22century

ロシアへの制裁とインテルネットに降ろされた鉄のカーテン

この日記は世間の思想から比べるとかなりロシア寄りの内容です。

2022年3月半ばに書いていますが、状況の変化が激しいのでその時点の記録と見てください。

「ロシア」という文字列だけで頭が沸騰する人はブラウザを閉じてヘテロゲニアリンギスティコを読んで下さい。

そしてLiveJournalは向こうの企業の運営なので記事の取り扱いは現地の法律が適用されます。もし消えたらお察し下さい。

過剰な非難

現在ロシアの国民に対して各国から過剰と言える制裁や非難が起こっています。

「足並みを揃える」という名の同調圧力により官民共に制裁が行われていますが、政府に対して効果的でない措置も多く、国民側に対して不利益と隔絶を強いる仕打ち。

「レジに並んでる間に値段が2倍になった」「外国企業が去ってコロナウイルスだけが残った」などの皮肉が言われています。

子供達からもあらゆる娯楽が突然奪われている。ファストフードが食べられなくなったり、動画配信サイトが見られなくなったり、ゲームが買えなくなったりして本当に政府が困ると思ってるの?という話で、提供側への同調圧力をかける行為などはロシア料理店への嫌がらせと大差ない。

イギリスのある映像系ソフトの企業は、わざわざロシアを批判するダイアログを表示してロシア国内の有償ライセンスを解除する行動を起こしました。

オリンピックも武力衝突の代わりとして平和的に国威を示す側面を持っているのに、母国の争いを背景としてパラリンピック競技参加の機会を奪うことは筋が通らないと思う。機会を奪えばますます別の手段を取る。

けれども他国に向けてミサイルばんばん撃ってる国でもそれを理由に出場停止にはなっていない、武力衝突に発展しかねない危険な行いでも被害が出てないならどうでも良いようです。

変わったものでは猫の国際連盟FIFeはロシア産の猫に対して品評会の出場を禁止しました。ネコチャンに罪はない。

そんな中でもロシア向けに提供を続けると決めたGitHubの対応は公平だと思います。

書いた理由

何故こんなめんどくさいことを書いているのか?それは私が向こうから見た外国人だからです。

彼らは国の行いについて自身を擁護することができません、それが私たちと似た考えを持った層なら尚更です。そして安全上の問題でなかなか主語を明確にして意見を述べたり行動することができません。デモ活動も捕まる覚悟でやってます。

その分は外国人が明確に語ることが望ましいと思っています、ひと言申し上げる際には漠然と「ロシア」ではなく「ロシア政府」や「クレムリン」「特定の政治家名」「ロシア軍」「ロシア兵」など、あなたの憎しみがどこへ向いているのかを明確に語ってあげて下さい。

またウクライナに関しても、民間人が戦ったり武器を作る現状は戦闘員と見做されて攻撃や反論の理由付けになります。かといって世間が容認すると次はテロリストの隠れ蓑になる。なので支援するのは大事だけど外野が無責任に鼓舞してはいけない。

そして意思決定や行動の全てが最善手とは限らないことを念頭に置いて後押しして下さい。被害者の言うことは全て正しい、となるのは危険です。

彼らは家族 親戚 友人が当たり前のようにお互いの国やベラルーシにもいます、日本に置き換えると本州と沖縄で争っているようなもの。(民族と言語の類似性という点で)

インテルネットの現状

私はここ近年はロシアのインターネットを徘徊したりいくつかのコミュニティに入ったりしてロシアニキ・ウクライナニキ達のやりとりを見ていました、そこまでもりもり言葉が分かる訳ではないのでまともに会話する機会は多くはないですが。

私が見ている限りの範囲でしかないですが、その中で見聞きした話を書いていきます。これらのインターネット強者や、オタク寄りで外の情報を知っている人々は、政府の行動に否定的な人が多いです。もちろんそうでない人々も居ます。

インターネット以外の国内のアナログ電波からは統制された情報しか流れないので、老人達はネオナチが手引きしていると本気で信じているし、実の親ですら全く話が通じない場合があるという話を聞きます。

SWIFTから排除された後も、安全な口座へ送金しましょうと称してロシア版の振り込め詐欺が横行していたり。このままでは90年代に戻ってしまうと心配されています。(こういう話をすると "ソ連時代はもっと酷かったぞおじさん" が出てくるんですが、今の若者はソ連時代とか知りません)

