節約の心得③ ~節約の本当の敵は財布の紐の緩さにあらず~
セツヤクエスト続きです。
全然シリーズ化する予定ではなかったのですが、小出しにするのもテンポよく書けていいかもですね。
では、節約の心得その1と2
に続きまして、その③です。
③節約の本当の敵は財布の紐の緩さにあらず
いざ「節約するぞー」という時に多くの方がまず張り切るのが、財布の紐を締める(口を閉める)ことでしょう。
節約しないとだから、お金のかかるお肉はやめて野菜を炒めるだけにしておこう、とか。
毎日スーパーのチラシを見ては、その日の特売の食料を使ってご飯をまかなう、とか。
普段ついつい買っちゃう惣菜もよく見たら割高・・・頑張って自分で作ることにしよう、とか。
あるいは日常品以外でも、ちょっと街で見かけたオシャレな服や、素敵な雑貨を衝動買い・・・持ち帰ってみれば、意外と着なかったり置き場が無かったり・・・そんなのはもうやめ!
・・・とか。
そんな感じで、今まで何気なく買ってしまっていたちょっとした無駄な贅沢を反省し、財布の紐をかたーーーく締めることで、私たちは支出を抑えようと考えます。
確かに、これらの無駄な贅沢を排除することは、非常に有意義なことですし、節約につながる大事な要素の一つだと思います。
こういう物を一つ一つコツコツと我慢すると、すごく「節約してる!」「自分頑張ってる!」みたいな達成感もひとしおです。
悪いことではないんです、もちろん。
そう、緩みそうな財布の紐を締める行為というのは確かに効果もありますし、本人にとってすごく「節約感」があります――――でも。
だからこそ、そこで立ち止まりそうになってしまいます。
満足しそうになってしまいます。
これが罠なんです。
私たちにとって財布からお金を出す時というのは、支出をする時です。
財布をバッグから取り出して、開いて、お金を抜いて、店員さんに提出する、そういった一連の行為は、私たちに支出の実感を与えてくれます。
こんなにわかりやすい「お金出ていきますよサイン」――支出の兆候――はありませんから、節約にあたってこのポイントを押さえることはもちろん大事です。もはや基本といってもいいでしょう。
しかし、ここで少し考えてみてください。
節約にあたって本当に怖い敵は何でしょうか。
――そう、そんな「お金出ていきますよサイン」がない支出です。
つまり、私たちが財布から取り出すことなく払っているお金です。
具体的には、各種引き落としや、振り込み払い、クレジットカードでの支払い、プリペイドカードなど、自動で引かれていたり、実際にお札や硬貨に触ることなく数字上のやりとりだけで決済できたり、個々の代金を先払いや後払いにまとめてしまったりする、そんな支出です。
財布を出す時に支出に気をつけるのはもちろんそうです。
でも、財布を出してない時こそ、もっと気をつけなくてはならないのです。
ここで、「財布を出すことがない支出」の怖さがピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。
そういう方は、そうですね、節約から一旦視点をちょっと離して、「生き物には何故痛覚があるか」という有名な問題を考えてみてください。
これ、誰しも子供の頃、何となく疑問に思ったことありますよね。
御存知の通り、痛覚は「身体が傷ついている」「何か異常を来している」それを知るためのサインです。
痛くて辛くて苦しいからこそ、生物は危険を察知して、それから脱することができます。もし痛覚がなければ、何も感じないまま危険にさらされ続け、下手をするとさらに危険に突っ込んで、そのまま身体の異変に気づかず(ある意味幸せなまま)死んでしまうことだってあるでしょう。
痛覚は防御機構として非常に大事な任務を担っているのです。
さて、お金を払うという行為が大好きという方いませんよね。少なくとも「節約をしたい!」と一念発起する方にはまずいないはずです。
財布の厚みが減って、お金を差し出す時のあのそこはかとない、いや~な感じ。
たまらないですよね。
でも、もうお分かりの通り、これもある意味痛覚の一種です。
このお金にまつわる痛覚が麻痺している時こそ、私たちが最も金銭的に無防備な時なのです。
すなわち、財布のお金を出さずに実感なく払っている瞬間が最も危険なんです。
例えば、実際、人は現金払いからクレジットカード払いに変えると、支出が増えるという研究結果があるそうです。
カードで払う時、レシートや画面上などで数字では金額を提示されますが、現実にはお札や硬貨など具体的な物体を差し出すことが無いために、「支払ってる感」が乏しくなるためとされています。
クレジットカードは、後で請求されるものですから、商品を手に入れた瞬間でも「まだ払ってない」として心理的な負担を軽減します。
プリペイドカードも、プリペイドカードを買った瞬間は「まだ金銭的価値は減ってない」として心理的な負担を軽減する意味では同じです。そして、ひとたびお金がプリペイドカードに変換されると心理的負担どころか「使い切らないともったいない」と支出を促進する作用に生まれ変わります。恐ろしいですね。
あるいは今や飛ぶ鳥を落とす勢いのamazonやitunesなどのネットストア。欲しい商品や欲しい曲が、いつでも欲しい時に、カチカチと数クリックするだけで購入できるようになりました。
あまりにも買い物している感覚が無いために、ついつい衝動買いしてしまった――そんな経験がある方は少なくないのではないでしょうか。
また、ソーシャルゲームでガチャ課金問題というのがありますけれど、あれもガチャをするためにいちいちお店に行って店員さんに払うシステムだったらどうでしたでしょう。さすがにあそこまで散財する人は少なかったのではないでしょうか。ゲームセンターのUFOキャッチャーでムキになって散財する人もいるにはいますけれど、何十万円と支払うなんてことにはなかなかならないですよね。
あれも、やっぱりポチポチとボタンをタッチするだけで課金できてしまったり、プリペイドカードでまとめて買うことで一回一回に伴う「支払い感」が乏しかったりするせいで、暴走しやすいと考えられます。
そして、光熱費や携帯代、ネット代などに代表される自動引き落としの固定費群。これらは明細を見なければ、本当に支払ってるかどうか気付くことさえありません。高額の支払い代金を見るのが怖ければ、本当に見ないで済むことだってできてしまうのです。
そんな明細を見ないなんてありえないって思います?
