小林 正宜 院長の独自取材記事
葛西医院
(大阪市生野区/布施駅)
最終更新日:2021/10/12
近鉄奈良線の布施駅より徒歩9分。1953年の開院以来、地域に根付いて医療を行っている「葛西医院(かっさいいいん)」。初代院長の小林愛次郎先生、2代目院長の小林將秀(まさひで)先生に次いで、2018年7月からは將秀先生の息子、小林正宜(まさのり)先生が院長となり、患者に寄り添う診療を行っている。地域の高齢化に伴い、近年は訪問診療にも注力。今回、「いつも患者さんの心に“寄り添う”診療」をモットーにしているという小林院長に、医師を志したきっかけや総合診療を行う理由、診療方針、訪問診療やプライマリケアについてなど、豊富な話題で話を聞いた。「病ではなく人を診たい」と穏やかに語る小林院長からは、地域医療に対する熱い想いと患者を想う優しさがひしひしと伝わってきた。
(取材日2018年10月19日)
病気ではなく、人を診る医療を
まず、医師を志した理由から教えてください。
私が当院の3代目ですが、2代目である父の働く姿を小さい頃から見て育ちました。実家のすぐ隣に当院がありますので、休憩時間に父が家に戻ってくるなど、生活空間の中に医師がいることは自然だったんです。そのため、小さい頃から漠然と「医師になりたい」という想いはありましたね。やはり、子ども心にも父親の姿はかっこよく見えましたし、いまも当然、父のことは尊敬しています。基本的に、現在も毎週火曜日と金曜日は、私が大学病院と救急病院で勤務していますので、その日は父が当院の診療を担当しています。また逆に、父から症状が難しい患者さんの紹介を受けたりすることもあるので、いい信頼関係が築けていると思います。
総合診療を専門にしているそうですね。この分野を選んだきっかけを教えてください。
実は、学生時代には消化器内科に興味を持っていたのです。しかし、研修医1年目の10月の終わり頃に父が脳出血で倒れまして。ちょうど私が総合診療科で研修をしていた時で、その時の教授に相談したのです。すると、教授をはじめとする総合診療科の先生たちが、父の代わりに当院の診療に入ってくれることになりました。結局、11月と12月は医師の交代制でクリニックを運営することになり、翌年1月から3月は休診、4月に父が復帰し、クリニックも再開したのですが、私にとってこの経験が総合診療を選ぶきっかけとなりました。
具体的にどういうことでしょう?
父がいない2ヵ月間、私も研修医として当院の診療に立ち会うことになり、地域医療の重要性を実感したのです。地域のクリニックには、多様な疾患の患者さんが来られますし、その中に重大な疾患が隠れている方もいらっしゃいます。実際に、この2ヵ月間に来られた患者さんの中でも、「冷や汗をかくほど、おなかが痛い」という方がおり、指導医のもと私が超音波で診てみると、大動脈解離を疑う所見がありました。しかし、患者さんに伝えると、「大きな病院は嫌だ」と。そこで、疾患の重要性や命に関わることなどをしっかりと説明し、患者さん本人とご家族に納得いただいた上で、すぐに大きな病院を紹介しました。このときに、「病気ではなく病人を診ているので、心がある」ということを深く実感し、地域医療の醍醐味にふれた気がしました。そして、患者さんに寄り添いながら地域医療、つまりプライマリケアに貢献したいと思うようになりました。
プライマリケアと訪問診療に注力
患者層について教えてください。
最近、40代や50代の方も増えてきましたが、この地域は高齢化が進んでいることもあり、やはり70歳以上の方が多くなっています。中には、祖父の代から通っていただいている方もいますよ。私はプライマリケアについても学んでいますので、小さな子どもを診ることも可能です。たまに、お母さんの風邪のついでにお子さんを診るということもあります。地域のかかりつけ医として、小さなお子さんから高齢の方まで、皆さんに頼っていただけるとうれしいです。
診療で心がけていることは何ですか?