2月の下旬からじわじわと国外のサービスが内外から遮断されていき、ロシア国内のカードや決済手段が使えなくなり、Steamでゲームすら買えなくなって設定を外国にしたりカザフスタンのカードを使ったり、かなり分の悪い両替率で現金を電子化する手段を使うなど苦労しているのを見かけます。このままでは作者に謝罪しながら海賊版で遊ぶしかなくなると。

そしてウクライナニキが自身の街で戦闘があった報告をする度に、みんなで安全を祈っています。ロシア兵との戦闘以外でも、自警団を装った強盗が家々を回っているので迂闊に扉を開けてはいけないそうです。

また国民総武装のような状態になったことにより、武装解除に相当な時間がかかりアメリカのような銃社会になってしまうことへの懸念もされています。

侵攻当初、私がロシアニキにもご安全をお祈りしたところ「感謝するが今はウクライナのためだけに祈って下さい」という旨を言われました。私はその後神社へ行き双方の安全祈願をしてきました。

YouTubeやTwitchでも急に政府寄りになった配信者がいるという話や、無関係の配信で嫌がらせめいた書き込みを見かけるようになりました。配信を休んだり続けることを悩む人も増えています。

ウクライナ出身のロシアのVTuberの配信に英語で「第三次大戦どうですか?」みたいな書き込みをする人も出てきて、アメリカで起こっているウォッカ不買運動のように印象だけで盲目的に行動しているのが分かります。

現在YouTubeやTwitchはロシア国内への送金手段がなくなったとして、配信者達は収益が受け取れない状態になっています。

3/11からロシア国外へのネットワーク通信を遮断する動きが始まるとされ、これを書いている時点でまだ全遮断はされていませんが、このままでは中国のように情報が孤立する状態となります。外部からの制限もあることを考えると中国より悪い状況になるかもしれません。

そのため皆は連絡手段として公開系SNSのVK以外にもTelegramを使ったり、VPNやTorなど色々な準備をしています。実際にVPNアプリのダウンロード数が1500%増になっているというニュースもあります。

このように若者達はあれこれ手段を講じて国外の情報を得ています、なので今のように外側からも情報や娯楽を遮断するような真似を続けてはいけない。

いつ何が使えなくなるか分からないし、電子機器を含む外国製品が買えない状況を不安視しています。ソ連時代に諜報員が秋葉原にアメリカ製の部品を買いに来ていた、なんていう話が笑えなくなってしまう。

毎日毎日お通夜みたいな空気が漂っていて、私もずっと気が気でない状態が続いていました。なので割と色んなことが手に付いてないです。

文化の理解

以前、彼らとの会話で「今の私たちは東西どちらの文化も理解することができる」と英語で言われたことがあります。今のロシアの若い層には欧米や日本の文化に触れて育った人々が多くいます。(逆に国内のゲームはあまり面白くないそうで、アニメも殆どないらしい)

今は前時代のように武力で文化侵略せずとも同じ物語を共有できています。たとえ理解や共感はできなくても、異なる考え方をしていることを認識しています。

逆に私たちの方が彼らの文化を理解できていない、急に自分語りを始めたり詩的な長文やアネクドートを投稿したりして良く分からないことが多々あります。

日本文化の影響例としては、アニメ漫画ゲームは当たり前として Ранобэ (Ranobe) という言葉もあります。これはライトノベルを指す言葉で英語の Light Novel ではなく日本語のラノベから来ています、なのでLでもVでもない。

ちなみに作品としては狼と香辛料が人気のようで、再アニメ化が決定したときにそのことを教えたらもう知ってると言われました。アッハイ。

ただネットスラングとして定着した言葉は解釈が違うところもあり、欧米でSenpai (先輩) の意味が日本と異なるのと似た感じで、Генки (Genki, 元気) はツンデレのように人物の属性として扱われていたり、Oхаё (Ohayo, おはよう) は出会い頭の挨拶として時間帯に関係なく使われます。

その辺りのインターネットでの浸透ぶりは前に投稿した記事を見て下さい。一応補足として、必ずしも "日本の娯楽が好き=日本そのものが好き" ではないです。

でもYandexで日本人的な名前を画像検索すると高確率でアニメキャラばかり出てきます。

後の祭り

仮にこの広範囲の制裁が十分な効果を発揮したとしても、無差別に放たれた批判には遺恨が残るでしょう。せっかく文化の理解ができる世代ができて、JOJOやポケモンやガチムチパンツレスリングの話もできるというのにまた鉄のカーテンに閉じ込められる。今はポケモンGOで遊ぶこともできません。

