【序】一家惨殺事件における主犯の少女の供述

序幕 私は姉を奪った毒親を殺した

 彼女の行いについて咎める声は、他ならない彼女自身の口から語られた言葉によって封殺された。

 ある日起きた一家惨殺事件の犯人として逮捕された強盗犯。その男は依頼されてやった、という趣旨の供述をした。依頼人はその家の生き残りである十三歳の少女。彼女は主犯として逮捕され、法廷でこのように語った。

「私の父は日常的に私と姉をレイプしていました。姉の目の前でも私の前でも平気でしたし、母は笑いながら見ていました。姉を犯す父を止めようとした私は父に外に出されて、何もできませんでした。夜中に街を歩いていた私を助けてくれたのが、実行犯の男性です。

 母は私を殴る蹴るは当たり前で、少なくとも物心ついた頃から罵声を浴びせられていました。両親に共通していたのは私たちを蔑み、否定し、あらゆる自由を奪い続けていたことです。

 私と姉は学校には行ってませんし、その間は家に来ていた大人たちに変わるがわる犯されてました。両親はそれで生計を立てていました。私たちはその間数人の子供を産んでいますが、どこにいったのか知りません。独学で言葉を学んだので秋津語を間違えていたらすみません。

 私の姉は実行犯に殺されたわけではなくて、自殺でした。その死体は、両親が巫岳山ふがくやま樹海に捨てたと言っていました。姉のパソコンのパスワードを教えます。そこに、全部書いてあるはずです」



 警察は彼女が口にしたパスワードで少女の姉の型落ちしたパソコンをアンロックし、彼女がつけていた日記を発見。そしてそれを読んでみると、少女が語った出来事のあらゆる全てが事実で、そして全体の二割にも満たないことだと分かった。

 この事件は親子関係のあり方を深く考えさせられる事件として広く認知され、事件後もしばらく報道が続いた。少女は情状酌量の余地が充分にあるという裁定が下され、更生施設へ移送。彼女のその後の人生については、わかっていない。

 ある少女が引き起こした一家惨殺事件から時間が経ち、世間の熱も冷めてきた頃。



 またしても、同じ悲劇が繰り返されようとしていた。

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