私の父は、昔からクルマのナンバープレートを必ず字光式にしていて、いまだに街中で青緑に光るナンバーを見かけると、どこかホッとしたような気持ちになる。
私は東北の雪深い地域の出身なのだが、もともと字光式ナンバーは雪が降っている際の視認性を高めるために登場したものだという。そんな字光式ナンバーも今ではクルマのアクセサリーのひとつとして、広く普及している。父もどこか誇らしげにそのナンバーを装着していたところを見ると、実は単にかっこいいから選んでいたんじゃないだろうか、と今は思う。
最近ではそんな字光式ナンバーにもLEDタイプがあると聞いて、株式会社CGSの字光式ナンバープレート用LED照明器具『R-ray』を取材させてもらうことになった。正直、取材中は「長年LED照明機器を開発してきたメーカーが作る製品って、ここまですごいものなのか!」と驚かされることばかりだった。読者の方にも『R-ray』の奥深い世界を知ってもらえたら嬉しい。
屋外用LED照明機器の開発から字光式ナンバープレート用LED照明器具の開発へ
ナンバーを明るく灯す字光式ナンバープレート用LED照明器具「R-ray」
株式会社CGSの創立は1948年で、玩具の卸業を長年続けている会社だ。エコや環境問題が叫ばれ始めた2008年に「自分たちにも何かできないか」と、より少ない電力で明るさを保つことのできるLEDの照明機器の開発を始めることとなったという。誰もがよく知っている電信柱などについている電灯、いわゆる“防犯灯”など屋外用のLED照明機器を開発し、これまでたくさんの自治体に納品してきた。今回は株式会社CGSの常務取締役である安田好伸さんにお話を伺った。
「LEDが出始めた当初は、次世代の照明機器として『今までの照明の半分の電力で使える!』と謳われていましたが、開発側としてはたくさんの苦労をしてきました。実はLED自体を光らせるだけなら、子供の頃に理科の授業でやったような豆電球を光らせる実験と一緒で、簡単なんです。ただ、商品化をするとなると、光を制御することが必要ですし、寿命は長くするなど、多種多様なファクターに条件を設定し、それを満足させなければなりません。
株式会社CGSの安田好伸さん(左)と森山守さん(左)
防犯灯にはガイドラインがたくさんあって、昔は真下だけが照らされていれば良かったのですが、今ではなるべくその範囲を広げた上で、均一に照らさなければいけないんですね。そういった配光用のレンズ開発や寿命を伸ばすための放熱性能を長年進化させながら、これまで多くの自治体に防犯灯を何十万灯も納品してきました。当初は色々失敗もありましたが、その信頼性を認められて支持されるようになったからこそ、今回の字光式ナンバープレート用LED照明器具である『R-ray』という新しいチャレンジができたのだと思います。」
一筋縄ではいかなかった字光式ナンバープレート用LED照明器具「R-ray」の製品開発
ここまでLED照明機器の開発技術を積み重ねきたメーカーが字光式ナンバープレート用照明器具を開発するのはおそらくCGSが初めてだ。CGSは、LED照明機器の開発ノウハウは潤沢に持っていたので、『R-ray』の開発を決めた時には「おそらくそこまで苦労せずに完成させられるだろう」と考えていた。しかし、実際に作り始めてみると、多くの課題が出てきたという。
字光式ナンバープレート用LED照明器具「R-ray」の説明を受けるモータージャーナリストの伊藤梓さん
「まず、つまずいたのは、一般社団法人全国自動車標板協議会の指定機関で評価を受けるときでした。試験項目が主に12項目ある中で、光に関するものが3つあり、その内のひとつだけクリアするのがとても難しかったんです。輝度を測定器で測るような項目は簡単にOKが出たのですが、複数の条件下で実際に人の目で見てナンバーの見やすさを確かめる視認性試験というものが難関でした。試験会場と同じような環境を自分たちでも用意して、何度も検証しましたね。」
半永久的と言っても過言ではない超長寿命を実現したこだわりの設計
また、LEDの照明機器を長年開発してきたCGSだからこそ、これまでの字光式ナンバープレート用LED照明器具について疑念を抱いたところもあるという。LED業界では、LEDの光源寿命を定義しており、初期値の明るさと比較して、照明器具は70%以下、電光看板などは50%以下の明るさになったら寿命となる。
