<独自>スマホ200台詐取 ベトナム人3人逮捕 偽造在留カード悪用
大阪府内の携帯電話販売店で偽造在留カードを提示して他人になりすまし、スマートフォンをだまし取ったとして、大阪府警国際捜査課などが詐欺と入管難民法違反の疑いで、ヴィ・アイン・バウ・ラム容疑者(24)らベトナム国籍の男3人を逮捕していたことが15日、捜査関係者への取材で分かった。
ほかに逮捕されたのは、ハン・ダイ・サン容疑者(23)と、ドアン・ホン・ソン容疑者(23)。府警は3人が別に逮捕、書類送検されたベトナム人数人とともに、少なくともスマホ約200台(1700万円相当)を詐取し、買い取り店に転売して利益を分配していたとみて調べている。
捜査関係者によると、3人は共謀し昨年5月、大阪府寝屋川市の携帯電話販売店で、他人名義の偽造在留カードを身分証明書として提示し、機種変更の手続きで「iPhone(アイフォーン)」などをだまし取った疑いが持たれている。
捜査関係者によると、ラム容疑者らは無料通信アプリ「LINE(ライン)」でベトナム国籍の30代の男に「偽造在留カードを入手したい」と依頼。府警は昨年10月、この男も入管難民法違反容疑で逮捕した。男は会員制交流サイト(SNS)で偽造カードの購入客を募っていたという。
府警は今回悪用された偽造カードが、警視庁などが摘発した大阪府東大阪市の製造拠点から配送された可能性が高いとみている。
偽造在留カード、SNSで安価に入手
外国人が日本に長期滞在するために必要な「在留カード」の偽造は後を絶たない。近年は在留期限が切れたり、技能実習先から逃げ出したりして不法残留となったベトナム人が、偽造カードを所持するケースが増加。SNSを利用すれば密売ネットワークから安価に入手できるといい、全国規模で流通しているとみられている。
在留カードは3カ月を超えて日本に滞在する外国人に交付される身分証。氏名や国籍、在留資格、就労の可否などが記載され、携帯が義務付けられている。偽造防止のためホログラムやICチップが使われているが、各地で偽造事件が年々増加。警察庁によると、外国人が摘発された偽造事件は令和2年に790件あり、そのうちベトナム人が422件と全体の半数超を占めている。
偽造在留カードの売買は主にSNS上でやり取りされ、各地のベトナム人のコミュニティー内でブローカーらが購入客を募るケースが目立つ。警察当局もSNSの実態把握を進めているが、捜査関係者は「コミュニティー内のSNSを捜査しても、警戒心が強くてすぐに察知され、SNSが閉鎖されてしまう」と話す。
偽造在留カードは1枚数千円程度と安く、不法就労目的で悪用するベトナム人らが少なくない。大阪府警が今回摘発した事件のように携帯電話の契約に使われたり、預金口座の開設に悪用されたりするケースも多いという。
日本のベトナム人コミュニティーに詳しい神戸大大学院の斉藤善久准教授(アジア労働法)は「ベトナム人の間では、仕事を斡旋(あっせん)される際に偽造在留カードを一緒に提供されているケースもある。犯罪という認識が希薄なため、摘発件数も多くなるのではないか」と指摘している。(宇山友明)