難易度が高いといわれる技術士試験ですが、実際の合格率はどの位なのでしょうか。
このコラムでは、技術士試験に興味を持った人や具体的に受験を検討している人のために試験の合格率と合格基準を紹介します。
目次
技術士とは
技術士とは、科学技術に関する高度な知識と応用能力が国によって認められた技術者です。
技術士資格は、機械や情報工学といった専門性に応じた21の技術部門で構成されます。
▼技術部門一覧
機械部門 |
船舶・海洋部門 |
航空・宇宙部門 |
電気電子部門 |
化学部門 |
繊維部門 |
金属部門 |
資源工学部門 |
建設部門 |
上下水道部門 |
衛生工学部門 |
農業部門 |
森林部門 |
水産部門 |
経営工学部門 |
情報工学部門 |
応用理学部門 |
生物工学部門 |
環境部門 |
原子力・放射線部門 |
総合技術監理部門 |
技術士になるには、技術士第一次試験と第二次試験を受検して合格する必要がありますが、それらの試験は技術部門ごとに実施されます。
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技術士の全技術部門を総合したおおまかな合格率と部門別の合格率を見ていきましょう。
【全部門総合】技術士試験の合格率推移
技術士試験とは、技術士になるための試験です。技術士になるまでの流れを簡単に紹介します。
技術士になるには、まず、第一次試験を受検して合格します(文部科学大臣が指定した教育課程の修了者は第一次試験が免除されます)。
次に、第二次試験を受検して合格します。第二次試験を受験するには、受験する技術部門の実務経験が必要になります。第二次試験に合格後、登録という手続きを行うことで技術士になることができます。
第一次試験(*指定された教育課程)⇒実務経験⇒第二次試験⇒登録
このような試験の流れを踏まえて、全部門総合の合格率(過去5年)の推移を見ていきましょう。
第一次試験の合格率推移(全部門総合)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2017(平成29)年 | 17,739 | 8,658 | 48.8% |
2018(平成30)年 | 16,676 | 6,302 | 37.8% |
2019(令和元)年 | 9,337 | 4,537 | 48.6% |
2020(令和2)年 | 14,594 | 6,380 | 43.7% |
2021(令和3)年 | 16,977 | 5,313 | 31.3% |
第一次試験の合格率は、過去5年間30%~50%弱で推移していることがわかります。
第二次試験の合格率推移(全部門総合)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2017(平成29)年 | 26,253 | 3,501 | 13.3% |
2018(平成30)年 | 25,914 | 2,355 | 9.1% |
2019(令和元)年 | 24,326 | 2,819 | 11.6% |
2020(令和2)年 | 20,365 | 2,423 | 11.9% |
2021(令和3)年 | 22,903 | 2,659 | 11.6% |
第二次試験の合格率は、過去5年間10%前後で推移していることがわかります。
【部門別】技術士試験の合格率
次に、部門別の合格率を見ていきましょう。
【部門別】第一次試験の合格率(令和3年度)
技術部門 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
機械部門 | 1,752 | 599 | 34.2% |
船舶・海洋部門 | 16 | 11 | 68.8% |
航空・宇宙部門 | 46 | 22 | 47.8% |
電気電子部門 | 1,548 | 513 | 33.1% |
化学部門 | 192 | 93 | 48.4% |
繊維部門 | 32 | 17 | 53.1% |
金属部門 | 99 | 41 | 41.4% |
資源工学部門 | 12 | 3 | 25.0% |
建設部門 | 8,581 | 2,483 | 28.9% |
上下水道部門 | 1,092 | 346 | 31.7% |
衛生工学部門 | 302 | 107 | 35.4% |
農業部門 | 646 | 239 | 37.0% |
森林部門 | 288 | 102 | 35.4% |
水産部門 | 73 | 17 | 23.3% |
経営工学部門 | 228 | 102 | 44.7% |
情報工学部門 | 581 | 320 | 55.1% |
応用理学部門 | 302 | 80 | 26.5% |
生物工学部門 | 131 | 50 | 38.2% |
環境部門 | 955 | 108 | 11.3% |
原子力・放射線部門 | 101 | 60 | 59.4% |
全部門の合格率 | 16,977 | 5,313 | 31.3% |
第一次試験全部門の合格率は31.3%ですが、部門によって合格率が大きく違います。
最も高い合格率は、船舶・海洋部門の68.8%、最も低い合格率は、環境部門の11.3%です。
受験者数の最も多い建設部門の合格率は28.9%です。