患者さんに心を開いていただけるような雰囲気づくりですね。特に高齢の患者さんは謙虚な方が非常に多く、病院で言いたいことを言えないという方も少なくありません。そのため、安心感を持って通っていただけるように、笑顔で丁寧にお話を伺うことを心がけております。「この先生には何でも話していいんだ」と思っていただけることが目標です。患者さんが困っていることをかかりつけ医が聞き出すことが、かかりつけ医の大きな役割の一つだと思っています。
そう思うようになったきっかけは?
大学病院で働いていた頃に、プライマリケアの重要性を認識しました。患者さんがこれまで医師に言い出せずに我慢していたところに、隠れている病気があるかもしれない。例えば、「おなかが痛い」と言っている患者さんに詳しく病状を伺うと、「少し背中も痛い」「体重が減ってきた」といった別の症状を訴え出すこともあります。患者さんの一言があるかないかで、診察も診断も変わってくるのです。だからこそ、主訴だけでなく、すべてを話していただけるような雰囲気づくりが不可欠だと考えております。信頼関係が構築できたら、当院は訪問診療もしていますし、それこそ最期まで安心して頼っていただくことができると思います。もちろん、必要があれば大学病院などへの連携機関への紹介も行います。
訪問診療についても詳しく教えてください。
当院への通院が困難になった患者さんや依頼を受けた患者さんに対して、訪問診療を行っております。訪問診療の良さは、患者さんがリラックスされていて、私が聞きたかったことをたくさん話してくれることですね。というのも、一般的に患者さんにとって、病院は緊張するものだと思います。医師や看護師がいて、見慣れない医療機器やベッドがあって、正直アウェーな状態かと。しかし、自分の家だと状況が変わりますよね。また、医師にとっても、家が散らかっていたりすると、「最近は調子が優れないのか?」など伺うことができます。1回の訪問で30分ほどのお時間の中で、患者さんから得られる情報量の多さが外来とは断然違うと思っております。「人を診る」という医療がしっかりと実現できている実感が訪問診療にはあります。これからもやりがいを持って、訪問診療を務めてまいりたいと思います。
地域で一体となったチーム医療をめざす
今、力を入れていることは何ですか?
大学病院などと連携して、大学生や若手の医師の教育に力を入れています。座学で学ぶことは誰でもできますけど、臨床の現場で患者さんと話すことや、患者さんの体に触って診察することは、患者さんや指導する医師がいないとできません。例えば、大学生に対しては、患者さんに寄り添うことの大切さを伝えるようにしています。患者さんの羞恥心などに配慮せずに病気だけを診ていると、医師の一方通行になってしまいます。口頭で教えるのはもちろん、私の診療も見て学んでほしいと思っております。また若手の医師に対しては、超音波の見方など技術的なことを重点的に伝えています。
今後の展望もお聞かせください。
例えば、80代や90代の高齢の患者さんは、症状によって病院が違うと大変ですよね。だからこそ、地域のかかりつけ医として何でも相談できるクリニックでありたいです。また、医師の働き方改革もしていきたいと思っております。子育て世代で勤務時間に制限がある女医さんなどと一緒に、訪問診療も行えたらいいですね。あとは、医療と介護がしっかり連携するために、チーム医療のロールモデルをつくることも、私の目標です。来年からは大規模病院の医師や看護師、クリニックの医師、ケアマネジャー、介護士、訪問看護師など、地域医療に関わるスタッフ同士が相互にやり取りを行う勉強会を始める予定もしております。チームで地域医療を守っていけるような仕組みづくりをしていきたいですし、地域医療が活性化することで、地域に暮らす方々がより幸せになれると信じています。
最後に読者へメッセージをお願いします。
当院では、受付や看護師などのスタッフたちも、患者さんに寄り添うことを何よりも大切にしております。私に言いにくいことがあれば、まずは他のスタッフに伝えていただいても構いません。スタッフの連携が取れておりますので、私もその点を配慮しながら診療を進めさせていただきます。また、訪問診療で看取りまでしていますので、小さなお子さんからご高齢の方まで、当院に頼っていただけるとうれしいです。これからも患者さんが楽しく生活を送れるようなサポートを、患者さんに寄り添いながら続けていきます。