東大出身で弁護士だった明石市長「火つけてこい」暴言30分【全文公開】

dot.
会見する泉房穂市長 (c)朝日新聞社

 道路の拡幅工事を巡り、土地建物の立ち退き交渉を担当した職員に「火付けてこい」などと暴言を浴びせ、1月29日に謝罪会見に追い込まれた兵庫県明石市の泉房穂市長(55)。

 AERA dot.編集部は泉市長の暴言が約30分に渡って録音された音声データを独占入手。テレビで流れている音声は、数分でごく一部だ。暴言があったのは2017年6月14日で国道2号拡幅に伴う用地買収が進んでいないことについて、市長が市幹部を厳しく叱責。

「アホちゃうか。火を付けて捕まってこい。燃やしてしまえ」などの暴言を吐いた様子が録音されていた。泉市長は4月の市長選に3選を目指して出馬する意向を明らかにしたが、市には辞任を求める苦情が殺到しているという。明石市関係者がこう話す。

「市長は東大出身、弁護士で頭は人の何倍もいいから、職員のやることがとろい、どんくさいように思えてならないようで、こうして癇癪を爆発させることは多かった。また、何が必要か不要か、ハッキリしており、メリットがないものについては『なんで、こんなもんがいるのや』と怒りを爆発させることは、よくある。市長のイベントなどの参加を依頼しても、気に入らないものには、『こんなイベント、なんでオレが出なアカンのや』『おもろない集会や』などと罵詈雑言。『おまえら、アホか』とよく市長は機嫌が悪いと怒鳴る。頭良すぎて、職員がアホに見えるんです」

 ただ、市関係者によると、泉市長が就任して以来、明石市は人口が増え、税収アップ。

 社会的弱者への政策でも、高く評価されているという。

「今回の立ち退きも、7年間、職員が放置していたことも事実。録音でも職員も悪いことを認めている。ただ、問題の叱責、恫喝の録音は約1時間あり、かなり多くの職員がスマホで持っています。ただ1時間、すべて聞くとちょっと違った印象があると思います。なぜ、恫喝のところだけが、この時期にでまわっているのか? ひとえに次の市長選絡みですよ。NHKが全国ニュースで午後7時、9時のトップニュースにまでとりあげた恫喝、叱責の録音。その裏側には、明石市の闇の権力闘争があるように思います」(明石市職員)

 以下は泉市長が市幹部を叱責、恫喝した録音の全文。

*  *  *

市長「まったく前提が分からんけど…。『たまに明石市の職員が来て、どうですか?』という感じやって言うてたけど」

幹部「前も概算では提示したんですけど、今日はもう日付を打って提示して、下の方に書かせていただくんですけど、金額がやっぱりご不満なんですけど、変えれないということを」

市長「そんなもん6年前から分かったこっちゃないか」

幹部「そうなんです」

市長「ごめんなさい、時間もろとったけど、何をしとったん? この間、7年間、遊んでたのみんなで? なんでこんなこと分かっとることを7年前からやらんの? 意味分からんけど」

幹部「いやぁ……。それは確かに受けたとおりで……」

市長「何もしてないの?」

幹部「いや……」

市長「何をしとったん逆に?」

幹部「してるんですけど、ずっと追いこん……」

市長「じゃなくて一緒にやるのは当たり前やねんから」

幹部「並行してたんです」

市長「並行なんかしてへんやん、何言うてんねん」

幹部「はい」

市長「してないやないか、全然。してないんでしょ? してたんですか? してないんでしょ、全然!」

幹部「提示はしていなかった」

市長「してないじゃないですか。してないやろ、お前!」

幹部「その通りです」

市長「7年間何しとってん。ふざけんな」

幹部「はい」

市長「なんもしてないやないか、7年間! 平成22年から何してんねん、7年間! お金の提示もせんと、楽な商売じゃほんまお前ら! アホちゃうかほんまに」

幹部「すみません」

市長「すまんですむかアホ! すまんですまん! そんなもん。立ち退きさせてこい、お前らで。今日火付けてこい! 今日火付けて捕まってこいお前、ふざけんな! 行って壊してこい建物。損害賠償は個人で負え! 当たり前じゃ! はじめから分かっとる話を。あそこの辺で工事止まったら意味ないやないか。人死んだんでしょう。安全対策でしょう。はよせえよ!」

