Column

●関西商法、限界か?(2003.9.26)

 だいぶ前からだが、関西を基盤とする企業に元気がない。最近でも経営破たんないし自主再建を断念する企業が相次いでいる。最近の主だった有名どころの例を見ると…

会社名
事業内容・現況など
破綻確定
日本都市企画 「インターナショナル堂島ホテル」を経営。後に巨額の資産隠しが発覚し元社長が逮捕。 1999.1.7
駸々堂 関西の老舗書籍チェーン。債務超過が続き、大手取次会社の商品引上げが追い討ち。自己破産。 1999.1.31
そごう 江戸時代創業の老舗百貨店。過剰出店が祟る。西武百買店とグループ企業の一つに。 2000.7.12
リブラブ 阪神間で人気の雑貨・家具店「エクリュ」を経営。お台場出店など過剰投資が負担に。自己破産。 2000.10.11
ナガサキヤ カステラで有名な高級洋菓子チェーン。この時点では会社更生法申請だったが、後に破産宣告。 2000.11.1
山中大仏堂 CMでも有名だった仏壇メーカー。需要低迷と土地購入による借入が重荷に。再建中。 2001.2.13
フットワーク 運送業界大手。海外への過剰投資やF1参戦などが経営を圧迫。更正計画を模索中。 2001.3.4
ベターライフ 中堅ホームセンター。ダイキ傘下で再建中。 2001.3.19
マイカル 旧ニチイ。「サティ」「ビブレ」などの大型スーパーを展開。イオンの支援を受け再建中。 2001.9.14
洋菓子のヒロタ 「ヒロタのシュークリーム」で有名。起業支援会社「21レイディ」の子会社となり順調に再建中。 2001.10.15
メルボ紳士服 関西では老舗の紳士服メーカー。 2001.11.13
シャロン ファミリーレストラン「シャロン」などを展開。ゴルフ場などのリゾート投資が本業を圧迫。再建途上。 2001.12.4
星電社 神戸が地盤の老舗家電。消費低迷に加え、阪神大震災での借入が追い討ち。TSUTAYAと提携し再建中。 2002.1.10
トミヤマ 安売り靴チェーンの名門。競争激化と消費低迷で収益悪化。再建中。 2002.5.10
セントラルパーク 遊園地「姫路セントラルパーク」などを経営。USJの影響などで。遊園地は加森観光に譲渡され運営継続。 2002.8.5
ワルツ堂 関西地盤の老舗レコード・CDチェーン。他のCDチェーンとの競争激化の影響で。自己破産。社長は自殺。 2002.9.11
フーズネット 回転寿司「アトムボーイ」などを経営。価格競争などで行き詰まる。オリックス傘下で再建目指す。 2002.10.31
多聞酒造 灘五郷の名門酒造。同業との競争及び消費低迷で経営危機に。銀行支援で再建中。 2002.12.25
タカラブネ 洋菓子チェーンの老舗。百貨店などの高級洋菓子店などに押され、ブランド力が低下。再建中。 2003.1.24
レオマ 本社は大阪。香川で「レオマワールド」を経営。 2003.4.28
和光電気 「和光デンキ」の名で関西では有名な家電チェーン。社長は後に資産隠しで逮捕。会社は清算へ。 2003.4.28
福助 大手下着・靴下メーカー。個人消費の低迷で収益悪化。企業再生ファンドが作った新会社に営業譲渡。 2003.6.23
アオキ・アーバン・デベロップメント 「ウェスティンホテル大阪」を経営。周辺のホテル競争激化で収益悪化。キーエンス関連会社に営業譲渡。 2003.6.24
世界長 「パンサー」ブランドなどで有名な大手靴メーカー。中国製品の進出や消費低迷で経営悪化。再建中。 2003.7.30
朝日住建 分譲住宅大手。住専の借り手で経営圧迫に加え、前社長が実刑を受けたりなど信用低下し、破産宣告。 2003.9.2
マツヤデンキ 関西地盤の有名家電チェーン。大型量販店との価格競争で行き詰る。産業再生機構の支援決定。 2003.9.25

