「求ム! 兵隊」とばかりのウクライナのゼレンスキー大統領の呼びかけに応じ、約70人が志願したという日本人義勇兵。この騒動がいまだに物議を醸している。
〈ボランティアとしてウクライナ兵と共にロシア軍に対して戦いたい格国(ママ)の方々へ〉〈お問い合わせは在日ウクライナ大使館まで〉
2月27日、在日ウクライナ大使館がたどたどしい日本語で発信すると、大きな話題となった。
義勇兵とはどのような存在なのか。ジャーナリスト・常岡浩介氏が語る。
「募集勢力の理念に共感して参加する外国人で、傭兵と異なり、基本的には手弁当です。給料を払う余裕のない劣勢の勢力が募ることが多く、テロリストと紙一重。スペイン内戦やイスラム国の例がある。既にウクライナの義勇兵に日本人がいるとの情報もありました」
日本政府はウクライナを危険度が最も高い「レベル4」に設定。松野博一官房長官は「目的の如何を問わず、渡航はやめてほしい」と自粛を呼びかけた。
これを受け、在日ウクライナ大使館も書き込みを削除したのだが、騒動はこれだけでは収まらなかった。
「実は義勇兵募集に、ある日本企業が窓口として関わっている。しかもその企業には、大物自衛隊OBも関与しており、元自衛官を義勇兵にしようとしていると噂されていたのです」(防衛省関係者)
この企業は都内にあるA社。米国やヨルダンに営業所を持ち、セキュリティコンサルタント事業やイベント警備等を提供する。
そして同社に関わっている大物自衛隊OBとは、元陸将の川又弘道氏だ。
「南スーダンPKO活動では、中央即応集団司令官という総責任者を務め、自衛隊の海外派遣や国際法に精通し、“ミスターPKO”の異名を持っている」(同前)
真偽を確かめるため、A社の社長を直撃すると、「まったく違います。問い合わせが多くて、甚だ迷惑しているんです」と語る。
「弊社は義勇兵を集めておりませんし、ウクライナ大使館と業務委託契約なども交わしていません」(同前)
ではなぜA社の名前が?A社幹部が説明する。
「大使館はウチの営業先の一つ。今回、従業員が救急用品の寄付をしようと大使館に赴いた所、『日本語が出来るスタッフがいなくて困っている。電話番をお願いできないか』と相談を受けた。そこでボランティアの気持ちで引き受けたのです」
そして大使館のSNSで、問い合わせ先として掲載されたのがA社の電話番号だった。そこに義勇兵志望者からの電話も殺到してしまったのだ。
「電話が鳴りやまず、HPもアクセスが殺到して一時閉鎖しています」(同前)
「義勇兵が約70人」と報じられているが、実はボランティアや寄付の問い合わせも含めての数だという。
ではA社は川又氏とはどういう関係なのか。
「あるイベントで知り合い、顧問をお願いしているのは確かです」(前出・社長)
川又氏にも聞いた。
「A社社長とは東京五輪の不審者検知システムの関係者との集まりで会いました。報酬も殆どなく、相談があればアドバイスをするぐらいです」
義勇兵募集にも一切関わっておらず、むしろこう警鐘を鳴らすのだ。
「義勇兵は私戦予備罪に触れる恐れがある。またロシア側からすれば派兵と同じ。戦争の口実を与えることにもなりかねない」(同前)
良かれと思ってしたことでも、仇となることがある。
source : 週刊文春 2022年3月17日号