幹部「はい」

市長「何考えてんねんほんまに。冗談抜きで。何をしとったん? もっかい聞きますけど。何してたん? この7年間。なんもせんかったんやろが。言うてみ! 何しとってん。何をしてん7年間。戸籍確認しとったんか? そんなんすぐ見つかるわ。役所やねんから。3日で見つかるわそんなもん! 7年もですよ。事業スタートから。7年間もなんもせんかったって、理由つかんがな、こんなもん。何をやっとんねん。誰や責任者。現場の。今すぐ呼べ! 担当者、呼べ! 今から来てもらえ。呼んで、今」

幹部「担当は課長が代理してますけど……」

市長「なんや課長って」

幹部「ここの所管の」

市長「課長呼んでよ。聞くわ直接。意識もしてなかったんだろう、実際は。分かって放置していたわけじゃないでしょう。分かってないでしょう。どないすんねん、こんなもん! あっこだけやないか、一か所だけで。はよ出て行った者に申し訳ないやろ。安全対策で、次に死んだらどないすんねん。何を考えて仕事しとんねん。ほんまに冗談抜きで。ごめんで済むかこんなもん。とにかく課長呼んで。話聞くわ。しつこいけど、意味分からんけど。7年間放置して、たった1軒残ってもうて。どうする気やったん? 意味わからん、何がしたかったん?」

幹部「任意が無理であったら……」

市長「無理に決まっとるやろそんなもん! お前が金積め! お前ら全員一千万出せ! 今すぐ出て行ってもらえ! アホちゃうかそんなもん。任意で行ったら苦労せんわそんなもん。はじめっから分かってるわ7年前から! 相手分かってやっとんだろうが! 逆やろうが。大変な相手を最初にするんや! 時間かかるねんから。 楽な相手から手続きして、一番芯のところを後回しにして最後1軒残して、やっとこれからか! 市長が怒ったからやっと行っとんか! まだ正式にやってないやないか! 単なる放置やないか、7年間! すまんですまん! そんなもん! すまんじゃすまん! この話は! 7年も何しとってん。大きな大きな事業費つこうて、出て行ってもらえ早よ、すぐに明日にでも。今から座り込め! なんとかせえ! 土木みんなで頭下げて出て行ってもらえ!」

幹部「はい」

市長「これは許さんから! ほんまに許さんから! 辞表出しても許さんぞ。舐めやがって。どんな仕事しとんねん。楽な商売しやがってほんま。わけわからんわ、ほんま。7年間も放置して。ほんまに、情けない。地主やねんから金釣りあげるに決まってるやろうが。そこがなんで任意で話がまとまるねん。ほんまに思ってたんか? 思ってないやろう。思ってないから後回しにしとったんやろうが。そんなもん早くやっていればとっくに終わっていた話を。どないすんねん、今から。悠長な話をして、後2年も3年も時間かけるんか? その間にあっこで人がまた死んだら責任取れるんか? 人が死んだからでしょう? この事業は。あっこでチャリンコが巻き込まれて人が死んだでしょうが! それがきっかけで国の事業化されたでしょうが。それを担当する者としてはできるだけ早くやるのが当たり前でしょうが。何をサボってるねん7年間も! いったい何をしてたの7年間。ほんまに。わけわからんわ。ほんまにわからんわ。手続きも手間取るからかかるでしょう。うちだけでできる話じゃないから、時間かかるんでしょう。こっち側が急いだかって国や県もあって、向こうも悠長な話やから。はじめから分かってるんや。7年前からやってたらもう終わってるんやこんなもん。土木の責任で金を積め。お前らが金出せ、向こうの言い値を。それですぐ話まとめろ。その1軒だけ残して何もせんと放置して。どないするつもりなん? ごめん、もう一回聞くわ。何をしたかったの? 認識していなかったわけ? 現場に任せる気か? どうする気やったん? 楽なところからやって、最後残ったところをゆっくりやろうと思ってたわけ?」

