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この作品「小さくなっても柱は柱です」は「腐滅の刃」「炭治郎愛され」等のタグがつけられた作品です。
小さくなっても柱は柱です/なーちゃの小説

小さくなっても柱は柱です

10,843文字22分

年上で柱な炭治郎です。お館様の右腕であり友人な炭治郎。なので年齢はお館様と同じぐらいです。

続きなんですが少しずつ進めています!更新おそくてすいません💦

2019年8月15日 12:01
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「やっぱり縮んでる」

緩やかに流れる川に映り込む自分の姿に炭治郎はハァと困ったように溜め息を吐く。深夜を回り人の気配が一切しない山の中に佇んでいるのは自分ぐらいだろう。こんな時間に一般人が入り込むものなら山で迷うか鬼に襲われるのかのどちらかだ。
炭治郎だって任務でもなければわざわざ深夜に山奥に入ったりなどしない。

「というか、どうみても十代半ばぐらいだよな」

月明かりに照らされた川を除き込み薄っすらと映る自分の顔をまじまじと見つめながら、自分の顔をペタペタと触る。
本来なら炭治郎の年齢はとうに二十歳を越えているのだが、川に映る自分の顔はどうみても大人の顔つきではなく十代半ばの少年の顔だ。よく周りからは童顔とは言われるが流石に今の姿は無理がある。身に纏っている隊服もサイズはピッタリだったのに今では身に余る程にブカブカで引き摺りながら、ここまで歩いてきたのだ。サイズが合わない服は思った以上に歩きづらくて移動するのに不便であり多少時間がかかった。
ゆらゆらと流れる川を眺めつつ今後の事を考えているとソッと炭治郎の側に近寄って来る少女に漸く川から目を逸らす。言葉が話せなくても心配そうに見つめてくる瞳に少女が自分の事を気にかけているのは明白だった。きっと元から心優しい少女なのだろう。鬼になってもその優しさは消えていない。炭治郎は安心させるように微笑み、その少女の頭をゆっくりと撫でる。

「大丈夫だ。君のせいではないよ」

炭治郎がこうなったのは誰のせいでもない。自分の不注意が招いたことなのだから少女が気に病む事はない。それを伝えるように優しい声で少女に語りかけると、撫でられるのが嬉しいのか少女は気持ち良さそうに目を細めた。

「……ごめんね。俺がもっと早く駆けつけていれば……」

ポツリと呟いた声はとても小さく少女の耳にも届かない。数時間前までは家族仲良く慎ましく暮らしていた筈なのに一瞬でその幸せが壊されてしまったのだ。鬼という存在のせいで。
そもそもの発端は炭治郎に指令が届いた事から始まった。山奥に鬼が出没したという情報が入りこの山に足を踏み入れ鬼を探していたが猛烈に漂う血の臭いに気付き、直ぐ様その場所に足を向けたが駆け付けた時には遅かった。
雪の中にポツンと佇む民家で母親や子供達が倒れ込み真っ白い雪を侵食するように夥しい赤い血が雪を濡らしていた。そのあまりにも多い血の量と充満する濃い血の臭いに生存者がいることはかなり絶望的だったが、母親がかろうじて息をしているのに気付き急いで手当てをしようとした。だが炭治郎は直ぐに悟ってしまった。この傷の深さではもう長くはないと。それを母親も感づいており最後の力をふりしぼり今にも消えてしまいそうな声で炭治郎にある言葉を託すとそのまま静かに息を引き取った。そして母親の言葉を聞き、直ぐに家の周囲を駆け巡ると庭で倒れている少女を見付けたのだ。その少女は比較的怪我は軽かったが少女を見て直ぐに分かった。彼女がもう人間ではなく鬼になってしまったということを。
だが目を覚ました少女は何故か炭治郎を襲わなかった。きっと飢えで苦しいだろうに、それでも必死に耐えて人間を食べないように鬼の血と戦っていた。そんな少女に胸が締め付けられ炭治郎が「もう大丈夫だよ」と優しく抱き締めると少女は目に涙を浮かべ泣いてしまった。
自分がもっと早くに助けに来れば目の前の少女が鬼になることも家族を失う事もなかったかもしれない。過ぎてしまった事を嘆いても少女の家族が生き返る事はないが、そう簡単に気持ちを切り替える事が出来ない。それは柱になっても変わらないのだ。