技術部門によって受験者数が大きくことなるため、合格率を確認する時には部門の受験者数も考慮する必要があります。
【部門別】第二次試験の合格率(令和3年度)
技術部門 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
機械部門 | 871 | 121 | 13.9% |
船舶・海洋部門 | 12 | 3 | 25.0% |
航空・宇宙部門 | 35 | 5 | 14.3% |
電気電子部門 | 1,077 | 108 | 10.0% |
化学部門 | 134 | 24 | 17.9% |
繊維部門 | 39 | 10 | 25.6% |
金属部門 | 72 | 19 | 26.4% |
資源工学部門 | 24 | 3 | 12.5% |
建設部門 | 13,311 | 1,384 | 10.4% |
上下水道部門 | 1,399 | 185 | 13.2% |
衛生工学部門 | 499 | 51 | 10.2% |
農業部門 | 702 | 80 | 11.4% |
森林部門 | 259 | 59 | 22.8% |
水産部門 | 107 | 11 | 10.3% |
経営工学部門 | 210 | 16 | 7.6% |
情報工学部門 | 373 | 29 | 7.8% |
応用理学部門 | 544 | 92 | 16.9% |
生物工学部門 | 27 | 5 | 18.5% |
環境部門 | 411 | 48 | 11.7% |
原子力・放射線部門 | 55 | 8 | 14.5% |
総合技術監理部門 | 2,742 | 398 | 14.5% |
全部門の合格率 | 22,903 | 2,659 | 11.6% |
第二次試験で最も高い合格率は金属部門の26.4%、最も低い合格率は経営工学部門の7.6%です。
情報工学部門も7.8%と、10%以下の低い合格率となっています。
第二次試験は、10人中1人か2人が合格できるかどうかという難易度が高い試験であることがわかります。
技術士試験の内容と合格基準
続いて、技術士試験の内容と合格基準を見ていきましょう。
第一次試験の内容と合格基準
第一次試験の試験科目は、基礎科目、適性科目、専門科目です。
試験の方法は、マークシートによる択一方式です。
基礎科目と適性科目は、すべての部門で試験問題が共通ですが、専門科目は部門別の試験問題が出題されます。
第一次試験に合格するためには、すべての科目で50%以上の得点が必要です。
配点が多い専門科目が満点でも、他の科目が50%未満の得点しかなければ不合格となります。
試験内容 | 配点 | 合格基準 | |
---|---|---|---|
基礎科目 | 科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題 | 15点満点 | 50%以上の得点 |
適性科目 | 技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問う問題 | 15点満点 | 50%以上の得点 |
専門科目 | 当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題 | 50点満点 | 50%以上の得点 |
第二次試験の内容と合格基準
第二次試験は、筆記試験と口頭試験で行われます。
筆記試験
筆記試験の科目は、必須科目と選択科目です。
筆記試験の配点は総合技術監理部門とそれ以外の部門で異なりますが、60%以上の得点が必要という合格基準は全部門で同じです。
筆記試験の点数は、答案論文の採点者によって決められます。
マークシートによる択一式試験のような決まった正解はありません。
技術部門 | 試験科目 | 配点 | 合格基準 |
総合技術監理部門を除く技術部門 | 必須科目 | 40点満点 | 60%以上の得点 |
選択科目 | 60点満点 | ||
総合技術監理部門 | 必須科目 | 100点満点 | 60%以上の得点 |
選択科目 | 100点満点 |
口頭試験
口頭試験は、筆記試験に合格した人だけが受験することができる面接形式の試験です。
口頭試験は、各試問事項について60%以上の得点で合格です。
同一年度に筆記試験と口頭試験の両方に合格することで、第二次試験合格となります。
技術部門 | 試問事項 | 配点 | 合格基準 |
総合技術監理部門を除く技術部門 | 技術士としての実務能力 | 60点満点 | 60%以上の得点 |
技術士としての適格性 | 40点満点 | 60%以上の得点 | |
総合技術監理部門 (必須科目) |
総合技術監理部門の必須科目に関する技術士として必要な専門知識及び応用能力 | 100点満点 | 60%以上の得点 |
総合技術監理部門 (選択科目) |
技術士としての実務能力 | 60点満点 | 60%以上の得点 |
技術士としての適格性 | 40点満点 | 60%以上の得点 |
技術士試験の難易度は高い…合格するには?
技術士試験の第一次試験と第二次試験の合格率を紹介しました。
第二次試験は合格率が低く、また試験の出題範囲が広いことなどから難易度が高い試験となっています。
技術士試験に合格するには、計画的な勉強や試験対策が必要になりそうです。
効率よく合格を目指すなら通信講座もおすすめです。