幹部「いやいやいや、そんなことは……」

市長「だってそうやろ? だってやってないんやから。正式手順もやってないやないか。金額提示やってないやん、まったく。何しとったん? 値段交渉でしょう? 値段も提示せんと何をしとったん。ややこしいところ後回しにしとったんやろう! 担当が変わるのをみんな待ってたんやろう! 他に考えられへんがなそんなもん。何人いるの? 担当は。3人か5人おんの?」

幹部「いや、一人しか」

市長「誰や? 今どこにおんの?」

幹部「席ですか?」

市長「担当は今おんの?」

幹部「今、おりますけど、今、出てます」

市長「ずっと同じとこ担当してんの?」

幹部「いや、色んな業務をやってますから、その中の一つとして国の受託として」

市長「とりあえず、そいつに辞めてもらえ。辞表持ってこい」

幹部「えぇ……」

市長「辞表取ってこい。とりあえず。当たり前じゃ。辞表出されへんねんやったら7年分給料払え。7年間の給料とったらそこの払えるやろ。その金をもとにして話まとめたら? 何が何でもまとめろ」

幹部「はい」

市長「出て行ってもらえ、とにかく。工事進めへんがな! 辞めたらええねんそんなやつ。誰か知らんけど。辞表出させろ。辞表出させろ。嫌やったら自分が出せ! 責任は取ってもらう。辞めるだけじゃすまんで、金も出せ。甘い甘い。どこの仕事しとんねん、ほんまに。楽な商売しやがって。値段交渉してもすぐにまとまらんことは、初めから分かっとるんや7年前から。最後の1軒残したら、その1軒が2~3年かかるやないか。はじめから分かっとることやそんなもん。金積んだらええんや! 裏金出したれ。自分で出せ。すぐ取ってこい、合意書を。どんな手を使ってでも。みんなで家売ったらええがな、土木の連中で。ローンあったら知らんけど、そういう話じゃこれは。話まとめるか辞めるかどっちかや。責任は取ってもらうから。絶対許さん。7年間も放置しやがって、ほんまに。クセになる。クセなっとるけど。わかっとることやこんなん、どないする気やってん。危ないがな。人が死んでるから広げんねんやろうに。私が市長になったとき、いつか聞いたら『再開発の完成と同時です』と。完成してもうたがな!」

幹部「国の所長が来られたとき……」

市長「再開発のときに広がるって言ってきた。じゃっかん前後するにしても、明石の駅前がリニューアルしたときに2号線も広がる予定ですって言うてきたがな。広がってないがな! そこを使ってない、単なる権利書やねんから金だけの問題や。そこの権利をなんぼで買うかの問題や。値段だけの問題や。折り合えへんかったら、その手続きをして粛々とやったら終わってるんや。最後に1軒ならできひんわけ?」

幹部「1軒でもかけれるので。ただ、それがこういうルールがあって、8割くらいまで進捗しないとできないって」

市長「どこに書いてるねん、法律」

幹部「法律というより国のルールで、これは市長さんに予めお見せしたと思うんですけど、用地取得率を8割を一つの目途に、ですから、最初から反対しとるからと言っていきなりはかけれないと」