ナンバープレート全体が均一に輝くように計算されている
防犯灯は照明器具に分類されるので、明るさが70%以下になったら寿命となるのだが、その寿命はおよそ4万時間で約10年は使用できる計算となる。それに対して、字光式ナンバーは電光看板扱いなので、寿命は明るさが50%以下になったら寿命となる。照明器具よりも条件は簡単にも関わらず、流通している商品は長くても2万時間で寿命が来てしまう仕様が多かったそうだ。
「もちろん2万時間でもクルマのライト点灯時間を考えると、長期間は十分に使えるのですが、これまでLED照明機器を長年開発してきた弊社としては、この短い寿命を許すことはできませんでした。LEDの寿命は、その発熱を低減し、いかに熱を逃がすことができるか、それは放熱性能で決まります。放熱の開発に注力しなければコストダウンは容易にできますが、やはり寿命が短くて粗悪な製品になりがちです。結局、開発しはじめたら、これまでのLED照明機器メーカーとしての意地が出てきて、これまでの製品よりも遥かに良いものを作らなければという思いが湧いてきました」
LEDの点灯テストであるエイジングを行っている
『R-ray』では、LEDを多く配置することで、ひとつひとつのLEDの仕事量を減らして熱をなるべく出さないようにしたり、通常では最小限に使われる熱伝導率の高い銅板を基盤の最大化を図り、全面に使うなど、放熱性について最大限に努力した。それにより、『R-ray』のLEDの温度は、周辺の温度(気温)からたった6.5度の上昇で済んでしまう。それによって、初期値の97%の明るさになるのになんと10万時間以上(!)もかかるそうで、実質クルマを乗り換えるまでほぼ明るさは変わらない。では寿命の50%の明るさになるのは……と伺うと、計算できないレベルだという。
「『寿命が2万時間なんてありえないだろう!』と、一所懸命やっていたら、ここまですごいものができちゃいまして……。でも、愛車を購入して、せっかくLEDの字光式ナンバーにしたのに、明るさが徐々に暗くなっていったら嫌じゃないですか。最初つけたときの明るさがいつまでも、がいいですよね。」
『R-ray』は半永久的にずっと使えるという自信があるからこそ、万が一故障があった際には、走行距離に関わらずクルマを乗り換えるまで無償修理または交換してくれる業界初の永久保証までついてくるという。
直下型バックライト方式によるムラのない輝き
また、LED照明機器を続けてきたメーカーとしては、寿命だけではなく、見た目の美しさでもナンバーワンを目指した。これまで培ってきた、LEDの配光技術をふんだんに使って、ナンバーのそれぞれの文字がムラなく光るよう細部にまで工夫をしている。
ナンバープレート全体が均一に輝くように計算されている
ほかの商品では、LEDの光を導光板で拡散するエッジ型バックライト方式が多い中、『R-ray』では、液晶テレビなどでも高級モデルにしかないような直下型バックライト方式を採用している。
また、試験における輝度の測定は、ナンバーの中心線上の明るさを8ヶ所測定するだけでOKなのだそうだが、CGSではすべてのナンバーを12ブロックに区切って、のべ61ヶ所の明るさをくまなく測定。ある範囲の一番明るい部分と暗い部分の比率を表すものを均斉度と言い、この値が1に近いほどより均一に明るさが揃っているのだが、『R-ray』の均斉度はなんと1.7!他の商品の均斉度が2.6から7を超えるものもある中、ここまで綺麗に光る字光式ナンバーはないと言っていいだろう。
字光式ナンバープレート用LED照明器具「R-ray」はトンネルなどでも非常に視認性が高い
「最初は自分たちの技術があれば、字光式ナンバープレート用照明器具なら簡単にできるだろうと思っていました。始めてみたら、それが大違いで(笑)。これまでの技術を活かしながらも、新しいチャレンジもたくさんありましたね。でも、妥協しないで本気で取り組んだ結果『R-ray』という、他とは一線を画す性能を有する製品が完成しました。見た目の美しさ、品質、永久保証……どれをとっても最高のものになっていますので、字光式ナンバープレートの装着をお考えの方には是非お手にとっていただきたいですね」