いえいえ、怖いものを見たくない心理って、体重を見るのが怖くて体重計に乗りたくないって人がいっぱいいるのと同じです(私もその1人です;)。
あえて見ないことで「支払ってる感」という「痛み」を感じずに幸せなままでいられることを選ぶ人がいるのは全然不思議なことではありません。
消費者にとって、お財布を出してお金を払ってという作業は面倒ですし、それにやっぱり心持ち気持ちの良いものではありません。昨今ではそれが各種自動引き落としやカード払いシステム、ネット決済システムの構築で、すごく便利に快適になりました。
しかし、これは消費者にとってのメリットだけでなく、お金を払う実感を失った「痛覚が麻痺した消費者」が金払いが良くなるということに目を付けた販売者側のメリットも含んだ発展であることに注意が必要です。
どんどん買い物が便利になっていることは、一方で私たちの支出に対する痛覚が急速に弱まっていることも意味しているのです。
そんな中、財布を出す時だけ、つまり痛みを感じる時だけ注意していても、それは本質的な対策になりません。
それは、財布の紐をかたーーく締めておきながら、財布の底に開いた大穴からどんどんお金がこぼれているのにまるで気づいてないような滑稽な姿とさえ言えます。
財布の紐が緩んでないことに注意するのももちろん大事です。でも、財布に穴が開いてないか注意することの方がもっともっと大事なんです。
財布の紐なんて日常に開け閉めするものですから、普段からよく見ます。そこに異常があれば、案外すぐ気づけるはずです。
でも、財布の横や底は意識しないと見えないんです。見ようとしないと、いつまでたっても大穴に気付かないことだってあるんです。
例えば、掃除の時、よく見ないと気づきにくいし掃除機がかかりにくい部屋の隅っこにゴミがたまりますよね。
普段目に止まらない高いタンスの上にホコリが溜まりますよね。
ソファの下とか、たまに動かして覗いてみると大変なことになってます。
トイレの便器の裏も、案外汚れてますよね。
人間、なんだかんだ、普段よく活動する場所や、よく目につく場所は、綺麗にするものです。でも、あちこちに潜む死角の汚れは頑張って意識して探さないと綺麗にできないどころか、気づくことさえできません。
私たちは何の気なしにゴミや汚れと同居中なんてことになってても全然おかしくないのです。
節約も同じです。
パッと目につく所、掃除機をかけやすいとこ、拭きやすいところだけ掃除して大掃除が完成するものではないように、節約も目につかないところ、普段意識しないところ、「支払い感」がないところをこそ重点的に掃除する必要があるのです。
固定費の値段、実感できてますか?
解約を忘れてダラダラと気付かないうちに引き落とされ続けてる項目があったりしませんか?
「ポイントも貯まるし」なんて気軽にカード払いを正当化してませんか?
ついつい、ネットで「ポチっとな」やってませんか?
そして。
財布の紐を締めるだけで満足しちゃっていませんか?
「頑張って我慢して節約したなー」なんて達成感抱いちゃっていませんか?
再び今回も「星の王子さま」的なまとめですけれど、「大切なものは目に見えない」のです。
節約するなら、
紐が緩みやすい財布を出している時よりも、
気が緩みやすい財布を出してない時こそ気をつけましょう。
だって、刺客は死角からやって来るものですから・・・・・・なんちゃって。
- 作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,河野万里子
- 出版社/メーカー: 新潮社
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P.S.
昔、給料袋で現金を持ち帰っていた頃は一家の大黒柱の威厳が保たれていたけれど、給料が銀行振り込みになった頃から「亭主元気で留守がいい」なんて軽んじられるようになったという話もありましたね。
お金の重みが実感できなくなると、私たちはいとも簡単に気持ちが変わってしまうもののようです。
人間って、思ってるよりもはるかに理性よりも感覚で生きてるのでしょうね。
さて、次回の心得は「大は小をかねる(仮題)」の予定です。
今のところ、心得、全部で多分五箇条ぐらいかな・・?
書き始めちゃって、私も引くに引けなくなってきたので、すみませんけれど、ボチボチ続けていきます(;・∀・)