 …うーむ、これだけの有名どころが破綻しているのはかなり驚きである。もちろん、他にも多数の企業が経営破綻しているのだ。
 しかし、最近の経営破綻のニュースを見ると、なぜか関西企業の失墜振りが目立ってしまうのだ。その象徴ともいえるのが、そごうとマイカルの破綻である。

 そごうの場合は、百貨店としては異常とも言える出店攻勢が完全に裏目に出た格好だ。百貨店がいるのか疑問にも思える地方にまで出店していたのだから恐ろしい。最盛期には、会長自身が「担保」になって出資をさせていたらしい。(ーー;) 西武と提携したとはいえ、まだまだ再生途上である。
 マイカルも、小樽マイカルの失敗に象徴されるように、巨艦スーパーにこだわった過剰投資により大打撃を受けた。ただ、収益力の高い店も多いので、収益改善の余地はかなりあるから、これからである。

 経営破綻していない会社にしても、散々マスコミで叩かれている。その典型がダイエー。今、グループ会社で唯一元気がいいといってもよい福岡ダイエーホークスを売却する方向で進んでいるが、ダイエー本体も未だ予断を許さない状況だ。この間もダイエーに寄ってきたが、なんとなく活気がない。福岡ダイエーが優勝すればにぎわうとは思うのだが…

 昔からよく言われているのは、「関西の企業は商売上手」だという点だ。以前はそうだったのかもしれないが、俺が思うに、これは今や死語に近いと思う。あくまで、収益力の高い、成長性のある企業こそが「商売上手」なのであって、「関西の」という主語は不要である。関西経済が全体的に伸びていれば、まだこの言葉に重みは感じられるかもしれない。しかし、今や全国の失業率の高さ都道府県別ベスト4のうち、大阪・京都・兵庫で2位・3位・4位を占めており(ちなみに、1位は沖縄)、大量の就業希望者をカバーし切れていない現状からしても、関西の企業が儲かっているとは言えず、商売上手とはとても言えない。

 例えば、家電販売業界では、関西勢は完全に関東勢に押されっぱなしだ。都心部では梅田にヨドバシ、なんばにビッグカメラがそれぞれ巨艦店を構えただけで、関西の家電店は大幅に売り上げが減少した。それに追い討ちをかけるように、郊外にはヤマダ電機、コジマなどが進出、残り少ない杯を奪い合っているのが現状だ。和光デンキやマツヤデンキ、星電社が破綻し、同じく関西の老舗家電である中川ムセンは、「ナカヌキヤ」というディスカウントストアに業態転換し、家電というより化粧品や美容器具、生活雑貨などを販売して生き残りを図らざるを得なくなっている。10年前なら、中川ムセンがフライパンやブルガリの香水、「タンスにゴン」を売るなんて想像できなかったね。(-_-;)

 もちろん、関西全体で見回せば、天下の松下を始め、シャープや三洋、京セラやローム、ワコールやワールドなど、有力企業はたくさんある。加えて阪神タイガースや吉本興業の健闘もある。なんだ、関西商法健在やないか、と思うかもしれないが、それは単にそうした優良企業一つ一つの商法に過ぎず、関西商法が優秀であることを指すのではない。
 かつては、小林一三による阪急商法とか、中内功によるダイエーの売り上げ至上主義などが称えられ、これぞ関西商法として関東の企業がこぞって参考にしたこともあるが、今は昔である。先にあげた破綻した企業も、もしかすると、「関西の会社だから、自分たちのしていることは商売上手の内だ」という、驕りにも似た錯覚があったのかもしれない。
 現代はグローバルであり、一地域の商法がもてはやされる時代ではない。どこの地域を地盤にしていようと、その企業の経営陣の考えた優れた構想、的確な事業展開、利益率の高さなどを兼ね備えた企業こそが、商売上手なのだ。

 

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