日本民俗学の父と呼ばれる柳田國男が『遠野物語』を編んだ場所、岩手県遠野。小説の中に登場する座敷童子や河童は、現実に、遠野に生活する人々の暮らしの中に、しっかりと息づいていました。今回は、今なお、町のあちこちに神々や精霊、異界の住人の存在を感じることができるスポットが点在している遠野の魅力をご紹介します。
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物語の生まれた場所・遠野
『遠野物語』という小説の名を、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?民俗学の父と呼ばれる柳田國男によって、1919年、遠野地方に語り継がれる逸話や昔話を集めて記録されたものがたりです。
座敷童子や河童、姥捨山(うばすてやま)伝説など、聞き慣れた妖怪などの話から、「オシラサマ」と呼ばれる養蚕や馬の神様の話など、遠くシルクロードに端を発する物語も含まれています。
江戸時代には内陸と沿岸を結ぶ宿場町として栄え、7つの街道が交わる交通の要所であった遠野には、商人や旅人からもたらされた物語や話題がさまざまに集まったそう。雪で閉ざされる長い冬の間に遠野で語り継がれ「土地の話」として熟成されていきました。
まずは妖怪について学ぶ!とおの物語の館
遠野に伝わる昔話を、映像や音声で体感できる「とおの物語の館」。『遠野物語』を一冊読むのは大変ですが、ここでは、『河童』や『雪女』、『かちかち山』などの昔話を、気軽に楽しく知ることができます。
妖怪の像がたたずむ背後には、短く編纂された物語が展示されています。数多くの物語に触れることで、遠野の世界観にどんどんと引き込まれていきます。
読むだけでなく、直感で楽しめる仕掛けも。物語に登場する「道具」を触ると、影と音楽で、その物語の世界観を体感できます。よく見知った「桃太郎の桃」や「カチカチ山で担ぐ蒔」、「一寸法師の打出の小槌」もありますね。幼い頃に読んだ物語を思い出したり、見聞きした記憶のない物語には、読んでみたい!と興味も引かれます。
昔話を何年も前に読んだ大人でも、今まさに物語を読みたい子供でも楽しめる施設です。入場料は、一般(大人)500円、高校生以下200円です。
- とおの物語の館
- 遠野市 / 博物館 / 子供が喜ぶ / 雨の日観光
- 住所:岩手県遠野市中央通り2-11地図で見る
- 電話:0198-62-7887
- Web:http://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/48,23855,1...
- 住所:岩手県遠野市中央通り2-11地図で見る
カッパを捕獲せよ!カッパ淵
妖怪について学んだら、次は実際に会いに行ってみましょう!
遠野の中心市街から車を走らせること約10分。常堅寺の裏を流れる小川の淵には昔からカッパが多く住んでいて、人々を驚かし、いたずらをしてきたといわれています。
うっそうとした茂みに覆われ、澄みきった水が流れる川辺を見ると、今にも河童が現れそう。淵のそばには、なんと河童釣り用の釣竿が置いてあり、自由に使うことができます。
でも、注意してください。河童を捕獲するには、遠野市観光協会が発行する「カッパ捕獲許可証」が必要です。遠野駅前にある「遠野市観光交流センター」などで、210円で購入することができます。
出典:www.flickr.comPhoto by Seiichi HASEGAWA
- 遠野市観光交流センター
- 遠野市 / 観光案内所・ビジターセンター
- 住所:遠野市新穀町5-8地図で見る
- Web:https://iwatetabi.jp/spot/detail.spn.php?spot_id=1...
- 住所:遠野市新穀町5-8地図で見る
人々の生活に寄り添う妖怪たち
物語に登場する妖怪は、観光スポットのみに存在するわけではありません。筆者がたまたま訪れた街の雑貨屋さんで、次のような話をお伺いしました。
「ここ遠野では、今でも、妖怪が実際の生活に息づいています。"そこ角の交差点で座敷童子が歩いているのを見たんだよ。Aさんちにいた子が、Bさんちに移動していたようでね。そしたら、やっぱり、Aさんちの家の様子がおかしくなっていっちゃってね…"と、日頃の会話で話題にのぼるんですよ」
物語の中の話ばかりだと思っていた妖怪が、ヒヤリと身近に感じられる町、遠野。ぜひあなたも妖怪に会いに、訪れてみてはいかがでしょうか。