を指で示した。
「……Inbreeding……インブリード？」
「はい。海外のウマ娘の間で使われているスラング……というより、隠語でしょうか」
「へえ……その、意味は？」
なんとなく聞いてはいけない予感がして、少し口が重くなった。
しかして予感は見事に当たる。ロブロイの声色は、不気味な艶やかさに彩られた。
「ウマ娘同士でする、エッチなこと……です」
「エッ……！？」
慌てる俺の両肩に手を乗せられる。
「特に、手や口だけでなく……男女と同じように、入れ合うことを言います」
「な、何を……！」

「女性しかいないウマ娘という種族にとって、婚姻に対する感情は一概には語れません。特に個人の力が強まっていった近代化と共に、恋愛の自由も叫ばれた時代は社会問題さえ起こりました」
「社会問題……？」
「同性愛……と、ヒトの目線で一言で語れるものでもありません。先にも話したヒトとの交わりを避けていたという古い歴史が、恋愛の自由の到来と共に複雑に形を変え、ヒトとウマ娘の対立に繋がったんです」
歴史を語るロブロイは、俺の肩に頭を預けたまま、まるで褥で語らうように過去をうたう。
「ですがそれは歪められた愛……本当はただウマ娘同士だったというだけで、好きな相手と子を成せないことに対する悲しみの叫びだったはずです。……今の私達のように」
「俺達、の……？」

「――スレイプニルの信仰には、ふたつの理由があります。ひとつは最速に対する信仰……そしてもうひとつは、叶うはずのない愛に対する信仰」
俺の肩に、彼女の額が押し付けられる。覆い被さる姿勢だったロブロイに、抱きしめられている。
「そしてインブリードとは、諦めきれない二人のウマ娘が最後に縋る、愛を確かめ合う行為」
そっと顔をあげたロブロイの深い瞳が、俺を捉えて離さない。

「私、あなたが戻るまで、7年も9年も待てません」

「トレーナーさん。私と、インブリードしませんか？」

あ…ありのまま 今　起こった事を話すぜ！
『おれはボスロブロイの怪文書を書いていたと思ったら　いつのまにかちょっぴり純愛っぽくなっていた』

このインブリードのスラングいいな

ロブロイ乳搾りが上手そうだからトレーナー大変そうね

優秀なトレーナーが繁殖入りしてしまうーっ！！

文学少女が自分の知識の言葉で普段からは考えられない力で推してくるのって良いよね…

本当に最高……ありがとう……
こういうのが読みたくてTSネタを書いたから今の流行は我が世の春だ……

危険な交配ってそういう…

ところで入れ合うってどうやって……？ってうっかり聞いちゃってロブロイのえげつない攻めをくらいたい……

ミスプロのクロスが効果的なんだ…

外も中も白因子でたくさんマーキングされちゃうんだ

トレーナーの2022が出来ちまうー！！

>「特に、手や口だけでなく……男女と同じように、入れ合うことを言います」
>「な、何を……！」
ここの含みたっぷりの言い方すき

ボスウマ娘に純愛されて産駒作らされるのも悪くないな…

>トレーナーの2022が出来ちまうー！！
毎週出来てない？

少なくともあの世界にもスレイプニルの名を冠したナニカは存在するようだからな…
fu913953.jpg[見る]

産駒がお腹に居そうなTSトレーナーも増えてきたな…

逆にウマ娘になったことでボスとして君臨するトレーナーが……いややっぱりメスにされる方がいいな……

ウマ娘っておぺにす生えてるんだ…

本人で脳内再生できるように鍛えてきたから俺は無敵

ギリシャ神話におけるケンタウロス族はウマ娘同士で交配していた一族である事はもちろん知っていますね？

>逆にウマ娘になったことでボスとして君臨するトレーナーが……いややっぱりメスにされる方がいいな……
エラい雰囲気漂ってきたな
案外開発してたりして

慕われるトレーナーがウマ娘TSした事でボス性を身につけるけどロブロイさんみたいなより強いボス能力の持ち主にわからせを受けるみたいなのはあるかもしれない

英雄色を好むという言葉があります

ボス性を活かすって意味ではTSトレが他の男やウマ娘に拐かされそうになっているところを
トレーナーさんは私のものです！他の誰にも渡しません！守護ります！って所有物宣言するとか…？

ウマ娘世界における伝承で語られる馬はそりゃあウマ娘になるんだろうが…

>ボス性を活かすって意味ではTSトレが他の男やウマ娘に拐かされそうになっているところを
>トレーナーさんは私のものです！他の誰にも渡しません！守護ります！って所有物宣言するとか…？
昨日のロブロイのやつがそんな感じだった

年末特番のウマ史を思い出すな…

昨日は宣言かましたあと盛大に食ってたね

3年間牝バ堕ちしてないのすごいな2人とも

互いに堕ちてるからセーフ

>昨日のロブロイのやつがそんな感じだった
見てきた
すごく良かった
ありがとう

馬の嗅覚は人の1000倍みたいだし多分ウマ娘も人よりも良い鼻してるだろうし
昨日イタズラした相手からムンムンとボスの香りがしてくるの良いよね…

繁殖牝バにされちゃう…！

ギリシャ神話と女から男へのTSと聞いて参上！

ちなみにテイレシアースはその後盲目の予言者になってナルキッソスに「己を知らないままでいれば、長生きできるであろう」と予言をしている
つまり覇王とも接点がある

へーオペラオーはどう思う？

めっちゃ好き…

文学的に責めてくるのはつよい

ポセイドンが女性のカイニスを男性のカイネウスにしてあげたけど
そのカイネウスの死に様は酔ったケンタウロス達に殺されてしまった
…というのをウマ娘の世界観に当てはめると

>ポセイドンが女性のカイニスを男性のカイネウスにしてあげたけど
>そのカイネウスの死に様は酔ったケンタウロス達に殺されてしまった
>…というのをウマ娘の世界観に当てはめると
その死体は女性のものに戻っていたということからもう何が起きたかはお分かりですね？