「この子は勿論だけど自分の事も何とかしないとな」

少女の家族を埋葬し少女を連れ川辺まで辿り着けたのはいいものを、改めて自分の姿を確認しどうしたものかと頭を悩ませる。実を言うと今の自分は鬼の血気術にかかり体が少年に戻っているのだ。
少女を発見し周りに意識を向けていなかったのが悪かった。背後に迫る鬼に気付くのが少し遅れまんまと血気術に嵌まってしまったのだ。鬼を仕留めようとはした身体がみるみる内に縮んでいく様に体が思い通りに動かず鬼には逃げられてしまった。柱でもある自分が情けない。

「流石に今産屋敷に帰っても鬼を連れてるなんて知られたら皆の反感が凄いだろうな。それに加え俺もこんなんだし…」

いくら柱である自分の言葉でも他の柱は納得しないだろう。皆、鬼という存在を憎んでいる。特に風柱の不死川は特に鬼を憎んでいる。この少女を前にして刀を抜かない筈がない。確かに鬼は滅するべき存在だが全ての鬼が一概に悪とは言えない。鬼は元々人間だったのだ。この少女のようにまだ人間の心を残す鬼だっているのだ。人間と相容れないから悪だと決め付けるの間違っている。それを認めてしまえば自分と相容れない存在は全て敵になってしまう。それは相手の心や意思を踏みにじる行為に等しい。そこには人間も鬼も関係ない。皆平等だ。
そして何よりも自分が一番に少女が人を襲わないと証明しなければならない。なのにその自分が血気術に嵌まり少年に戻ってしまった。少年に戻り身体の感覚が掴めず力量が大幅に低下した今の自分の現状では皆を説得するのは難しい。最悪少女を庇いきれない可能性もある。その為には何とかして血気術を解かなければいけない。それに何時元の姿に戻れるのか分からない以上この体に慣れる必要がある。

「暫くは身を隠すか」

皆に心配をかけると思うが今この状況で産屋敷に帰ったところで皆を混乱させてしまうし、何よりもこの少女の様子を見ないといけない。人を襲わないっていうのは分かったが、自分はまだこの少女の事を全然知らないのだ。だからこれから共に過ごして、この少女の事を知っていかなければならない。

「……………?」

ジッと少女を見つめていると、その少女は首を傾げ不思議そうに炭治郎を見つめ返す。パチリと少女の大きな臼桃色の瞳が炭治郎を写し出す。
まるで何も知らない幼子のような無垢な瞳に少女は今何を思っているのだろうか。


『禰豆子…をお願い…しま…す…』


少女の母親が命を落とす間際に炭治郎に託した最期の言葉。死ぬ直前まで娘の事を想い続けた強い母親。もっと娘と共に過ごしたかっただろう。炭治郎ではなく母親である彼女自身が娘の側に寄り添って成長を見守りながら一緒に生きたかった筈だ。だけどもう母親はいない。少女の家族は皆殺された。その上少女は人間ではなくなり鬼になった。周りからすればこの少女は一人ぼっちになってしまったのだ。だけど一人にはしない。何故なら自分がいるから。

「これからは俺が君の家族だ。よろしくね──禰豆子」

「───うう!!」

少女の母親が最後に残した禰豆子という名前はきっと少女の事だろう。炭治郎が禰豆子と呼ぶと少女はとても嬉しそうに返事を返した。そのあどけない笑顔に炭治郎は口元を綻ばせる。
血が繋がっていなくても関係ない。自分がこの少女──禰豆子の家族になろう。それが自分に出来る事なのだから。

コメント

  • ステラステップ
    2021年3月13日
  • 五月雨@ノン

    とても素敵な作品でした!続きお待ちしてます!

    2019年9月27日
  • ロキ

    続きを首を長くして待っています。 でも、待ちすぎて伸びる首が有りません。

    2019年9月25日
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