濱口 洋史

濱口 洋史
データ・テクノロジーセンター

電通はデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)において、企業の事業変革・成長に向けた顧客(生活者)視点に関する領域を「マーケティングDX」と定義して、マーケティングを革新させていくための基盤化を集中的に支援しています。「マーケティングDX」において特に重要となるのは、①事業変革の背骨となる「新サービス開発」、②事業成長を支援するための「マーケティング基盤開発」であると考えています。今回は、②の事業成長を支援するための「マーケティング基盤開発」において、電通が大切にしている視点をお伝えします。
それは、「人動視点」と「具現化するまでやりきる」ことです。

人動視点 ~人の気持ちをデザインし行動を促すことの価値~

企業の売り上げや利益は、お客さまの行動の集積で出来上がっています。つまり、生活者に行動してもらうこと≒「人動」が必要となります。生活者インサイトのプロとして、施策(キャンペーンの実施、サービス提供、情報配信など)を考え続けてきた電通だからこそ、DXにおいても「生活者に行動してもらえるか?」を常に考え、ソリューションを提供しております。
具体的には、DXの重要な要素であるデータについて、データをそのまま捉えるのではなく、「そのデータはどのような生活者の行動を表しているのか」という視点を持ち、設計を行っていきます。例えば、効果検証を行うためには、「どの生活者に対して、どのような施策が提示されているのか」、その結果「生活者の行動がどのように変わったのか」を把握する必要があります。そのような生活者の行動を把握するために、「最適なデータは何なのか」「それを取得するためにはどのような仕組みを構築すべきか」を考え、必要なデータの取得方法を検討していきます。

図表1:データ活用に関する考え方
図表1:データ活用に関する考え方

また、昨今、Cookie-lessやIDFAのオプトインでの取得義務化などデータプライバシーの保護への強化が行われている環境下で、DXを実施していくにあたり、データをどのように活用していくかご相談をお受けする機会も増えています。例えば、Cookieに代わる新しいIDは何になるのか?現状を打破できる新しいテクノロジーはあるのか?などといったご質問です。
電通はこの課題に対しても、人動視点にこだわり対応を行っていきます。問題となっているのは、お客さまが認識していない状況で、データが取得され、予想外の使われ方をされることです。ですから、お客さまに、活用方法とベネフィットをきちんと提示し、納得していただいた上で、データをご提供いただくことが重要となります。このようにお客さまから適切な許諾をいただき、データを活用していくことで、より良い顧客体験を提供できるようになり、結果的にお客さまもメリットを理解した上で快くデータを提供できるようになります。
電通はデータ活用において、このようなデータエコシステムにおけるポジティブサイクルの構築が、DXにおける継続的な成功の要因だと考えています。生活者のインサイトに基づき、最適なコミュニケーションとは何かを考え続けてきた電通だからこそ、適切なベネフィットの提供を提示していくことができます。

図表2:生活者との間であるべきデータエコシステム
図表2:生活者との間であるべきデータエコシステム

具現化するまでやりきるという「実行力」と「伴走力」で持続的DXを実現する

このようなデータエコシステムにおけるポジティブサイクルを実現するシステム(仕組み)を構築することができたとしても、施策を実施し、生活者の行動に変化を与えていくことができなければ、企業の売り上げや利益が向上することはありません。概念や仕組みではなく、「行動」に変化を与えることができるように、具体的な施策を実施し、やりきることが、とても重要だと考えています。
前述のように、ポジティブなデータエコシステムが構築できるようになることで、毎日データが蓄積され、施策を改善するチャンスが生まれてくる、言い換えれば、Always Onマーケティングが可能になってきます。このようなAlways Onマーケティングを実施していくためには、データ収集・蓄積、データ分析、施策立案、クリエイティブ制作から施策実行という一連の工程を、顧客企業と共に1つのチームを組成しながら、実施していく必要があります。

図表3:Always Onマーケティングを実現する体制
図表3:Always Onマーケティングを実現する体制

電通グループは、顧客企業と共にOneチームを作り、Always Onのマーケティングを行えるケイパビリティを保持しています。例えば、高い分析力を持ち、データオリエンテッドな施策の立案と実施を行えるように、2021年7月にブレインパッド社と共に電通クロスブレインを設立しております。
Always Onマーケティングを実施できるケイパビリティは、顧客企業の今後の持続的な成長に重要な領域であるため、外部に依存せずに実施ができるよう、内製化を望まれるケースが増えています。そこで電通では、社員がプロフェッショナルとして顧客企業に常駐し、チームメンバーに加わり、人材育成も担い、最終的に企業側で自走できるまでサポートするというトレーニングプログラムを提供しております。

図表4:トレーニングプログラム
図表4:トレーニングプログラム

電通では「生活者に行動してもらえるか?」という「人動視点」と、具体的な施策を実施して、顧客企業の売り上げと利益を「具現化するまでやりきる」実行力と伴走力を大切にしながら、DX領域において、事業成長を持続的に支援するための「マーケティング基盤」を提供してまいります。

執筆

濱口 洋史

濱口 洋史

データ・テクノロジーセンター
DMP統括部長

行動データ(購買行動データ、Web回遊データ等)をベースとしたデータエコシステムを構築し、PDCAを実施しながら、事業成長支援を行っていく専門家。特に、KPI設計やレコメンエンジン開発などPDCAの仕組み作りと運用が得意。 電通社内においては、People Driven DMPの開発/運用の現場責任者としてソリューションを提供している。
(株)電通クロスブレイン取締役、(株)データアーティストモンゴル取締役
工学修士(金融工学専攻)、中小企業診断士、個人情報保護士