2022.03.24

「ゼレンスキー大統領が挑発しなければ、こんなことになっていなかった」日本一のロシア通・鈴木宗男の激白

宗男が吠える(後編)
田原 総一朗, 鈴木 宗男 プロフィール

パックス・アメリカーナの終焉

田原 この対談を収録している今も、人道回廊を通じてウクライナ市民が国外への避難を続けています。この先どうなると見ますか。

鈴木 人道回廊で国民が避難を完了するまでに、少なくとも1週間や2週間はかかります。

田原 市民が逃げるのを待ってから、ロシア軍が総攻撃を仕掛けてウクライナを占領する。

Photo by Shinya NishizakiPhoto by Shinya Nishizaki

鈴木 人道回廊から人が逃げている間は静かにしていますが、だいたい撤退が済んだとなれば、一気呵成に行く可能性がありますね。そういう事態を引き起こす前に、バイデン大統領がゼレンスキーに「ここは話し合いだ」と呼びかければ事態は静まります。
 

 

田原 僕は一番の問題はバイデンだと思う。ロシアに対する経済制裁なんて強化したって、こんなものが通用しないことはバイデンもわかっている。ではアメリカがNATO諸国とともに軍事的に立ち上がり、ウクライナを守れるのか。それをやったらアメリカ国民から総スカンを喰らい、バイデン政権は崩壊します。

バイデンが一番恐れているのはトランプ前大統領です。トランプは「ウクライナがこんなことになったのはバイデンのせいだ」と批判を強めています。下手をすると秋の中間選挙でバイデンの民主党が負けて、2024年の大統領選挙でトランプが返り咲くかもしれません。

鈴木 バイデン大統領がゼレンスキーに「ケンカしたって結果は明らかだ。ここは話し合いをするしかないぞ」と言えば済む話なのです。なのに対話せず、ロシアを挑発ばかりしている。バイデンさん自身の心の弱さと、バランス感覚のなさが如実に現れています。ここはバイデンさんが「両方とも撃ち方やめ」と話し合いを呼びかけるべきです。

田原 バイデンにそんな気はないし、責任を取る度胸もないですよ。僕は密かに習近平に期待しているんですけどね。

鈴木 フランスとドイツは、ミンスク合意の立会人です。約束を守るのが外交の基本ですから、ドイツのショルツ首相やフランスのマクロン大統領は、陰でずっと汗をかいているはずですよ。アメリカもドイツやフランスと同調して、ウクライナ戦争を止めるために汗をかいていますね。

田原 第二次世界大戦以後、「世界の平和と秩序を守るのはアメリカだ」と言って「パックス・アメリカーナ」(アメリカによる平和)で突き進んできました。米ソ冷戦時代には、民主主義国を守るためにアメリカは大量の軍隊を派遣して世界の秩序を守ろうとしています。ところがオバマやトランプは、パックス・アメリカーナを放棄してしまいました。

鈴木 一国の指導者であるプーチン大統領のことを、バイデン大統領は「殺人者」と呼んで非難しています。これは言いすぎです。こんな言葉遣いをしたら、話し合いなんて呼びかけられるわけがありません。

バイデンさんはオバマ大統領時代、8年間にわたって副大統領を務めていました。オバマ政権時代の世界の動きをよく知っているわけですし、大人の対応をするべきです。プーチンさんをただ批判するのではなく、「お前は世界を知れ。対話のテーブルにつくしかないのだ」とゼレンスキーを説得する。ウクライナ危機を治めるために、バイデンさんは行動を起こすべきです。

関連記事