【出演者】
久留:久留一郎さん(鳥取大学医学部医学科教授)
肥満が痛風を引き起こす
――痛風は、尿酸が増え過ぎることで、足などの関節に激しい痛みや腫れが起こる。「尿酸値が上がる原因はプリン体だ」ということですけれど、「プリン体の多い食品に注意が必要だ」ということはよく知られていますよね。
久留: | 確かに、プリン体の多い食品は尿酸値を上げる原因になります。 |
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――つまり、食事が大事だということですか。
久留: | いいえ。尿酸のうち、食品のプリン体に由来するものは20%ほどで、尿酸値を上げる原因はほかにもあるんです。 そうした原因も知って、対策を取っていただきたいと思います。 |
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――尿酸値を上げる原因には、どんなものがあるのでしょうか。
久留: | 3つあるんです。「肥満」「激しい運動」「薬」なんです。 |
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――順番に伺いたいと思います。「肥満」があるとプリン体が増えるのですか。
久留: | 肥満によって内臓脂肪が増えますと、肝臓で尿酸がたくさん作られます。 また、肥満がありますと、腎臓から尿酸が排せつされにくくなるので、尿酸値が上がりやすいことが分かっています。 |
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――肥満と尿酸値は密接な関係がある、ということですね。カロリーを計算しながら食事をしなければいけないのでしょうか。
久留: | 確かにそれも大切なんですけれど、カロリーを計算するのは大変ですよね。もっと簡単な方法がありますよ。それは、まず体重を3%減らす、ということなんです。 実は、内臓脂肪は非常に減りやすい脂肪なんです。体重を3%減らすと、内臓脂肪が15%程度減ることが分かっていまして、そのため尿酸値が低下することも分かっています。 |
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――私の知り合いに痛風の人がいるんですけれど、その人の体重が70kgの場合は、どのくらい減らすといいことになりますか。
久留: | 70kgの3%だと、およそ2kg減らすことになります。 大切なのは、急激な減量は逆効果で尿酸値が急速に上昇してしまいますので、3~6か月程度かけてゆっくりと3%減量するようにしてください。 |
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激しい運動、ストレス、薬にも注意
――ほかに何か気を付けることはありますか。
久留: | 尿酸値が高い人は、摂取カロリーの適正化も重要です。痛風を発症する人は肥満がある場合が多く、エネルギー摂取量を抑え減量する必要があります。 体格指数の目安でありますBMI値25を目標にして、減量に取り組むといいと思います。 |
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――減量するためには運動も大切かと思うのですが、激しい運動はダメなのですか。
久留: | 激しい運動をすると、尿酸がたくさん作られてしまいます。激しい運動は、筋肉の中で尿酸のもとをどんどん作るという性質があります。 また、激しい運動は、尿酸が尿から排せつされるのを邪魔する作用があるので、尿酸値が上がってしまうということになります。 |
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――「激しい運動」というのは、例えばどんな運動のことですか。
久留: | 分かりやすく言えば、息が上がってぜいぜい言うような運動になります。 尿酸値が高い人は、短距離走やフルマラソン、ベンチプレスを使った激しい運動、筋肉トレーニングなど、いわゆる「無酸素運動」は避けてください。 |
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――では、尿酸値が高い人はどんな運動を行うといいのでしょうか。
久留: | ウォーキングや軽いジョギングなど、ゆったりとした呼吸で体内に酸素を取り込みながら行う「有酸素運動」をするといいと思います。息をゆっくりと吸ったり吐いたりできるような運動ということになります。 運動の強さは、軽く汗ばむ程度に抑えると効果的とされています。 |
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――新型コロナウイルスでストレスがたまっている人も多いかと思うのですけれど、ストレスと尿酸に関係はありますか。
久留: | 非常にあるんです。ストレスが多いと尿酸値が非常に上がりやすいことは、多くの研究から分かっています。 特に精神的ストレスは自律神経に影響してさまざまな体調不良を起こしますけれど、腎臓のはたらきにも影響して尿酸がうまく排せつされなくなってしまうので、ストレスの多い人は尿酸値が高くなります。 |
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――そして薬というのは、どういうことですか。
久留: | 薬の中には、尿酸を増やす作用を持つものがあります。 例えば、高血圧の治療薬として使われる利尿薬は、尿酸が尿から排せつされるのを妨げます。 また、痛み止めなどに使うアスピリン系の薬は、尿酸値を上昇させます。痛風の痛みに対して使わないようにしていただきたいと思います。 これらの薬をのまれていて尿酸が高い方は、主治医の先生と相談していただきたいと思います。 |
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●マイあさ! 健康ライフ「あなどれない! 痛風」シリーズ おわり
【放送】
2021/09/24 マイあさ! 健康ライフ「あなどれない! 痛風 ⑤」 久留一郎さん(鳥取大学医学部医学科教授)
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