市長「こんなもん法律書いてないやろ」

幹部「法律には書いていませんが……」

市長「言うたらやってくれるやろ、俺が国交省に言うわ!」

<担当課長が不在、部長が会話に参加>

市長「誰の責任やねん、7年間放置したんわ。誰の責任や。担当なんて名前や?」

部長「担当は今は、係長なんですけど、この間やっぱり係長は3回変わったんかな、当初から。で、課長もあの、ずっとこう……」

市長「何やっとったんみんな? 値段の提示もしてない」

部長「値段は前年度の末に概算は提示しているんですが」

市長「概算なんか意味あらへんそんなもん。手続きにのらへんやないか」

部長「市長さん申し訳ありません、予算は今年度で積んでいるんです。前年度は国のついていませんでしたので、概算しか出せなかった」

市長「ついてないってどういうことよ」

部長「他の地権者の予算を取ってますから、ですから丸ごとどんと一年間で全事業費をつけれませんので」

市長「ダラダラとするからじゃ。(略)やっと人に言われて提示したんやろ? 今日」

部長「今日」

市長「なんやねん、今日って」

部長「3月28日に概算提示して、5月に行って…」

市長「1週間以内でお前ら全員で毎日通って取ってこいハンコを! ぶちぶち言うなら金積んだれ! お前ら自腹きってハンコ押してもらえ! それじゃなきゃ辞めてまえ2人とも。もう要らん! 楽な仕事しやがってほんま。どないすんねん、死んだら。あの角で人が死んだからやっとる工事やろうが。何が安全じゃ! もっとちゃんと誠実に仕事せえ!」

部長「はい」

市長「とにかくハンコ早くもろてこい。手段選ばんでええから、手押さえてハンコついてもらえ。後で訴えられたら損害賠償はお前らで払ったれ。責任取れ! 不始末の。とにかく工事はしますから、はよせえ! 工事。人死んだら遅い、この1,2年の間に。たった1軒だけ残してもうて。何年かかるねん。まだ3年もかかるような話やないかこんなもん。今6月14日やから、今月末目途でハンコついてもうてください。それついてもうてなかったら、7月3日付けで辞表もらう。二人だけじゃないで、担当者もクビにするから。かめへん。許せん。今月中に頭下げて説得してハンコついてもらってください。どんな仕事やるかは任せます。頭を下げるのか、説得するのか。『後1軒だけですと。ここは人が死にました。自転車に巻き込まれて女性が死んでこの事業は進んでいます、と。もう7年経ちました、と。そういった中で立ち退きをご協力いただきたいと。状況としては他はもうご協力いただいて、うちのほうでも金額提示が遅くなっていますけど、ご理解をお願いいただきたい。2年3年経っても結果は変わりません』と。(略)。説得するんや」

部長「わかりました」

市長「頭下げて土下座して、頭擦り付けて帰ってくるな! 畳に頭擦り付けて『ハンコ押してもらうまで帰れません』とそういう話じゃこれは!」

部長「わかりました」

市長「時間は戻らんけど、何のためにやっとる工事なの! 安全対策でしょう?」

部長「何よりも本当に」

市長「あっこで人が死んだんでしょう? だからやるんでしょう? 巻き込まれて死んだ角やないか。あの角が立ち退かんかったら工事できひん。あそこが中心や! 私が行って頭下げて土下座でもしますわそんなもん! 市民の安全のためやろ! 市民の安全のためにしんどい仕事をやって安全な道路を作ろうとしているんでしょう? それはある意味誇りでしょうが! しんどい仕事やから尊いんですよ。相手がややこしいから仕事が美しいんでしょう! 後回しにすんなよ! 腹立つのはそこやから! 何の仕事しとんねん。あっこの工事ができてこそ安全対策になるんでしょう。そのために道路としてもやっているんでしょう。2年延びるということは単に2年延びるんじゃないんですよ。その間安全じゃないんですよ! 単に金のつり上げ交渉に関わっても仕方ない。人が亡くなったと、大義がないと」

部長「わかりました」

市長「とりあえず目途は6月末で、そこでまとまらなかったら私が行って頭下げますわ。頭ぐらいなんぼでも下げますわ。市民の安全のためやないか! 言いたいのはそれや。そのために役所はしんどい仕事するんや。頼みますよ」

部長「はい。わかりました」

(今西憲之/AERA dot.編集部・福井しほ)

※市長の発言に個人を特定できる情報が含まれていたため、一部編集しております