彼らのような若い層に2000年代や2010年代からの武力衝突が止められたかというとそんなはずもなく、自分達が反対していたにも関わらずこの先は旧世代の負債と怨嗟を抱えることになります。今だにWW2のことであれこれ言われる日本人ならよく分かる話。

そんな中で料理研究家のリュウジお兄さんの起こした行動はとても粋でした、罪を憎んで人を憎まず、が実践できています。(リュウジお兄さんはいつも調理工程で化学的な理屈を説明をしてくれるので良い)

3月中旬現在、日本ではテレビで鬱番組が増える季節ですが、東日本大震災ではロシアも日本に多大なる支援を行っています。

私は震災発生当時に動向を記録しているので良ければ参照して下さい。

東北地方太平洋沖地震でのロシアの動き

ちなみに地震発生時も日本に向けていつものように偵察飛行を行っています、そういう二面性をずっと持っている国。

ところでポーランドの The Farm 51 はチェルノブィリを舞台とするゲーム Chernobylite の売上を一定期間ウクライナに寄付していました。

このゲームは常に被曝に気を付けながら、謎に進化したキノコを調理したり、ウォッカ飲むと精神異常が治ったりするFPS PRGです。精神が不安定になるのでぜひやってみて下さい。

他にも東欧のゲーム会社で売上を寄付しているところがあるので、気になったら探してみて下さい。

矛先の分別

ここからはただの私の思想の話なのでめんどくせーと思ったらそのままブラウザを閉じて下さい。軍事知識もそんなに無い人が書いてます。

最近になってクレムリンがおかしくなったとも言われますが、それだけが理由で急に起こったなんてことはなく、今までの延長線上の出来事だと思ってます。

今までも何度も武力行使してるし、相手が誰でも引かないし。戦国武将のような振る舞いで無理矢理オリガルヒから資産を奪っても支持されて、ルーブルの価値が今の3倍だった時代とは段々と乖離してきたのだと思う。

各国も自分達が巻き込まれて明確な脅威が迫ってから、慌てて寄ってたかって過剰な制裁をかけて追い詰めている。

かと思えば他の国で行われている緩やかな民族浄化に関しては強い制裁を行う国や企業がなかなか揃わない。目に見える暴力には懲罰を行うが、それ以外は資本が優先されている。

今回はウクライナが徹底抗戦を決めてロシア軍側の状況も良くないから周りがこれ幸いと叩き始めただけで、仮にいつものように手加減なしの短期決戦を仕掛けてウクライナが諦めていたら周りはここまで手を貸さないし、徹底的な制裁も行なっていない気がする。

スラヴ人同士の衝突のため殲滅戦が行えず、制空権も確保できない、大量破壊兵器も使えない(たぶん、わからんけど)、経済制裁も終わらないとなれば、周りに舐められないように今まで以上の強さを誇示するための軍事行動を続けると思います。ドイツやフランスはいつも緩衝材と化してて大変だと思う。

武力行使自体が良くないのは当たり前ですが、周辺国に全く非がないとは私は考えていないです。元より国としてのイデオロギーの地盤が違うので、G7基準の自由主義の考え方を押し付けるだけだと話が進まない。ではどうしろかと言うと特に案も無いんですが。人間は暇だとろくでもないことしか考えないので、娯楽は奪わない方が良い。

善悪を包括で考えるのではなく、これは良い、これは悪い、とひとつひとつ矛先を分別して、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いに陥らない。確かにボウズではあるけど。

例えばこれは日露の領土問題に対する私の考え方。

・ロシアが奪った
→ 奪ったのはソ連なのでそうは思わない。

・ロシア人が奪った  
→ 当時の指導者であるスターリンはグルジア出身なのでそうは思わない。

・ロシア政府が返してくれない
→ 領土の継承国なのでそう思う。

・条約違反したので悪い
→ そう思う。

・武力制圧したので悪い
→ 日本も元はアイヌ人から土地を奪っておりそれも最近の話、北方がソ連に占領された77年前のそこからたった76年前に北海道として併合し同化政策も行っている。それ以前も何度も武力衝突している。民族を包括する政府が返還を要求するのは理解できるが、本州で生まれ育ったそこら辺の大和民族のおっさんなどが返せと叫ぶのは全く言えた義理ではないと思う、アイヌ人に返せという文脈を含むなら理解できる。

どの陣営かに関わらず情報源や観測点が偏ったものを信じてはいけないし、このブログも素性の知れぬ人間がインターネット越しに見聞きした情報でしかないので鵜呑みにしてはいけない。自称ではない専門家や報道機関の情報を見てください。

はい、面白くない政治の話おわり。

chernobylite
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